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第1戦 狂気と歪みの果て

 スターマークは初めて相手陣営にこれまでに見たことのないマヴロウの姿があったため警戒した。

そして、探るためにあえて大げさなほど丁寧な言葉で聞いた。


「お初にお目にかかる方がいらっしゃるようですが」


 この言葉がマヴロウの耳に引っかかった。

微妙に何かを感じているようだったが、なかなか隙を見せない。


 マヴロウはマークが丁寧に話している事等あまり気にせず眉1つ動かさなかったが、説明だけはしてやろうと言う気持ちだった。


 鎧と槍をもち屈強そうであるため、線の細い魔法使いの中でひときわ目だつ。


 マヴロウの声は威圧感に満ちていた。


「俺はアダラング様の部下マヴロウだ。確かにお前たちに会うのは初めてだ。俺の役目はお前たち及び我々の中で途中で戦いから逃げようとするものが出た時それをさせない為見張る事だ。現に、見ろ!」


 マヴロウが指をさすと確かに一帯にバチバチと火花を散らすように魔法のバリアが張ってあった。


 大翔は

「えっ! じゃあこの戦いからは逃げられないって事?」


「そういう事」

とにやりとしながら軽い口調で新参の部員、中島は言った。

それがどうしたと言うような嘲笑う雰囲気である。


「君は誰だ? 初めて顔を見る気が」

大翔が聞くと答えた。


 にたりとして不気味な答え方をした。

「ふふ、確かに初めましてだね。僕は中島。新しいカードゲーム同好会の新部長とでも言っておこうか。情けない奴らの代わりに指揮をまかされているのさ」


 大翔は怒りを込め言った。

「君もアダラングにだまされたのか」


 しかし正義感から言っている心配と怒りが混じった大翔の言い方をあざわらうように答えた。


「だます? 僕は心底アダラング様や皆さんを尊敬して黒魔術学園に入ったんだ。君の学校にいたあわれな連中とは違う」

と小学生とは思えない冷静かつ卑劣な雰囲気で笑った。


「嘘だ!」

と大翔は言った。しかし


「君も甘いな」

とまた中島は嘲笑った。

相手の心配などまるで意に介していない。


 その一方でキッドと相対した東山は初めて見る異様な雰囲気を出した。


 餓死しそうな人間の様にほおは黒く顔はやせ目は相手を覗き込むように血走り睨み身体を前に突き出した猫背でまるでゾンビだった。

そんな東山をキッドは警戒した。 


 一方大翔はなんとなく不安を感じ、自分が行こうかと言う気持ちになった。


「キッド君、僕が先に出ようか?」

「あ、いやいい……」


 キッドは緊張と集中を乱された嫌な気持ちになった。

久しぶりに大翔が返答に困る先走った事を言った。


 キッドは緊張感のなか必死に気を遣って答えた。

「僕は大丈夫だ」

「そ、そう……」


 キッドは内心思った。

(ま、うれしいっちゃうれしいけど、大翔はやっぱりまだ戦力には遠い。ここは僕が戦う。僕が戦いに慣れてない大翔の盾になる。それが魔方陣から呼び出された僕の役目だ)


 その後ちらりと三夫達を見た。

(しかも、よりにもよってこんな危険な場所に三夫君達まで連れてくるとは、心強いと言うより不安だ。正直言えば。確かに玉越を救えたのは大翔のおかげだけど)


「僕が行く」

さらに強めに言う大翔に、一馬は良い言い方をした。

「大翔、ここはベテランに道を譲ろう」


 キッドは一方言葉にはしなかった。

いちいち戦いの前に大翔とぶつかるのは嫌だった。


(僕は大翔みたいに無理に相手を改心させたりしない。勿論出来るならばそうしたい。でもそうしたらこちらがやられる。それに悪い事をした人間はそれに見合う罰を受けねばならない。僕の考えは間違ってないはずだ)


「話し合いの長い奴らだな。余裕綽々って所か?」

と東山以外のカードゲーム研究部員は言った。


 中島は言った。

説明してやると言うような高飛車な口調である。

「ところで自分の陣営に言うのはあれだが、この東山たちは弱かった心も体も。しかし! アダラング様の上級の呪いで以前と比べものにならない力を得たんだ。」


 キッドはぎょっとした。

「何?」

「君も危ないんじゃないかな?」

とキッドをあからさまに見下した。


 しかしキッドは不気味さを感じながらも歯を食いしばり一歩も引かない態度を見せた。

「僕がここで逃げるわけにいかないだろ」


 東山はついに獣のように獰猛に叫び始めた。

戦いの前の高揚感が彼の狂気を引き出した。


「う、あああ、ああああああし、しびれる……お、おれは最強の力を得たんだあ! 今までとは違う! 馬鹿にした奴らを見返してやるんだああああ!」


 そういうと激しい炎の様なオーラに加え黒煙が立ち上った。

それはまるで悪魔の様な形を成した。


  すさまじい衝撃波と振動がキッド達を襲った。

「何だこの気迫、いや凶暴さは! まるで興奮剤を打たれた猛獣だ!」


 中島がまた説明する。

「そうだよ、こいつは前は『猛獣』なんかとは程遠い、学校のクラスでも目立たないカードだけが趣味のやつだった。でもダンテ様達に真に忠誠を誓い、自ら力を求め、真の黒魔術の戦士となる事を誓い儀式を受けたのだ」


 スターマークは激怒した。

「貴様ら、こんな子供にどんな強力な呪いをかけたのだ!? 子供を、まだ小学生の少年をさながら心を奪った兵器の様に使う気か!」


 マヴロウは言った。

「我々は今までもきさまら正規魔法教会との戦いの中、そうやって戦力にならなかった奴を開花させて戦士として使った。だから黒魔術は今の力を得られたんだ」

「くっ!」


「よし、そろそろ始めるぞ、行け東山!」

遂にマヴロウは開戦の叫びをあげた。


 詠唱を始めた東山はぴたりととめ魔法発射姿勢を取った。

「うおおお! 火炎流星弾!」


 すると東山の手から流星型の複数の火炎弾が飛び出し、キッドを襲った。

火炎弾の軌道は曲線的だった。

「くっ!」


 キッドはとっさに防御壁で何とか防いだ。

しかし東山の攻撃は全く休むことなく続いた。


 さっきまで奇声を上げていたが今は逆に冷静に、自信をまとったように魔法を繰り出していた。

キッドが最初の攻撃を防いでも、さらに連続で火炎弾を撃ってきた。


「どういう事だ! こんな魔力が彼にあるはずがない! カードを使っているのか!」


 中島はキッドの疑念に答えた。

「残念、カードじゃない。その魔法は正真正銘彼の身体から撃っているんだ。それほどの力を得たんだよ、彼は。自ら忠誠を誓う事でね。誰の為でもない。自分の意思で黒魔術の戦士になり栄光をつかむためだ!」


 スターマークは怒鳴った。

「栄光だと! 貴様ら黒魔術がこれまでどんな事をやってきたと言うんだ」


 トライブも続いた。

「そうだ! 子供を盾にして戦いの道具にしただろう!」


 三夫は聞いた。

「どういう事ですか?」


 スターマークは説明した

「我々との国をかけた戦いで黒魔術は子供を洗脳し、かつ魔法の力を与え戦士に仕立て上げた事があった。その結果、正魔法教会の大人の戦士たちは手が出せず、その隙をついて負けた人間も大勢いる。さらに悲劇だったのはどうしようもなくなり我々も子供の兵士を討たなければならなかった。何を隠そう、私も」


「ええ! マークさんが?」

三夫はさすがに動揺した。


「マークさん、その話はやめましょう」

トライブはさすがに止めた。


 しかしマークは言う。

「いいんだ。私の見られ方が変わっても。真実を伝える方が先だ」


 その間も無数の火炎弾を東山は連続で撃ってきていた。まるで弾切れのないマシンガンの様だった。

「くそ、反撃する隙がない! なんて絶え間ない攻撃だ。あれは体内の魔力で発しているというのか?」


「ああああ!!」

叫びながら東山は火炎弾を撃ち続けた。


 その様子は戦いを楽しむのとも相手をいたぶるのとも違い、かと言って無理に戦わされているわけではない、東山の自信だった。


 さらに東山は上空からも火炎弾を発生させ撃ってきた。


 前方のみの効果だったキッドの防御壁はさらに斜め上からの攻撃にまで効果を広げざるを得なくなった。



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