アダラングのさらなる呪いと一馬の意外な魔力
ダンテ・モルグ校長は、黒魔術学園校長室にアダラングとマヴロウを呼び出した。
そして切り出した。
緊張感が走る。
アダラングは何の話か予想出来なかった。
ダンテ校長は下唇をぴくぴくと動かし、ひじをつき指をうねらせている。
アダラングには指のうねりが感情を表しているように見えた。
「わかっていると思うが、今回、魔法使いの小僧どもとカードゲーム同好会の戦いは、はっきり言えばそれ自体目的ではない。まあ、あいつらは捨て石だ。戦っている隙に君達がロッド・キッド達を攻撃し倒すのが目的だ。しかし!」
アダラングは聞いた。
「しかしとは」
ダンテは相変わらず温厚な表情で威圧感を出している。
「うむ、我々黒魔術学園はもちろん裏切り者は許さん。だから仮にあいつらカードゲーム同好会が裏切るような真似をすれば容赦なく粛清しろ。しかし、弱い人間と言う物は追い詰められると意外なほどすごい力を発揮し人格まで変わる事がある。つまりあの捨て石どもをもっと追い詰め、完全に我々に忠誠を誓わせ、その上でロッド・キッド達と戦わせるのだ。そうすれば意外な結果が得られるかもしれんぞ」
「承知致しました。では私とマヴロウは徹底して管理し、奴らを戦わせ、そして隙あらば我々の力で戦いに勝利を」
さらにダンテは付け足した。
「それと、真崎大翔と言う小僧を拉致する事もだ。隙をみてあの可能性のある小僧を捕えろ」
「はっ」
「またこの戦いで魔法学校を作ろうとか言っている奴ら善良な魔法使いを潰しておけば、我々黒魔術学園の人間界への布教は盤石なものとなる」
「はっ」
そして一旦ダンテと別れたアダラングとマヴロウは、カードゲーム同好会を作戦室に呼び出した。
あいかわらず命でも取られるのではと言う顔を東山たちはしている。
アダラングと目が合わせられない。
「今日集まってもらったのは勿論今度の戦いの準備だが、それだけでない、君たちに新しい仲間を紹介する」
すると部屋には玉越たちと同い年くらいの、自信に満ちた雰囲気の少年が3名入ってきた。
「え?」
東山たちはさすがに驚いた。
「驚いたかな。彼らは新しく我々の門下に入った者たちだ。彼は中島君と言う。彼らは君らより上司になる。つまり逆らえないと言う事だ」
「えっ?」
アダラングは威圧より淡々と話した。その方が冷たいと思ったからだ。
「確かにスカウト後、はいったのは君達より後だ。しかし彼らは君達よりずっとやる気と能力がある。よって彼らを君たちの上位者にする。中島!」
「はっ!」
と中島が言うと手から激しい炎が出た。
なによりいやいやでなく忠誠を誓うそぶりが見て取れる。
「ご覧の通りだ。彼の魔法力は君達より上だ。よって君たちは安心して捨て石になれる」
「捨て石!」
またもこの言葉が東山たちに最後通告か審判のように突き刺さり全身をふるわせた。
「そうだ。はっきり言って君たちの力ではロッド・キッド達には勝てん。その為この前負けそうになったら自決カードを使えと言ったな」
「は、はい」
東山は冷や汗を流し震えている。
「しかし、ダンテさまは寛大だ。捨て石の貴様らに1度チャンスを与える事になった」
「チャンス?」
この説明が変に親切だった。裏が感じられた。
「そうだ。君たちが以前受けた呪いの印があるな。あれよりもさらに強力な呪いの印を受けるのだ。そうすれば今よりも大きな魔法力が得られる。しかしこれは場合によって大変な肉体・精神ダメージを負う可能性がある。下手をすれば呪いにまけ気が狂い命を失う」
「ひっ!」
アダラングは威圧と安心を与える目的両方があった。
「しかし! 安心しろ。もしも成功すれば私と同じ位の能力が得られる?」
「ええ?」
これはさすがに東山は驚いた。
「そうすれば将来、君たちは黒魔術学園の地位が約束される。どうだ」
「うう……」
東山にとっては全く予期しない申し出だった。
もちろん、騙されているのかもしれない。
しかし彼の中で散々アダラングにバカにされて脅迫までされ、もうすがるものが他にない気持ちになっていた。
東山は震え拳を握っている。悩みながら答えをだそうと極限の葛藤をしていた。そしてついに叫んだ。
「やります! 黒魔術学園に忠誠を誓います!」
(くっくく……)
「黒魔術学園、万歳」
(くっくく、ばかめ)
アダラングはほくそ笑んだ。そしてマヴロウに耳打ちした。
「裏山に強力なフィールドを張っておけ。やつらがもしもにげんようにな」
アダラングはダンテの元に戻った。
「やつら上級呪術を受けるようです。ダンテさまの仰せの通りでした」
「いいぞ、そうする事で彼らは我々に絶対忠誠を誓う。そして戦い死ぬのだ。そして黒魔術学園の掟を刻み込む」
一方、その後もキッド達はほうきに乗りカノンの捕まった場所を探したが、手がかりは得られなかった。
「今日はこれ位にして、特訓の続きをしよう」
マークは言った。
結局、一行はいつもの裏山の人がいない所に降りた。
「さてと、もう時間がない。魔法の訓練だが、もちろんそれも大事だが、問題は大翔君の言う通りどうやって彼らを救うべきかだな」
マークはそう言った。大翔は同調した。
「はい、僕は戦いに勝つより救いたいんです」
しかし、珍しく、と言うのかキッドは横槍を挟んだ。あきらかに苛立ちが見える。温厚な中でも。
「僕は正直、そこまでしてあいつらを助ける必要はないと思う。あいつらのせいでカノンが捕まったんだ」
大翔は思わず反論した。
「でも彼らはきっと利用されてるんだよ」
キッドは少し考えてから言った。体の小刻みなゆれが苛立ちを表している。無理もない。今日も手がかりは得られなかったのだ。
「確かにそうかもしれない。しかし彼らにだって悪い心は一杯あった。だからもっと悪い奴に利用されたんだ。同情は出来かねる」
「でも、玉越君達みたいに怪物にされけがするような目に会わせたくないよ」
大翔は少し必死になっていた。
キッドはおそらく大翔とあって初めてといっていいほど強めに言った。勿論意識して
「大翔、君はカノンに会った事はないだろう。僕は彼の親友だ。だから心配で一刻も速く助けたい。でカードゲーム同好会のせいでこんなことになったとイライラしているし、彼らを救うよりカノンの方が優先なんだ」
すこし大翔はしょげた。彼は罪の意識を感じるとしょげる。
「ごめん、僕はカノン君に会ってないから気持ちわからないよね」
「ちょっと強く言っちゃったかな。ごめん、勿論君が友達思いだと言う事は知っている」
そこへ声が聞こえた。懐かしいこえだった。
「おーい!」
それは三夫、一馬、宮田、樋口だった。
「みんな!」
「久しぶり!」
「あえてうれしいよ」
彼らは再会を喜び抱き合った。三夫はキッドに言った。
「キッド、僕達も魔法の特訓を見学していいかな?」
「勿論だ」
「今日はみんなこの町に泊まりがけなんだ」
皆は歓談した。
「へえ~大翔が魔法を」
宮田の感心に大翔は答えた。
「今から見せるよ」
大翔は構え、指先から出した弱めの光弾を空き缶に当てた。
「おおー!」
「すごいな大翔、何か俺もやってみたくなったよ」
一馬は言った。
「一馬君も?」
キッドは言った。
「一馬君、気持ちは嬉しい。だけど、もう日にちがない、今からじゃ……せめて始めるのがもう少し早かったら」
「ん?」
スターマークは何かに気づき、一馬の身体に触れた。すると
「おお!」
マークが一馬に当てた手からまばゆい光が出た。
「これはすごい! 大量のマナが眠っている。大翔君以上だ」
「ええ!」
皆は驚いた。
「惜しいな、もうあと少しだけ早ければ、大翔君位の魔法は身についたかもしれん」
一馬は言った。
「あのずうずうしいとは思いますが、少しで構いません。魔法を時間があればでいいですから教えて下さい。もちろん、おれが今からじゃ役には立てない。だけど俺は大翔が魔法をやっていれば負けたくないんです」
「そうか、わかった」
と言いマークは承諾したがキッドは口を挟んだ。
「ね、ねえ勿論今からじゃ本番の戦いに参加するのは無理だよ」
その後、一馬はマークの教えで精神を集中した。すさまじく集中力のいる作業だった。それは1時間、1時間半にも及んだ。すると少しずつ一馬の身体からオーラが出てきた。
「おお!」
「すごいや一馬君は!」
そこにトライブが到着した。
「武器を持って来ました。これは邪悪な物を振り払う剣です。これは望月君が持ってみたらどうかな」
「お、おれが?」
「今からでは魔法を習う時間が少し足りない。しかしこれがあれば少しだけ戦えるようになる。そして大翔くんにはこれ、「魔導玉のついた手甲だ」
「これは、魔法力を高めいざと言う時光線も出せるかもしれない」
「へえすごい!」
マークは言った。
「じゃあ後少し特訓だ」
「あ、マークさん、どうやって彼らを救うか作戦を練りたいんですが」
大翔は口をはさんだ。
しかしキッドはこれまでになくあきれ顔をした。
「君も本当に人がいいな。彼らは全て悪くなくても罰を受けるべきだと僕は思う」
しかし宮田は言った。
「だけど、それを助けるのが大翔なんですよ」
三夫は
「だから大翔君と付きあってるんです」
キッドは彼らの意を汲んだ。
「わかった、僕も出来る限り考えるよ」
特訓後、座ってキッド、マークは三夫と話した。
「ずっと気になってたんだけど、なぜ三夫君の書いた魔方陣から僕達を呼び出せたのかまだわかってないんだ。魔術を習ったわけじゃないんだろう?」
「はい」
「私も色々考えた。本か紙、ペンに何らかの力が宿っていたのではと、しかしそうでないとすれば、三夫君は何か力があるとしか思えない」
その頃東山はついに上級呪術を受けた。あまりの苦痛に表情はゆがみ崩壊し、全身で痛みを感じのた打ち回った。アダラングは
「この試練を乗り越えればお前は強い戦士になれる」
「あ、ああ」
(そして、立派な捨て石になってもらう。ふはははは!)
そして決戦の日は来た。
一行、一馬や三夫も加えたメンバーはついにカードゲーム同好会と対峙した。
「集団で戦うのか?」
「いや、1体1がいい」
「よし、いつでも来い」
キッドは前に出た。すると東山が出た。
皆はその普通でない様子に驚いた。
「う、ううー」
目が完全に何かにやられ、おかしなうめき声を上げている。
キッドは慎重に行こうと考えた。




