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マジックバリアの特訓

 キッドは驚いていた。

大翔の成長の速さにである。

「もう、LV1の光弾を身につけている。まだまだ実戦レベルじゃないとしても」


 大翔は少し疲れ、肩を落とし嘆息した。

「魔法使うってスポーツと違う感じで疲れるね」

「それが、マナを使うと言う事なんだ」

スターマークは説明した。


「マナ、ですか」

「うん、大翔君の体内には豊富なマナがある」

大翔は自分の胸を見つめた。

触れると確かに自分の体内には力が眠っているように感じた。


「それも才能の一つでしょう」

トライブも続けて説明した。


 スターマークは説明を続けた。

「で、さっき試したように走る時体内の魔力が急激活性化するんだ」


「酸素消費やエネルギー生成が連動しているのでしょうか」

 

 トライブの問いにマークは答えた。

「ダイナモみたいなものだな。大翔君の魔力の秘密をもっと知りたいものだ。そうすれば力の引き出し方がわかるだろう。確かに魔法を身につけなければならない、私達と一緒に戦うならば」

またトライブは聞いた。

「もう、カードゲーム同好会との対決まで時間がありません。それまでに何が出来るか」


 キッドは心配して言った。

「でも、大翔を参加させるのは無謀なんじゃ」


 スターマークは腕を組み考えてから言った。

何となく覆面の下の表情が伝わるようだった。


「確かに無謀だ。しかしな、大翔君がいなければ玉越君達に人間の心を取り戻させる事は出来なかった。あれは確かに魔法力は関係なかった。大翔君の叫びが彼らを救ったのだ。大切なのは救いたい気持ちだ。君はカードゲーム同好会を助けたいんだろう」

「はい」


「だからこそ私は大翔君を戦闘に参加させるんだ。いや必要なんだ。もし大翔君がいなければ、我々は彼らを殺してしまったかもしれない。だから今回も大翔君の心の叫びに賭けるのだ。それともう1つは戦いと言う物は『やはり無理だからやめようか』などと言う迷いがあれば出来ん。本当に戦いたければ迷いを捨てるのだ。」


「心の叫び……迷いを捨てる」

覚悟を問う言葉に大翔は黙った。


「うむ、黒魔術の力は恐ろしい。かけられた魔法の印を我々には解く術がなかった。しかし大翔君なら彼らをあるいは救えるのではと思う」

「僕が」


 トライブは練習内容を聞いた。

「では残りの時間何をしますか?」

スターマークは時間がなく少し焦っていた。


「それなんだが、大翔君に必要なのは防御壁を代表とした防御魔法の練習だ。何よりそれが出来なければ自分の身を守れん。防御を固め、隙を見て光弾を使う。それが彼の役割だ。しかし」

「しかし?」


「時間から考えて今からでは最初レベルの防御壁しか学べないだろう。それでは身を守りきれん。そこでだ」

わざと言葉を切っているようだった。


「そこで?」

「彼の肉体の打たれ強さそのものを上げるのだ。いや、正確にいえば体内に秘めているパワーで攻撃を押し出す、押し返す力を身につけるのだ。」

「押し出す?」


 何か考えがあるそぶりをマークは見せた。

「そう、例えば風船のように彼の体内のマナを膨張させるんだ。それが肉体を守るバリアになる」

「なるほど、イメージが掴めてきました」


 トライブが納得するとマークは実践に移そうとした。

「今から彼に魔法をかける。そして彼自身の体力と魔力で我々がかけた魔法に耐えるんだ。体内のマナでバリアを作るんだ。」

「えっ、それは相当負担が大きいかと」


 キッドは危惧したがトライブはマークに賛成だった。

「仕方ありません。残された時間で真崎君の魔法防御を上げるにはそれしかありません」

「僕は大丈夫です!」

と少し強がりながら大翔は言った。


「とてもきついが大丈夫か?無理だったら途中でやめる」

「大丈夫です!」

少し強がりより勇気が増していた。


 1行は広い所に移動し、3人は大翔を中心に囲うように散った。

 

 大翔はごくりとつばを飲み込んだ。

これからの苦痛がいかほどか分からず緊張している。その緊張感をマークは破った。

「ではいくぞ」


 3人は手を大翔に向けた。

そして雷撃のような魔法を3方向から大翔に向けて撃った。

覚悟と申し訳なさがあった。


 大翔に3人の魔法が命中した。

大翔は激痛に大声を出した。


大翔の体が雷撃に包まれ電気と高熱が走り凄まじい負担を与えた。

大翔は耐えた。叫びながら耐えた。しかしどう耐えていいかわからない部分もあった。


 マークは言った。

「体内の魔力で魔法を押し出すんだ!」

「お、押し出す?」

大翔は苦しみながら言われた通りにしようとした。

「うう」


しかしまだ要領が掴めないようだった。大翔は苦しんだ。

「頑張れ! 魔法力を肥大させ押し返すんだ!」


 キッドは励ました。心は痛んでいた。

大翔は理解し実行しようとした。しかし言う通りに出来ず苦しみ、激痛が増した。

「無理だったら言え!」

「まだ、無理じゃない!」


 頑張りと意地をはるの両方だった。全身に電気が走る。

(そうだ、相撲と似てるかも、体内の力を引き出し相手を押し出すんだ!)

「おお!」

「強い魔力の反応が!」

「いける!?」

「跳ね返してやる!」


 叫びと共に大翔の体の魔力が外に向かって膨張し、押し返し始めた。それは波のようにうねり雷撃を外に出そうとした。

「体内の魔力で魔法防御壁を作り肥大させるんだ」

「頑張れ」

「ぐあああ」

苦しみは3分、5分と続き大翔は苦しみ叫び続けた。肉体の疲労はピークに達し、精神もくじけそうになった。

(まだ、頑張って見せる! 僕も魔法が使えるように!」


 そして5分程で大翔に変化が起きた。

「うおおっ!」

 魔法のバリアが大翔の体内から膨張し始めついに形となった魔法防御壁が雷撃を押し返した。

「やったぞ!」

「レベル3位の魔法防御だ!」

マーク、キッドは揃って喜んだ。


 大翔はふらふらになり、力つき倒れた。

そこへ突然後方から矢が飛んできて地面に刺さった。

「誰だ!?」

皆は周りを見回したが誰の気配もない。


矢には手紙が結び付けられていた。


 スターマークは手紙をとりよんだ。

「親愛なる魔法使い君たちへ、〇月〇日のカードゲーム同好会との勝負だが、もちろん君たちが逃げるとは思わないが、もし逃げたらカノン君たち捕まった魔法使いの命は危ないと思え。アダラング」

「くそ! 舐めやがって!」

キッドは憤慨した。


 一方、次元のひずみに隠れている黒魔術学園ではアダラングが会議室にカードゲーム同好会たちを呼び出していた。


 しかし会議室と呼ぶのがふさわしいか疑問が浮かぶほどの圧迫感と緊張感である。


絨毯に机といすが配置された殺風景ではあるがまるで黒ミサのような雰囲気で、ローブを着た配下がアダラングの両側に立っていて異様な雰囲気を出している。


 照明は薄暗くされ、机や椅子の配置が妙な緊迫感を産んでいる。上司と部下の席の距離が遠くかつ声がエコーで響く構造になっている。


 さすがに彼らは怯え心臓の鼓動が速くなっていた。


アダラングと目を合わせるのが怖かった。

もともと喧嘩もした事のないような気弱な少年達である。


 アダラングは肘をつき話を切り出した。


「君たちに集まってもらったのは他でもない、皆わかってると思うが今度の〇月〇日にロッドキッド達と最後の勝負をしてもらう。そこでもし彼らの首を取れば君らの将来の地位を約束しよう」

しかし、出世と言われても彼らの恐怖は変わらなかった。それをアダラングは見抜いている。


「しかし……」

(えっ)


 彼らは何を言われるかぞっとした。


「君たちが負ける事等ありえんがもし、負けそうになった時は、これを使ってもらう!」

と言い、ゾンビが描かれたカードを見せた。


「これは自決自滅のカードだ。つまり負けそうになった場合、これを使い自分の命を犠牲にして相手に勝つのだ!」


「ひっ!」

「何だ?」


 アダラングはさらに圧を加えた。

「い、いやだ!」

「何がいやだだ!」


 そこへアダラングより1回り若い魔法使いとは思えない筋肉もあり長身で軽装の鎧と槍を持った騎士、戦士風の男が入って来た。髪はしっかり固め、顎は眺めでわりと整った顔だが目には威圧感と冷たさが両方ある。


(誰?この人?)

そう思うカードゲーム同好会をよそに騎士風の男は切り出した。


「お呼びですか、アダラング様」

「待っていたぞマヴロウ、あ、ここからは2人で話すから君たちは戻れ」

と言いカードゲーム同好会を退出させた。


「ご用件は?」

とマヴロウは聞いた。

「今度にくき魔法界の調査員とあのがきどもが戦う事になっているが恐らく負ける。だから君にも戦いが終わった時参加できるよう陰で待機してくれ」

「お安いご用です」


「それとな、もう1つある。あの真崎大翔とか言う小僧を出来れば戦いに乗じて拉致してほしい」

「ほほう」


「あの小僧は良くわからないが魔法使い達と行動を共にしているが、実は強大な魔力と未知の可能性を体内に秘めている事が分かった。殺すには惜しい。だからさらって洗脳し我々の配下にするのだ」

「なるほど」


 その頃キッド達はほうきに大翔を乗せ各地にカノンの居場所が無いか飛んでいた。

「つかめないな……」

「やはりアダラングやその配下から聞き出すしかないのか」

「こうしている間にもカノンは」


「一刻も速く探さなければならない」

その探索は夜8時まで続いた。


「もう帰ろう。大翔は小学生なんだ」

「うんそうだね」

「今日はよく休め」


 大翔は家に帰った。母親が待っていた。

「いつまで遊んでるの! 宿題して寝なさい!」


 大翔は布団でごろんとした。

(必ず僕はカノン君もカードゲーム同好会も救って見せる)



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