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決着の時

 真也は天に向かい喚いた。

もはや何がどうなっているのかわからない。

完全に破れかぶれであった。


「何故だ! 偉大なる存在は僕を認めたのではなかったのか! 誰よりも不幸な過去と高い能力を持った僕こそが神を継ぐ存在としてみとめたのではないのか!」


 ところがその時天から恐ろしく太い声が響いた。

それは大翔にデビイとの戦いの時「魔王になれ」と言ったあの声であった。


「貴様は自分で自分を持ち上げすぎた。今のお前は世界を支配するにも巨大な力を持つにもふさわしくはない」


 姿の見えない相手に真也は言い返した。

「何がふさわしくないと言うんだ!」


 声の主は冷たく厳しかった。

「自分で考えろ。それを大翔君に戒めてもらうために力を与えたのだ」


 声の主は大翔に言った。

「大翔君、遠慮はいらん。奴を倒せ」


「おのれいっ!」


 真也はそれを認めたくないように大翔にがむしゃらにパンチを撃ってきた。

しかしもはや大翔からすれば速さを感じなかった。


「うおお」

気迫はあったが大振りで隙があった。 


 しかし大翔は無表情でかつどこか悲しい顔で軽く受け止めた。


 真也が

「はっ!」

と思った時すでにお返しのパンチを受けていた。


 真也は体勢を直しまた構え詠唱した。

「くそ! 次元収縮」


 しかし、やはり出なかった。

「出ない! 何故だ」


 大翔は構えた。

両手にものすごいエネルギーが集まる。


 真也は畏怖した。


「神魔爆合砲」

とてつもない威力の光線が発せられ真也の横をかすめたが衝撃で吹き飛ばされ壁に激突した。


「外したけど次はないですよ」

大翔は警告した。


「う、うおお」

真也は落ちていた勇気の剣を取った。


「まだあがくのか」

大翔はどこか悲しかった。


 真也は部屋のスイッチを押した。

「これで建物は壊れる。外で最後の勝負だ」


 建物が崩れ始めた。

下の階の三夫たちが集まってきた。

「みんな!」

「どうなったの?」


 大翔は言った。

「これから最後の戦いだ。みんなは見ててくれ」


 真也は言った。

「お前も勇気の剣を取れ」


 潔く受ける様に大翔は剣を取った。


 向かい合う両者の間に静寂と緊張が走る。


 先に真也が切りかかった。

「うおお!」

真也は剣をやけくそに振るった。


 しかし大翔は造作もなく防ぎ続けた。

もはや脅威はなかった。


 真也は喚いた。

「貴様がいなければ! 僕は段ボールに住む事も新聞紙で寝る事もなかった!」


 喚きはさらに喚いた。

「他の孤児と食べ物をめぐって殴り合いをし、通行人には笑われ、金持ちに冷やかしで金を投げられた! こんな思いをしたのも貴様のせいだ!」


 さらに続いた。

「ぬくぬくした貴様に何がわかる!」


 大翔は悲しい目でなるべく動揺を見せずに言った。

「謝ります」


「謝って済むか! そして私は神になると約束されたのに偉大なる存在に裏切られた。そして代わりに貴様が選ばれた!」


 大翔は温和な顔で言った。

真也の様に偉くなるのに関心がないと言うように。

「僕は偉くなりたいとは思いません」


「何?」

真也はぎょっとした。


「ただあなたを止めたいだけです。だから力をもらっただけです」


「そんな事には興味ないと言うのか。神になり世を支配するのも」

真也は問う。


 何とも言えない真面目で勝つ冷たすぎない目で大翔は言った。

「ないです」


「甘いな!」


 真也の剣を剣で防いだ。

「甘い!」


 次の瞬間、大翔は右足を切られた。

切断された。


「大翔君!」

三夫は絶叫した。


「まだだ!」

大翔は真也をつかみ切った。


「ああ」

真也は胸を大きく切られた。

致命傷だった。


「う、うう。僕の負けか」

変に潔かった。


 真也は後退し空中庭園の崖っぷちまで行き滑った。

それを大翔は腕を差し出しつかんだ。


 真也は聞いた。

「何故僕を助ける」


 大翔は答えた。

「安直に人を殺したくないからです」


「もういい。もう死なせてくれ」

何故かあまり真也には悪意がなかった。


 大翔は言った。

「あなたは罪を償うことが出来る」


 ディードは言った。

「そうだ! 私の様に罪を償うため生きろ! 大翔に救われた事に応えろ!」


 真也は安らかに笑みさえ浮かべた。

「ありがとう。だが僕はもういい」


 大翔は諭す様に強めに言った。

「何がもう良いんですか。さっきまであんなに偉そうだったのに!」


 しかし真也は力なく答えた。

「僕にはもう何もない。いや何もなかったんだ最初から」


 大翔は悲しげな顔をした。

「僕のせいです」


 真也は何も責めなかった。

「いや君は悪くない。全部僕が悪い。少しだけ神のいたずらもね」


 大翔は必死で助けようとした。

「まだ生きられる、やり直せる」


 真也は優しく拒否した。

「いや良いんだ」


 大翔の呼びかけは続いた。

「良くないです!」


 真也は何かを覚悟した様だった。

「これが僕の罪の償いだ」


 そして剣でぶら下がった自分の腕を切り真也は落ちた。

「真也さん! 兄さん!」


 真也は安らかに言った。

「さらばだ、大翔君」


 グランは言った。

「行こう」


 ディードは言った。

「お前の勝ちだ」


 ディードは再度言った。

「何も悪く思う必要はない。さあ帰ろう」





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― 新着の感想 ―
[良い点] あまりに壮絶すぎます。 例えようのない驚きを感じました。
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