勇者のスキル
大翔は超能力に体が痺れ圧迫され苦しみながら訴えた。
「僕はまだ謝りたいんです! 僕のせいで真也さんが不幸に」
しかし、側近の答えは冷徹だった。
大翔の真面目な訴え等信じていない。
「謝るふりをして隙を見つける気だろう! そうは行かんぞ」
別の側近が続ける。
「そもそも『自分のせいで不幸になった』と分かった気になっているのが偽善なんだ!」
また別の側近が言った。
「じゃあ貴様は不幸な立場を交代出来たのか! 無理だな! それこそ偽善だ」
側近はそれぞれ否定的な事を口にした。
しかし大翔は「隙を見つけるため」などでなく誠実に強く訴えた。
「僕はまだ真也さんの過去も何も知らない! 知らない前に死ねないんだ!」
それをあからさまに見下し嘲笑うように挑発的に言った。
「我々から力づくで聞きだしたらどうだ」
と言い側近達は12人かかりで一斉に光線を撃った。
これを受けた大翔は苦しんだ。
「う、うわああ!」
先程と同じ光線の熱と超能力の圧迫に体がおかしくなりそうだった。
その間真也は肘をつき無表情で異常な落ち着きぶりで見ている。
しかし大翔も何とかしようと超能力に苦しみながらももがき抵抗した。
それに対し側近は少しだけ開いた態度を取った。
「真也様がどんな人生を送ったか少しだけ教えてやる。真也様は路地に段ボールに入っていた。右も左もわからず、道で芸をやっている人の真似を見よう見まねで真似、それでほんのわずかな金と食べ物を道行く人からもらった」
大翔は超能力を受けながらもそれを想像しショックを受けた。
「う、うう」
さらに側近は続ける。
「真也様は駅に行き孤児同士で固まり、皆やせ細り病気になった。孤児同士の争いも起き、生きるため盗みもやった」
「う、うう」
大翔は苦しみと悲しみで涙が出た。
自分が何も知らないと思い知らされた。
側近はさらに言う。
「そして、生きる事を呪い、世を呪い、金持ちを呪った。しかしやっとその頃孤児院に引き取られた。貴様がぬくぬくしている間にな」
大翔は悲しみに包まれ押し潰されそうだった。
「僕なんかにはとても想像も出来ないほどの目にあったんだ……でも分からなかったとしても僕はここまで来たんだから真也さんに謝りたい! そして理解したいし悪い事も止めたい! うおおお!」
大翔は自分の言いたい事を言う為にも力を振り絞り超能力を解除しようとした。
「無駄だ、貴様は強いがいくら何でも我々12人相手に攻撃を返せるわけないだろう!」
「うぐぐぐ!」
側近は叫んだ。
「しぶといやつだな! 諦死ね!」
その時大翔でない声が聞こえた。
「攻撃解除だ!」
と言う声が響き大翔を圧迫している超能力の光線が解除された。
「何誰の声だ」
と側近は警戒し
別の側近は言った。
「超能力が解除された、何故」
剣から声が聞こえた。
「僕が代わりにスキルを使った」
「えっ! 剣の聖霊」
剣の聖霊はナビゲートした。
「うん、君に魔王スキルの代わりに備わった勇者スキルを僕が使った『攻撃解除』だ」
「すみません」
隙を突いて側近は襲い掛かってきた。
「おのれ!」
大翔は反応出来なかった。
「わっ!」
しかし大翔の体が勝手に動きガードした。
「あれ体が素早く反応して防御できた」
剣の聖霊は言った。
「これが『高速ガード』だ。これをあらかじめかけておく事により自分ではかわし切れない攻撃もオートガードするんだ」
大翔は感心した。
「すごいや」
側近は苛立ち襲い掛かってくる。
「おのれ!」
手刀や拳で襲い掛かってきたがことごとく防御してみせた。
「おのれ一斉攻撃だ」
また光線を一斉発射してきた。
「勇者スキル『防御障壁』だ」
「な、何だあの壁は? 聖なる光があいつを包んでいる」
別の側近は言う。
「構わん押し切れ!」
「うおお!」
大翔は障壁を前に押し出し光線ごと側近たちを吹き飛ばした。
大翔は聞いた。
「次は?」
精霊は答える。
「次は回復スキルだ!」
大翔の体力が回復した。