支配の論理
側近の1人が両手を広げ大翔に誇らしげに語り始めた。
「モストチルドレン、今我々は彼らを数百の学校に転入生として送り込み、やがて旧人類に変わって世の中を支配する為の準備をしている。まだ彼らは10代の子供だがやがてこれからさらなる教育と成長進化によってもはやこれまでの人間とは比べ物にならない能力を持ってこの世を支配する」
別の側近は手は広げず付け足した。
冷静だが同じように偉そうだった。
「モストチルドレン、黒魔術によって選ばれた栄光ある子供達」
大翔が口を挟んだ。
「選ばれたって勝手に優秀な赤ん坊をさらって行ったのか」
側近は悪びれず答えた。
罪の意識などなく常に自分たちが正しいと言う言い方である。
「そうだ。我々の元で育てられるのは栄光であり将来を約束される。人間を支配する未来を」
少し怒りを見せながら大翔は聞いた。
「じゃあこれまでの人間は支配される?」
別の側近は手を後ろに組んだままこれまた悪びれず言う。
「そうだ。すでに旧人類の殺人と奴隷化が全国で進んでいる。全て秘密裏に行われている」
また別の側近が詳しく説明した。
「社会は支配、被支配関係がないと成り立たない。つまり旧人類は被支配者として奴隷となる。被支配者の従属度合いを反乱指数と言う数によって管理する機械があり、反乱を計画しても国民は未然に鎮圧される。さらにそれ以上に生きている価値のない人間は殺されるがな」
これにはさすがに大翔も憤りを隠せなかった。
謝りに来たのが主目的であっても。
段々と同情できない気持ちになって行った。
「生きている価値のない人間てあんたたちが決める事じゃないだろ。どんなに偉くたって。それにあんたたちは僕の同級生を殺しただろレース中に。彼らが何で生きてる価値のない人間なんだ」
また側近は何の罪の意識もなく言った。
まるでたまたま小さなミスをしたとでも言いたげに。
「ああ、あれはミスだ、たまたま。当たってしまった」
さらに別の側近が補足した。
「そこまでする必要がない人間に対してもたまのミスで殺される事がある。仕方ない。運もある」
この命の軽んじぶりと罪の意識の無さに大翔は怒った。
怒らざるを得なかった。
「たまのミスや運で殺された人の気持ちがあんたたちにわかるのか!」
側近はたしなめるように言った。
まるで自分たちが正しい様に。
「随分感情的だな。さっきは謝りたいと言ってたじゃないか。あれは嘘か」
これは少し大翔も弱気になり隙を見せてしまった。
「うっ、そうです。僕は真也さんに許してもらいたくて来た。だから通してほしい。でもあんたたちの勝手な考えもひどすぎる。それは真也さんが決めたんですか」
側近はまた悪びれず答える。
「いや皆で話して決めた」
少し大翔は反撃した。
「じゃああんたたちにだって責任はあるんじゃないですか。そんな事許せない」
大翔に明確な敵意を感じたためか、これ以上話し合っても無駄と思ったのか遂に側近たちは直立不動をやめ臨戦態勢になった。
「我々に言う事を聞かせ、真也様と話したくば我々を倒してみろ」
そういうと12人の側近は一斉に大翔に手を向けた。
光線と超能力の合わせ技が大翔をとらえた。
「うわあああ!」
大翔の体が光線によって宙に上げられさらにその熱で苦しんだ。
しかも超能力で体が圧迫され続けた。
「ぐうう」
光線を浴び続け苦しむ大翔に側近たちは順に言った。
「どうした。この程度か」
「謝りたいと言ったが、貴様に真也様の苦しみや悲しみがわかると思えんがな」
大翔は思った。
(真也さんにどんな過去が、多分僕の想像なんかじゃわからない)
側近が言った。
「貴様が謝って許されると思えんがな。真也様に代わってぬくぬくしてきたお前が」
「そうだ。孤児となった真也様の気持ちがわかるか! 教えてやっても良いが」
真也は相変わらず様子を黙って肘をついて見ていた。
その様子が落ち着きすぎで不気味だった。




