ディードの槍
中島もはもはや声を発する事も出来ず炎に包まれ消えていった。
皆その残酷さ、無残さに目をつぶり背けた。
スパルダスは笑った
「はっはっは、死体も残らなかったな。尤もそいつには親兄弟はいないが」
冷徹な一言に大翔は唇をかみしめた。
スパルダスは笑う。
「これが裏切り者の末路だ。さあ次は誰だい? まとめてかかってくるか。冥王君君はいい、僕1人でやる」
大翔と三夫が迷う中、ずいとディードが前に出た。
そして2人を制した。
「私が行こう」
「えっでも」
大翔は止めようとした。
さらに強い調子でディードは言った。
「私が行く。罪ほろぼしの為にも」
言い方が強く止められなかった。
(あのディードが罪滅ぼし……)
「ふん、君か」
と鼻から息を出しせせら笑うスパルダスにディードは全く臆しなかった。
ディードは言う。
「覚悟はいいか」
スパルダスは馬鹿にし、はあ?と言う顔をした。
「覚悟? するのは君の方じゃないの」
ディードは懐に手を入れた。
そして取り出したのは槍の柄だった。そして
「はあ!」
と言い大きな特殊金属でできていそうな明らかに一般兵が使うものではない黒い刃先が銀のように輝く、2メートルはある槍を出した。
スパルダスは関心を見せた。
「ほう、邪神槍!」
「そうだ」
「君が持っていたとはね。それで僕を倒す気?」
「そうだ」
ディードは一貫して表情を変えず「そうだ」と言った。
嘲笑うスパルダスと毅然としたディードの2人の態度は対照的だった。
しかしディードには覚悟も感じられた。
スパルダスは相手をなめ自信を潰してやろうと言う企みがあった。
「じゃあ、お手並み拝見と行こうか」
ごくりと唾を飲む大翔達。
ディードとスパルダスは向かい合った。
そして口火は切られた。
ディードは槍を振りかざしスパルダスに向け走った。
「ぬううっ!」
気合いで叫び高速の突進攻撃をした。
ディードの激しい打突攻撃が始まった。
正面からの目にも止まらぬ激しい連撃であった。。
スパルダスは余裕でかわすものの、それにも増して激しい攻撃を加えていくディード、スピードが落ちない攻撃に徐々にスパルダスの余裕がなくなってきた。
これはスパルダスに取って予想外だった。
腕でのブロックも含め攻撃を防いでいくスパルダスだったが、ついに頬から血を流した。
「な……」
スパルダスは手で触り確認したが血を流したのが信じられない様だった。
ディードは表情を変えない。
スパルダスはおこりだした。
「僕がこの程度の攻撃をよけ損ねた! おのれ!」
「危ないディードさん、スパルダスは怒ってる!」
三夫が叫んだためディードは後方ジャンプし距離を取った。
スパルダスは叫んだ。
「おのれ!」
ディードは離れた距離で身構えた。
「くらえい!」
高レベルの氷魔法を撃ってきたスパルダスだったが槍で防いだ。
「ぬう! その槍には魔法防御コートがされているのか!」
「この槍はそれだけでない、距離が離れた時に真の力を発揮する」
「何?」
「はああ!!」
そういってディードが大振りに槍を突き出して行くと槍から光の衝撃波が出た。
スパルダスは構える。
「ぬう!」
激しい前への連撃は小さく速い無数の光の矢となってスパルダスに襲い掛かる。
「ぬっぬぐぐぐ」
それらすべてはガードしきれないスパルダスに命中していった。
「まだだ!」
と叫ぶディード。
今度は大振りにして上から叩く、突き上げ救い上げ等の様々な軌道から大きな衝撃波を放って行った。
「ぐっぐぐ!」
ものすごい威力の衝撃波が立て続けにスパルダスを襲った。
さらにディードは空へ飛びあがり連撃と間合いの大きい波動を出していった。
「くらえ! わが奥義!」
空中から無数の軌道の衝撃波がスパルダスに襲い掛かった。
今度は正面に降り槍を突き出した。
すると槍は大きく伸びた。
「伸びるのかあれ」
と大翔は言った。
スパルダスは焦りつつ馬鹿にした。
「伸びたからなんだ防いでやる」
しかし今度は槍は蛇のようにくねくねと読めない軌道でスパルダスを翻弄し、その軌道から生まれた光が光の輪となってスパルダスを縛った。
大翔は歓喜した。
「やった」
三夫は叫んだ。
「今だ!」
しかしスパルダスは一撃を腕でガードした。
「おのれ幻覚を」
大翔は不思議がった。
「幻覚?」
ディードは言った。
「ああ、この槍は伸びたり曲がったりしない、催眠と動きでそう見せただけだ」
スパルダスは怒った。
「おのれ!」
ディードの体は爆炎魔法が起こす煙で包まれた
ところがディードは煙の中から
「油断をしたな!」
と投げつけた。
だがこれはかわされた。
「これでもう防げんぞ! 魔法の波状攻撃を食らわせてやる」
槍を失ったディードに火炎、氷、風、爆炎などの魔法が波状的に襲い掛かり煙に包まれた。
ところがぼろぼろになりながら煙の中から出てきたディードはカードで槍を召喚し投げつけた。
「馬鹿なそれが! 本物の槍」
スパルダスは貫かれた。
「おのれい!」
ところがすぐさま抜き取り投げ返した。これがディードに刺さった。