初戦
中島は確かにすっかり雰囲気が変わっていた。
邪心が感じられなかった。
以前の様に高慢そうな表情は完全に消えていた。
申し訳なさそうに下を向き拳を震わせている。
中々言葉が出てこない。
中島は本当にすまなさそうに言葉を絞り出した。
「お、お久しぶりです」
意外な挨拶に大翔は何とか取り繕った。
僅かに笑顔で。
しかし冷や汗もあった。
「あ、ああお久しぶり」
少し間をおき、意を決して中島は言った。
「図々しいとは百も理解していますが、僕を仲間に加えて下さい」
90度に頭を下げた。
「え、ええ」
そして
「お願いします!」
と言い土下座した。
ここまで必死になられると何も言えない。
「まあまあ」
と大翔は宥めた。
「僕はこうでしか罪滅ぼし出来ません! あいつらに従い悪い事を一杯しました。」
迫力と申し訳なさが痛い程伝わり、1分近い間があいた。
やがて大翔は笑顔で言った。
「わかった、一緒に行こう」
肩をぽんと叩いた。
「あ、ありがとうございます……」
中島は手を取り涙を流した。
「どうやら本気みたいですね」
と三夫は言った。
そして、その先には長い螺旋階段があった。
ひたすら4人は階段を登った。
ここまで来ると不平を言う暇もない。
長い長い階段である。
2キロはありそうだ。
これが最後の戦いになりそうな予感がした。
そして皆汗をかきながら登り終え、ついに頂上の城に来た。
「来た」
(この先に僕の兄さんが)
大きな城だった。
そして、恐る恐る意を決してついに扉をあけた。
その中は一般的な中世の城と同じ構造になっていた。
広い1階は赤いじゅうたんが敷き詰められ2階に繋がる大きな階段があった。
決戦の時が近づく。
一歩一歩踏みしめながら上がった。
そして……
「ようこそ」
玉座の間にはスパルダスと冥王がいた。
「よく来たね。意外と決戦は早かったね」
スパルダスは続けた。
「この場所は強いか弱いか関係なく、秘密を知っている者しかこれない。裏切って秘密を教える者がいないかぎり。ねえディード君」
ディードは名指しされて後ずさりした。
「君、これで裏切るの2回目だよね」
ディードは毅然としていたが汗をかいていた。
「まさか許されると思ってないよね」
その時だった。
「待て!」
中島は突然前に出た。
「なっ!」
「僕がここは1人で」
「何?」
とスパルダスは睨んだ。
「魔王召喚!」
と中島はカードを出し詠唱した。
「え?」
しかし何も起こらない。
「な、何故だ」
スパルダスは笑った。
「はーっはっは! 貴様はどうせ裏切ると思い、魔王のカードをすり替えておいたのよ」
「そ、そんな」
中島は全てが終わったような顔をした。
次の瞬間、スパルダスの光線が中島の腹を貫いた。
「!」
致命傷だった。
「裏切り者は死ぬんだよ」
さらにスパルダスは火を放った。
「うわああ!」
中島は炎に包まれた。
「はーっはっは! 燃えろ! 灰になれ!」
絶命する中、中島は呟いた。
「スターマークさん、ありがとう、俺、悪人じゃなく死ねた……」