助けたい気持ち
「いい加減にしろ。何の考えで私に仲間になれと」
ディードはぼろぼろの大翔を見て怒りと苛立ちで言った。
それだけでなく「こいつおかしいんじゃないか」いう変人を見る言い方も含まれていた。
何でこんなおかしな事を言う奴の言う事を聞かなければならないんだと。付き合いきれない。
しかし侮蔑され呆れられても、大翔は全く引かなかった。
目に強く力が入り凄みがある。
鬼の様な形相で痛みを我慢し這うように進んだ。
それはとても格好良いとは言えなかった。
惨めと言っても良い。
しかし、大翔はぼろぼろの体の中、「あ、あう」と言う感じで口を動かしながら必死で目の力でもディードに訴えた。
もう口を動かすのもやっとだった。
「ぼ、僕はあきらめない。あんたが仲間になるまでは這ってでも、倒れても、ぼろぼろになっても、言い続ける!」
しかし、苛立ち嫌な拒絶の顔をしたディードは容赦なくまた大翔に衝撃波を放った。
いい加減黙れと言う感じだった。
大翔は無惨、無様に吹き飛ばされた。
地面を滑り土に跡がついた。
力なくうつ伏せに倒れた。
「ぐ、ぐう」
これも相当効いた。
大翔はすぐには立ち上がれなかった。
ディードは溜まった苛立ちと蔑みを込め言った。
「どういう世迷い事だ。敵である貴様の仲間になれ等」
そしてカノンは止めに出た。
「もう我慢できない!」
そして攻撃呪文の態勢に入った。
しかし大翔はダウンしながらもたどたどしく手で合図し止めた。
フラフラの手を何とか上げながら。
「ま、まって、僕が説得する、ぐあ!」
今度はディードの目からの光線で大翔の体が焼けた。
「ああ」
大翔は背中が焼け苦しんだ。
のたうち回りたいがのたうつ力がない。
大翔はもう誰が見ても満身創痍だった。
しかし最後の力で唇を震わせながら声を絞り出した。
みじめな格好になっても。
「僕はあんたを殺さない、必ず仲間になってもらう」
ディードはしつこさに嫌気がさしていた。
しかし聞くのも飽きた。
そして質問を変えた。
「何で俺を許す」
大翔は倒れた体勢から首を上げ、口を動かし必死に声を絞り出した。
「この前キッド君が言っていた。ある人を『何となく』許せたと。だから僕もあんたを許したい。勿論殺された人の事は許せないけど」
その様子をディードは無機質な顔で見た。
「許せないけどなんだ」
大翔は強く絞り出した。
「あ、あんたにそれを、償ってもらう」
ディードはため息をついた。
「また世迷い事か、そろそろとどめだ」
話にならん、と言う反応だった。
その時声が響いた。
「待てっ!」
「あっ!」
カノンが気づき後ろを向くとキッドとデビイ、そしてウィムが来た
大翔も気づいた。
「うう」
「何だ、雑魚ども」
ディードはうっとおしい顔をした。
キッドは表情を変えず毅然と言った。
「お前を倒しに来たんじゃなく、大翔君の力になりに来たんだ」
「何だと? 倒しに来たんじゃない?」
ディードは真意が掴めず、キッドは説明を続けた。
「そうだ。あんたを大翔君が許すと言うなら僕はその手助けをする。大翔君のいう事を聞いてもらう」
「どういう事だ」
「僕が大翔君の壁になる」
「何?」
真意が計りかねた。
デビイも言った。
「俺も」
ウィムも言う。
「俺もだ」
ディードはまたうっとおしそうな顔をした。
「下らん、死にたくなければ下がっていろ」
ディードが大翔に魔法を放とうとした時キッドが抑えた。
ディードは何事かと言う顔をした。
「放せ」
「放すか」
ディードは振り払うためキッドに光線を食らわせた。
「ぐああ」
しかし後にデビイとウィムは続いた。
2人でディードを押さえつけた。
「キッド、俺が!」
「俺が!」
ディードはますます混乱した。
行動の意義が理解出来ない様だった。
「何故貴様らがあいつに従うんだ」
デビイが言った。
「従うんじゃない力になりたいだけだ」
キッドも苦しみ這いつくばりながら言った。
「大翔君が説得したいんならそれを邪魔させたくないし、許すんなら、信じるんなら大翔君の気持ちを信じるだけだ」