ディードの迷い
大翔はやっとの事でゴール近くまで来た。
山の中の奥深い場所で行き止まりに崖がそびえている場所でゴールの近くはそんなに斜面でなく平坦だ。
しかし舗装はされていない。
しかし、騒ぎのせいでほとんどの生徒の姿がなかった。
皆散り散りに逃げたらしい。
教師は対応に追われており何とも寂しい場所になっていた。
大翔は疲れや虚しさがいりまじった心境でため息をついた。
人が残酷に殺されるのを見たのは魔法学校の件もそうだが。
にがい飲み物を飲んでいる心境だった。
その上、ルディンまで死んだ。
手を差し伸べたが、死んだ。救えなかった。
虚しい、悲しい、そして自分の力の無さに苛立つ。
自分の甘さ、黒魔術の残虐さ。戦いの虚しさ。
一体、いつまでこんな事が続くのか。
正直、大翔は次の戦いへの気持ちの切り替えがついていなかった。
すると不意に上空から声が響いた。
それは辺り一面に響いた。
「やっと来たなここがゴールだよ、真崎大翔」
大翔はくるくる辺りを見回し上空を見てディードの姿を確認した。
強い眼差しで、しかし感情を出切るだけ抑え言った。唇をかんだ。
「あんたが最後の敵か」
大翔の中で何とも言えぬ憎しみと悲しみが交錯した。
死者を生んだ首謀者だからだと言う点が最も大きい。
対してディードはにやりとし、軽い口調で言った。見下すような口調だった。
「ふっ、そうだが、喜べ、まだ先がある。私を倒せばここから直接スパルダス様の元へ行けるぞ」
「何?」
これは朗報だった。しかし、何故か苛立った。
ディードは見下しながら説明する。
「この先には次元の階段があり、新魔晶結界がある。そこがスパルダス様の新しいアジトだ不服はないだろう」
餌をちらつかせるような言い方をした。
大翔は睨んで隙を見せず言った。感情を抑え探られないように。
「あんたと戦わなければいけないのか。理由がないけど」
「何?」
これはかなり意外だったらしい。
目元がぴくりとした。
大翔は説明した。
「あんたとは一時とはいえ共闘した関係だし。命を奪いたくはない。死んだ人の事は許せないけど。でもだからと言って殺し返したら虚しいだけだ」
ディードは顔を押さえて苦笑した。
笑みがこぼれるとはこの事か。
「ふ、ははは、あきれたお人よしだ。あきれを通り越す。私はお前を利用していただけだ」
「でも同じ体を使っていた」
相変わらずディードは笑っていた。
「あきれ返る甘さだな」
緊張感を漂わせながら大翔の目に敵意が段々となくなっていた。
「別にあんたは仇でもないし。仇だけど。」
これもかなり意外だったらしく動揺しないよう振る舞った。
今度は笑わなかった。急にきりっとした。
「理由がないと言ったが私はスパルダス様の命令に従い使命を果たすだけだ」
「わかってる。邪魔するのがあんたと戦う理由だと」
ふいにディードはビンを取り出した
「これを飲め」
回復薬と書いてある。
「回復薬?」
変に誠意があったのに大翔は勿論戸惑った。
しかしディードは言った。
「本物だ」
さらに
「これもやる」
と言い剣を渡した。
大翔は剣をさわり確かめた。ディードの気持ちを確かめるように。
大翔は言った。
「剣で切りあうんだ、決闘?」
少しだけ軽蔑が混じった言い方をした。
「あんたはもう反逆心はないのか?」
「貴様には関係がない」
嫌そうにぴくりと反応した。
「僕の体を使って反逆したくせにスパルダスが怖いの? あんた西ミランドの王だったんだろ? スパルダスに簡単にくじけていいの?」
「お前に関係ない」
とディードは隙を見せないように言った。
大翔は毅然としながら虚しさのある目で言った。
「僕は命を取りたくないから言ってるんだ。聞いたよ。西ミランドの魔王は人間とも仲良くしてたって。あんた人間界には興味ないんだろ? 何でスパルダスのいう事を聞くんだ」
痛いところをつかれ嫌がっているのを隠すようだった。
「うるさい」
「わざと言ってるんだ」
「黙れ! 黙れ!」
だんだん言い方が荒くなってきた。
「あんたまさか自分をごまかして命令に従ってるのか」
「うるさい」
ディードは必死に隠すようだった。
剣を構えた。
「死ね!」
「くっ!」
大翔とディードの切りあいが始まった。
大翔はやむなく迎え打った。
剣がぶつかりあう。
しかしディードは挑発されたことを気にして動きかあらかった。明らかに焦り取り繕っている。憎しみよりこころを覗かれた苛立ちだった。
切りあいが続いた。ディードの激しい剣撃をやむなく大翔が受け流す流れだった。
大翔にはディードの剣筋が粗く見えた。
苛立ちは激しくなる、
「まてっ!」
そこへ潜伏していたスターマークとカノンが現れた。
「スターマークさん、カノンさん、魔導人もつれてきたのか」