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転校までに……

「転校ですか」


 巣鴨は言う。

「そうだ、真崎の類まれな運動神経を生かして進路を選ぶんだ。挌闘学校はスポーツが盛んで強く、スポーツ推薦枠も多くある。お前にきっとぴったりだ」


「スポーツ推薦枠」

その言葉が何となく印象に残った。


「ああそうだ。よい高校や大学へも頑張れば入れるんだぞ。そうすれば良い会社にだって入れる」


 巣鴨はとても喜ばしそうに話した。

しかし大翔は浮かない顔をしていた。


 巣鴨は気づいた。

「どうした?」


「あ、いえ、急に言われたんで……」

やはり元気がない。


 時任は言った。

「皆が良いって言ったんだ。でも俺は反対した」


「えっ?」


「先生は真崎がこの学校にいるのが幸せなんじゃないかと思ってたんだ」

「……」


 何とも言葉が出なかった。

時任も十分自分を心配してくれている、それは分かっている。


 巣鴨は言う。


「と、時任先生、あまり『自分は反対した』と言うのは言わない方がいい。真崎も混乱するだろう。まあ、今度お母さんも呼んでゆっくり話そう」


「はあ、はあ」

後日、大翔は宮田とトレーニングしていた。


 宮田はしみじみ言った。


「そうか…転校か……」

「うん大分決まったみたい」


 さすがに大翔は寂しそうだった。

友人の宮田だから見せられる表情もあった。


「寂しくなるなあ、こうしてトレーニング出来るのもあと少しか、ミスをフォローできるのも、今までいろいろやらかしたもんなあ」


 遠くを見ながら宮田は回想した。


「はは、それは言いっこなしだよ」

 大翔は言いっこなしといいながら回想がうれしかった。

「あれ?」


 振り向くとそこには一馬がいた

「一馬君……」


「俺もトレーニングに混ぜてくれ……」


「いいよ」

大翔は笑顔で返した。


 3人でランニングが始まった。

一馬は不意に言った。


「このランニングが終わったら、もう1回短距離勝負してくれないか?」

「えっ?」


 何となく一馬は思い詰めていた

「真崎は転校するんだろ? だから」

「よし、俺も入れてくれ。俺も前から大翔に勝ちたかったんだ」


 大翔は喜んで受けた。

「じゃあ3人で」


「よーいどん!」


やはり宮田は少し遅れ大翔と一馬の接戦になった。

また大翔は唸り声をあげながら走った。


(こいつの声と気迫にはいつも圧倒されるな……)


 前回と勝るとも劣らぬ接戦になった。


しかし前回は大翔にとって背水の陣のような異様な追い詰められ方の様な物があったがそれが今回は少し軽減されているのが一馬も感じていた。

(少し心に余裕が出ている?)

(少しだけペース配分が前より出来るようになった)


 そして激しい接戦の末、同時ゴールの様で一馬が少しだけ競り勝ったように見えた。


 宮田は言った

「ほんの少しの差で一馬の勝ちみたい」


「はあはあ、速いなあ一馬君は!」

「いや、お前も短期間ですごく変わってるよ」


「やっぱり練習してるの?」


「基本的に家の周り何週もしてる。あと時々神社の階段を往復する。」

「すごいな」


「誰よりも速くなりたいっていってたけど何かきっかけがあったの?」


 一馬は昔を思い出した。

「色々あってね……俺昔足を折ったんだ。家の手伝いで運送をやって、転んで重い荷物がずっしり右足に……実は俺全然足が速くなかったんだ」


「へええ」


「足を折って周りに誰もいなくて助けを呼んでも来なかった。自分の足がとてつもなく不便に感じたよ。で這って皆がいる所まで行ったんだ。それからは救急車呼んでもらえたけど。入院してからは医者も看護婦さんもすごく優しくしてくれた。だから皆が大事にしてくれたこの足で何かが出来るようになりたいと思ったんだ。リハビリも一生懸命やった。それで骨折が治ったらクラスで1番の速さになってたんだ。それまでは遅い方だった」


「えええ……」

「神様や皆が俺の足を変えてくれたんだと思ってる。だから無駄にしたくなかったんだ」


 その後また大翔は休み時間にこにこしながら通る人たちに挨拶をしていた。

しかしとりわけ女性徒の目が厳しくなった。


「気持ち悪い……」


 また男子生徒が無言でにらみ避けようとしてきた。しかしそこへ三夫が来た。

「やめろよそういうの、明るいのがどうしてだめなんだよ」


 そこへ宮田も来た。

「俺もそう思うぜ」


 他の男子生徒が聞いた。

「宮田はなんでいつも真崎をかばうの?」

「俺はクラスのガキ大将だから、だけでなくもっと小さい頃からの付き合いだし、なんだかんだ一緒にいてこいつの事きらいじゃないからな。いつも一生懸命だし」


 しかし別の男子生徒は言った。

「でも真崎は前なんかもっとひどかったよ。学校におもちや持ってきて見せびらかして振り回すしこいついくつだよって思ったよ」


 別の生徒も同意した。

「そうそう」


 しかし宮田は口を結んで言い返した。

「俺はそれでもいいと思う。悪気があってやってるんじゃないんだ。みんなとなかよくしたいんだよ。」

 

 しかし大翔は口を開いた。

「僕もうすぐ転校だから……」

 

 さすがに沈黙が流れた。 

男子生徒たちは驚いた。


「えっ? 転校?」

「うん、挌闘学校に」


 皆がぎょっとした。その反応に大翔は戸惑った。

「えっ挌闘学校に行くの?」

「や、やめといた方がいいかと」


「えっなんで?」

さすがに聞かずにはいられなかった。


 生徒たちは怖がっていた。

「あそこすごい雰囲気って言うか喧嘩が多いらしいよ」

「そうなの? 不良学校なんだ?」


「いや不良っていうか、すごく喧嘩が多いんだって」

「なんでも、ハイパートライアスロンって言う競技の出場枠を巡って毎年喧嘩が学校各所で起こるらしい」


 大翔は怖がりながら半ば楽しみ様だった。

「こわいなーなんだか」


 宮田が言った。

「俺も少し聞いたことがある、あながちデマじゃないかもしれない」


 三夫は再度大翔を家に呼び魔方陣を開き呪文を唱えた。


「いやあ! また呼んでくれたね!」

とロッド・キッドは嬉しそうだった。


 三夫は

「もうすぐ彼が転校するんです。それでお別れみたいなもので」


 キッドは言った。

「そうか何か思い出が必要だよね。じゃあまずパーティだ」


キッドが腕をならすとごちそうがいっぱい出てきた。

「すごい!」

「じゃあ食べようか」


 大翔は切り出した。

「あの、挌闘学校知ってますよね」


 キッドが答えた。

「うん。魔法学校が立つ予定の近くにある学校だ」


「あそこって変な学校なんですか?」

「うーん、前も言ったけど、調査に行った僕の仲間が帰ってこなくなった」


 これはかなり大翔の不安をあおった。

「そうなんですか。実は僕そこへ転校するんです」

「うーん……大丈夫かなあ」


 大翔は

「あの話は少しそれるんですが、お願いがあるんです」

「何?」

キッドは唐突そうな顔をした。


 大翔は思い切り懇願した。

「僕の病気や障害を治して下さい!」


 沈黙が流れた。キッドは申し訳なさそうに

「ごめん、僕にはそこまでの魔力はないんだ……」

「そうですか……」


「でも今より君の能力を上げる事はできる!」

「えっ!」


 そう言ってキッドは呪文を唱え始めた。するとみるみる大翔に力が湧いてきた。まばゆい光を発している。

「これはいったい!」


「君の全体的能力、体力、筋力、持久力、動体視力、反射神経等すべてをアップさせた。これでほとんどのスポーツがこなせるようになる」


「あ、ありがとうございます!」


「いやありがとうでいいよ、友達なんだからさ。後僕も挌闘学校について行く事にする」

「ええ!」


「いなくなった仲間を探さないといけない。それだけでなく君はこれから色々な争いや戦いに巻き込まれると思う。その時に君の体力と僕の魔法を使う」


 次の日正式に大翔も加えた面談になった。

「大翔君は明らかに普通の子供と違います。病気であり障害です。この事に関して我々は何回も話し合いを重ね結論が出ました。しかし大翔君の類まれな運動能力を生かさない手はありません。挌闘学校に転校を勧めます!」


次回から格闘っぽいシーンが増えます。

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