レース始まる
結局その日は来た。
レースは〇山のふもとから山道→登山コースを行きその間に障害が待ち受ける仕組みだ。
コースは小学生と思えない40キロメートル。
さすがに将来を決めるためのレースであるだけでなく、挌闘学校の生徒は皆競争好きだ。
皆まだかまだかと高ぶっていた。
それはすごく伝わる。
しかし……大翔はそうでなかった。
気が気ではなかった
もちろん、理由はディードから聞いた罠とコース改造の計画である。
そのためどうすればレースに勝つかどころではなかった。
もちろん自分を襲ってくるだけならいい、問題なのは他の生徒が例外なく襲われることだ。
それを防がなければならない。
しかし大翔の心配をよそに刻一刻とレース開始時刻は近づく。
心臓の鼓動が他の生徒と違う意味で高鳴る。
一体このレース中にこれから何が起きるのかと。
もしも大事が起きてしまったら。
そして、その不安を砕くようについにホイッスルが鳴った。
皆一斉に駆け出した。
さすが将来がかかっているだけありみな必死に俺が俺がと先に出て行った。
トップ争奪戦と言う感じだ。
しかし、大翔は憂鬱な気持ちでその集団をどこか客観的に見ていた。
不安と憂鬱で周囲の背景がモノクロに見え、くすんだ。
自分はレースで勝つことを考えてる場合じゃない、しかも敵を1人で防がなければならないと。
そして走り出した後、先頭からビリまで50メートルが経過した。
今はまだ、幸い何も起こらない。
100メートル、200メートルと過ぎて行った。
様子を見ながら大翔は速すぎず遅すぎずのペースを守った。
そして不安をよそに遂に予測とは違い何も起きないまま400メートル行った所でコースの難関の1つである崖のような急斜面が待っていた。
舗装されていない。要するに山の崖の様な斜面だ。
皆うわー、と言う気持ちだった。
大翔は走るだけならともかくこのきつい場面を別の事を考えながらやるわけにいかないので集中する事にした。
公園にある山のように足の踏み台がない。
しかし心機一転、皆が意気揚々と斜面にチャレンジする。
大翔もそれを追う様に行った。
まるで崖を上るように手で山の上部をつかみ体を引き上げる作業だった。
上腕に負担がかかりきつかった。握力も使う。
さすがに敵の事を少し忘れそうだった。
この時ばかりは少しレースに集中した。
そして苦労の末斜面上にやっとよじ登ると逆に今度は滑る台の様に下向けの斜面だった。
ここは滑るのが怖いが一気に滑り駆け下りた。
そしてそこから平地に戻り少し走ると今度はさっきほどではないが30度程角度が付いた長い斜面があった。
距離はさっきの斜面よりずっと長い。
これもきつい。
皆そろそろ疲れ始めた。
大翔は踏ん張り何とか長い道を走っていった。
その時だった。
何の前触れもなく突如近くの生徒に対し上空から火の玉が落ちてきて燃えた。
「なっ!」
一瞬の出来事だった。
皆隕石が落ちて来たと思った。
皆空を見上げるとまるで忍者とギャングを合わせたような上半身は鎖帷子で腕を出し黒のズボンをはいた2人組がいた。
大翔は叫んだ。
「来た!」
片方は大柄で巨大なスコップを背中に携え頭はスキンヘッドだが長髪が前後に2本あり、片方は四角く醜い顔で小柄だが筋肉はついていて肩幅はとても広いかぎ爪を腕に着けていた。
1人目が言った。
「ようこそ、死のレ-スへ」
2人目が言った。
「我々地獄戦士がナビゲートしよう」
「今までの魔法使いとは明らかに雰囲気が違う……」