明日へ
直前まで大翔は真っ二つに切られると思っていた。
グランも同じく切るつもりだった。
覚悟と信頼のたまものだった。
大翔が真っ二つになるか覚醒するか、本当にグランにとっては自分の命より重い賭けだった。
大翔はにわかに変わった事が呑み込めず言葉を発さず自分の手などをきょろきょろして確かめた。
「はあはあ」
グランはまだ息を切らし落ち着いていない。
相当な精神疲弊の様だ。
「あと、ほんの少しタイミングがずれたら……」
大翔は礼を言った。
「ありがとうございます。成功みたいです」
「よ、良かった」
凄まじい緊張感に支配されていたのか、グランは汗だくなうえ腰が砕けた。
「危なかった。本当に君を切るところだった」
「構いません」
大翔はこんなグランの姿を見るのは初めてだった。スパルダスにも全く引けをとらなかったし、ルディンと戦った時もそうだ。
大翔はグランの疲れを察し2人で少し休んだ。
余計なおしゃべりはせず回復に集中した。
そして5分経ち大翔は立った。
「じゃあ力の確かめをしましょう」
「うん」
とグランは答えた。
無理はしていないようだ。
彼は時間内で回復する術も優れているらしい。
大翔は言った。
「まず僕とグランさんが戦ってどの位の力を消耗するか、どの位の時間持つのかとか色々確かめたいんです」
「分かった」
大翔は狭いとは言えグランと剣道の様に模擬戦を始めた。
大翔は最初から飛ばした。
「はあはあ」
と大翔は息を切らした。
「どう?」
肩で息を切らしながら大翔は言った。
「やっぱりずっと100パーセントの飛ばした状態でいると疲れるみたいですね。後変わっていられる制限時間を調べたいです。じゃあ今度は体の力を60パーセント位に抑えます」
そしてまたしばらく模擬戦を再開したが元に戻ることはなかった。
「後は自分の意志で変われるのかとかスキルや技を使えるかとかですね」
そして模擬戦は続いた。
大翔は目から光線を出しそれをグランは剣で防ぐ。
手からの衝撃波を容赦なく叩き込みそれに耐えるグラン。高速の攻撃を仕掛けグランに受けてもらった。
「一口に全力って言ってもパワーは落としてスピードだけ上げるとかそういう事も出来るみたいです。後スキルは何発使えるかとか、自分でも知らないうちにパワーが減ったりする事があるのかとか色々知りたいです。と言うか把握しておかないと駄目なんです。敵が何人出てくるかわからないし7レースだから僕もパワー配分しながら戦わなければいけないんです。戦うの1人ですし」
「分かった。僕はとことん付き合う。でもやっぱり1人で戦うのはきつい、レースでなければ皆で戦えるのに。本当なら僕がレースに出て奴らと戦う事が必要だと思う。もしあれだったらついていこうか」
「あ、大丈夫です。僕1人でも」
ちょっと強がりだった。
「いや、でも」
「だ、大丈夫です」
「今言い方自信なかったような。本当に大丈夫かい?」
大翔はスキルの話をした。
「スキルについて言うと、超雷撃は約3回、衝撃波は3回とか頭の中に図が出てくるみたいなんです」
「うーんなんかわからない」
グランは混乱した。
大翔の言わんとしている事のイメージが掴めなかった。
「図が出てくるか……魔王のスキルって本当に固有の物だし我々には分かりにくいなあ」
「それに、そもそも魔王の力を教えてくれる人がいないじゃないですか。ディードに聞いただけなんです。では次にパワー60パーセントに抑えてどのくらい力が出るか、持つかの実験します」
また模擬戦は再開された。
ふいに大翔は言った。
「何か自分が自分じゃないみたいなんです。何かまるで人形を動かしてるみたいで」
「も、もう寝た方が」
グランは自分も疲れていたがさすがに大翔の身を案じた。
「そうですね。よし明日は勝負だ」
元気に言ったが大分汗をかき疲れていた。
大翔はディードの言葉を思い出した。
「貴様の兄も待っている」
(それを知りたい)
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少し展開が遅くなりすみませんでした。次回から変わります。