デイードの挑発と大翔の決意
そして、翌日大翔は急にディードに校庭の隅に呼ばれた。
さすがに大翔は身構えた。
「何の話だ」
しかしディードは余裕綽綽で小馬鹿にした感じだった。
「ニュースを見たかな? 色々な学校のレースが混乱し生徒が怪我したり行方不明になってるだろう。あれは我々の仕業だ」
大翔は低い声で怒った。
「何でそんな事を」
しかしディードの態度は変わらない。しかし少しだけ言い方に重みを含ませた。
「言ったように全国の子供をモストチルドレンのみにするためだ。他の生徒はいらん」
「いらんって」
大翔は睨んだ。
「劣等種族は排斥し我々黒魔術が進化成長させた子供のみで世の中を変える。しかし劣等種族も命まで奪うのは良くないとして拉致して殺人兵士に仕立てているのだ。モストチルドレンが支配し、劣等種族の子供は人殺しの戦士になる、素晴らしいだろう、これから様々な学校でそれが起き広まる」
「そんな事!」
「さらにはモストチルドレンの為競争は加速し、モストチルドレンは魔法を使えるため魔法で普通の生徒を倒しあきらめさせ従属させる。これでさらに支配は広まる。多くの学校に送り込んだモストチルドレンは魔法を使い生徒を支配している。さらに格闘学校でも『レース前に潰していい』と我々が校長を操り決めた新ルールによりいよいよ支配、被支配の関係となる。学校から広まりやがて世界を支配していくのだ」
「ひどい」
大翔は知りながら防げない苛立ちに歯ぎしりをした。
ディードはさらに大翔の苛立ちを増やそうと冷酷に言い切った。
「貴様には防げん。もし何とかしたければ今度開かれる挌闘学校のトライアスロンを楽しみにしろ。貴様を倒す仕掛けが多くある。そしてとどめに私との対決だ」
しかし言い方は嫌味だったが『対決』の部分の言い方にどこか気持ちがこもっていた。大翔を倒したかったのかもしれない。
「!」
対決と言われて何となく大翔は宿命の様な物を感じた。
「力を得たようだが私には通じん」
冷たく重い言い方をした。
大翔は少し言い方を変えた。
「あんた冥王たちが憎くて反逆したんだろう。もうしないの?」
「ああ、しない。あの方々は強大で崇高なお方だ。私が立ちうち出来るような相手ではない」
この大翔の言葉は意外だったらしく少しだけ動揺が見て取れた。
「怯えてるんだ、スパルダスや冥王たちに」
「何?」
一瞬でディードの目つきが変わった。
「あんた変わったね」
大翔は目も言い方もどこか見下していた。
ディードはプライドを傷つけられた事を見抜かれないよう必死に取り繕った。
「俺の目標は黒魔術のトップになる事だ」
大翔はさらに挑発した。
「どっちかはっきりしないね。でも僕は他の生徒達を助けるためレースに出る」
「楽しみにしているぞ。言っておくが貴様の仲間たちはもちろん参加出来ん」
その言い方は本当に楽しみにしてるのと必死さが両方感じられた。
「いいよ、僕一人でやってやる」
大翔は決意を固めた。
「貴様の兄も見ているぞ」
「何⁉」
「ふん、何でもない」