トライアスロンと再会
少しして、大翔は人間界に戻っていた。
今日は普通に学校に登校した。しかし
「おはよう、あれ?」
大翔が朝学校に来ると誰も生徒がいなかった。
しかし皆荷物は置いてある。
「あれいない」
そこへ奈良が汗をかきながら教室に戻ってきた。
「おう真崎」
「誰もいないんだけど」
「俺は教室に忘れ物取りに来たんだけど皆体育館で体鍛えてるよ」
「えっ?」
言われるまま、大翔は奈良と体育館に行った。
「うわ! 朝からすごいみんな走ってる!」
各々の生徒がかなり速いペースで体育館をランニングし、皆赤い顔で汗をかいていた。
朝と思えない熱気だ。そして少し殺気も感じる。
なにか必死の形相だ。
「何かの練習?」
「ハイパートライアスロンが近いからな」
奈良は説明した。
「ハイパートライアスロンてそんなにすごいの?」
「詳しくは今日後で先生が説明すると思う。まあ家の学校で一番の名物。お前も乗り遅れないように」
「う、うん」
大翔は戸惑い、少し不安だった。
しばらくして朝のホームルームで教師が入ってきた。
朝の朝礼が始まった。
プリントが配られた。
『ハイパートライアスロン開催について』
教師は説明する。
「ええ、ご承知おきの通り、〇月〇日にハイパートライアスロンが開催されます。で競技方法は紙に書いてある通りです」
大翔はプリントを読んだ。
「何々、トライアスロンとサバイバルゲームをかけた競技、マラソンコースから自然の中に入り水泳や障害物等を乗り越え全40キロのコースを走ります。さらに格闘とけんかが混じってます。マラソンコース一覧。長そうだな40キロ。でもこの格闘けんか混じってるってなにこれ」
教師は説明する。
「勝った者には今後の将来、つまりスポーツ特待生枠が与えられます。で通常のレースと違うのは気にいらない相手を蹴落とす事が可能な事です」
「えっ? 何これ? 喧嘩? 先生これどういう意味ですか」
大翔は手を挙げ質問した。
教師は結構平然と答えた。
「殴ったりけんかをしていいという事です。はい、レースの邪魔になるライバルをレース中に殴りあいして蹴落としていいという事だ」
大翔は呑み込めなかった。
「け、けんかって他の選手と? トライアスロンでしょこれ」
「そこが違う所なんだ」
と奈良は言った。
大翔はますます戸惑った。
大翔は疑問を消せない。
「喧嘩を推奨してる。は?」
番取が言った。
「お前もやればわかる。すごく過酷だ。でも甘さを捨て皆が敵である事が学べると思う。俺達皆将来がかかってるんだ」
番取は言う。
「俺たちの学校生活も未来も、全て戦いだよ」
クラスを見回すと皆殺気立っており自分以外は皆敵の猛獣の様だ。
「何かすごい所へ来ちゃったな」
魔王の力を得た大翔とは言えさすがに常識外れのレース内容に大翔は戸惑った。
大翔はため息をついた。
(はあ、これで将来が決まるんだ。そうだな僕にとっては大事な時期。だけど僕にはスパルダスと戦う義務があるんだ)
その時突然教師が言った。
「ところでハイパートライアスロンに備えて外部から非常勤体育教師を呼びました」
「えっ?」
次の瞬間大翔にとってあり得ないほどの名前が聞こえた。
「ディード先生です」
「ええ?」
1人の青年が入ってきた。
それはスーツを着て頭の被り物を外してはいたが、まぎれもなくあのディード・スペードだった。
「なっ!」
大翔はあまりの驚きのあまり立ち上がり叫んでしまった。
「ディードスペード、あんたがなんで!」
にわかに大翔には受け止め難い事実と光景だった。
大翔の叫びに対し皆何だ何だと言う雰囲気だった。
教師はディードに聞いた。
「知り合いかい?」
「宜しく」
何もない様に笑顔で挨拶したことに大翔は憤慨した。
「何が宜しくだ! 何を企んでいるんだ!」
教師はディードに聞いた。
「どうした? 何かあったのか?」
「いえまったく何の事か」
全く意に介さないディードはまるで普通のさわやか青年の楊にふるまった。
そのとぼけ方に大翔は苛立った。
涼しい顔で全く知らないような顔をした後ディードは大翔を見てにやりと笑った。
大翔はディードを指さした。
「この人は悪い魔王なんです! スパルダスの部下なんです!」
大翔は必死に叫んだ。
「真崎、大丈夫か?」
教師はなだめた。
その時大翔の耳に魔物が出たと悲鳴が聞こえた。
「先生、僕ちょっと!」
「あっどこへ行くんだ」
悲鳴をキャッチし大翔は大急ぎで教室から出て行った。
その頃町で3メートルはあり青肌の1つ目の巨人、サイクロプスが2体暴れていた。
一体何かと人々は大騒ぎになっていた。
2体はこん棒を構え行く人たちに襲い掛かろうとしていた。
1人の老人が殴られ犠牲になり悲しむ老婆も殴られ吹っ飛ばされた。
さらに若者や中年男性らも殴られた。まわりに顔面が崩壊した、血の流れた死体が転がった。
一目散に皆逃げていく。
しかしそこへ急いで大翔が駆け付けた。
「僕が相手だっ!」
素早く大翔は魔王の姿になった。
襲い掛かるサイクロプスだったがよけながら大翔はうまくサイクロプスのこん棒攻撃を受け投げ飛ばした。重い巨体が路地に沈む。
さらにもう1匹が襲い掛かろうとする時そこへグランも駆け付けた。
グランは安い剣で一閃しもう一匹を切りつけ倒した。
サイクロプスは剣で切られ胸から血を流し大きな音を立て巨体が倒れた。
もう1体の倒れた方もグランが突き刺し倒した。
何とか騒ぎが収まるのを2人は待って話し合った。
「なんてひどい事を」
グランは死んだ人がいることに怒りを隠せなかった。
「僕たちの到着がもう少し早ければこんな悲劇は生まなかった」
泣きそうな顔でグランは拳を震わせた。
自分の力の無さを嘆いでいる様だった。
グランは怒りも込めた上で言う。
「全く卑劣だ。罪もない人々を襲わせるとは。許せない」
「はい」
「しかも攻撃がどんどん激しくなってる。キッド君にまだ攻め込むのは早いと言ったけど、一刻も早くスパルダスを倒さなければ」
「僕も許せないです。人の命を奪うなんてむごすぎる。はい。犠牲者が増えるのを防がなければ」
「でも大翔君は力を取り戻したじゃないか。後はいかに魔物の出現を知り食い止めるかだな」
「ああ、でもまだ秘密と言うかきっかけがよくわからないんです」
「それはこれから解明していこう」
(僕の出生の秘密も)
と大翔は心で思った。
「グランさんは力は戻ってるんですか」
「昼間はトレーニングしてどうやったら戻るか試してる」
「僕も学校に戻らないとって、あ!」
「どうしたの」
「実は」
とディードの事を話して聞かせた。
(ディード・スペード、何が目的なんだ)