モストチルドレンの計画
グランの活躍でルディン達は追い払われた。
しかし、学校は襲われ、救急車や消防車を呼ぶのが遅れ、ケガ人がかなり出てしまった。
火球でやけどを負った者、同じく校舎の火災で逃げるのが遅れた者、風の刃で切られた者。
体が焦げたり切り傷で血を流す者、凍傷を負った者などが痛々しく搬送された。
そして、あらんことか死者が出てしまった。
グランが駆け付けルディンは倒した。しかしその喜びよりも怒りと悲しみは大きい。
報を聞いたキッドがこれまでになく体を震わせ憎しみと悲しみをたぎらせた。
「許さない、あいつら、こっちから攻め込んでやる! そして滅ぼしてやる!」
(キッドさんがあんな事を言うなんて)
と三夫は思った。
元に戻った大翔も言った。
「許せない! 一緒にあいつらを攻め滅ぼそう!」
「いや、ちょっとそれは」
と田辺が言ったが大翔は
「君に何がわかるんだ! 殺された人々の気持ちが!」
三夫は話題を変えようとした。
「グランさん、体と剣の様子は?」
「ああ、正直あまり良くない、スパルダスクラスの相手をするまでは戻ってない」
「ミランドに来てもあまり変わらないんですか」
「うん、環境ではなく、魔晶結界から叩き落された衝撃じゃないかと思う。後は大気などの関係かと」
「その剣は退魔の剣じゃないんですよね」
「うん、もしもの護身用に買った安い剣だ。でももう折れちゃった。やはり強力な剣が必要だな。それと力を戻すことも」
三夫は言う。
「そうですよ! スパルダス達に勝つにはグランさんの力が絶対必要です」
キッドは言う。
「そうだな。グランさん、大翔君、三夫君の3人の力で勝ったんだもんな」
「それと歴代魔王と中島さん」
「あいつどうしたんだろうか、無事かな」
グランが話を変えた。
「それにしても大翔君は一体どうしたんだ」
「はい。実は魔王の力を取り戻したいと思ったのに戻らなかったんですが、強く強く願った時に急に知らない人の声が聞こえて同時に体が変わったんです」
グランは言った。
「な、なんかすごいな」
三夫は言った。
「一体声の主は誰なんでしょうか」
グランも言った。
「それもこれから探らないと、大翔君の力の秘密がわからない」
大翔は答えた。
「そうですね。今回まぐれで変わったみたいなもんで。それと同時にグランさんの力を元に戻す方法も知らないと駄目ですね」
グランは諭す様に言った。
「キッド君」
「はい」
「気持ちはわかるが攻め込むのはもう少し待った方がいい」
キッドは少し気持ちが静まった。
一方、ルディンはスパルダスの元に逃げ帰った。
スパルダスは報告を聞いた。
「何? 右腕を」
「は、はい! 真崎大翔とグランに」
ルディンは悔しがった。
「むう」
「あとは私たちにお任せを」
と言い奥から戦士が2人現れた。
ルディンも頼んだ。
「私目にもう1度チャンスを」
「よし私が力を貸そう」
アダラングが言った。
またスパルダスが言った。
「ディードスペードにはとっておきの役を用意している。
その時伝言役が来た。
「スパルダス様、王様がおよびです」
スパルダスは魔晶結界に新しく作られた部屋に行った。
「いいよ、入れ」
と子供の声が聞こえた。
「失礼いたします」
と深くスパルダスはお辞儀をした。
「モストチルドレンの王、真也様」
偉そうに座ったその少年は大翔に似ていた。少しやせて背が伸びたようで、王族の装束を着ている。
非常に話し方が偉そうだ。
「まあその名はあまり好きじゃない、僕が真崎大翔の腹違いの兄、である、真崎家の真の息子だと思わざるを得んからな」
「はっ」
とスパルダスは下がった。
真也は説明する。
「予定通り、君の育成、教育システムによって我々モストチルドレンは素晴らしい肉体、知性の成長、いや進化を遂げた。礼を言う」
「さすがは選ばれた人種のモストチルドレンの皆様は皆優秀でございます」
(ま、まさかこれほど成長進化するとは、序列自体が変わってしまった。真也様のみならず他のモストチルドレンはすでに私より上の立場)
「今色々計画を実行してる。ほらみろ」
と言いモニターに魔物が人間のいる街を襲う映像が流された。
「御覧の通り魔物に人間界を毎日襲わせている。そして我々の動きを探る正魔法教会の者たちを探してとらえる。後は勇者グランと真崎大翔とか言うやつを倒す計画だ」
「あの計画ですね」
「うん、彼の学校にモストチルドレンたちを入学させる。何とかトライアスロンとかに参加させる。モストチルドレンたちによってあの小僧を倒すんだ。そうすればいよいよモストチルドレンが人類を支配する時は来る」
スパルダスは思った。
(進化した子供たちによる劣った人間たちを支配する世界となるのか)