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デビイ対キッド

 大翔は意気揚々とキッドの通う魔法学校に入った。


 そして額に手をあてやや大げさなフォームで眺めた。

「フローズン魔法学校中等部」と看板にある。


「広い広い。僕らの小学校よりずっと広いや」


 大翔と三夫、田辺には魔法学校の大学の様な広さと校門が新鮮だった。


 もちろん建築や植物の配置による風景の綺麗さもだ。

「名門校って感じだね」


 校門の外にいたグランは言う。

「じゃあ、僕はこれで帰るから。僕位の年の人がいると怪しまれるだろう」


「はい、じゃあまた」


 そういって大翔達はグランと別れた。

「うわー広いなあ」 

好奇心丸出しで大翔はあちこちに目をやり観察した。


 田辺は

「僕たちの世界にない文明を感じる」

と目を光らせた。


「魔法の授業見たいなあ」

と大翔は言った。


 他の生徒は少しその様子を怪しむような顔をしていた。


 ところが大翔は少しよそ見をした隙に、ドンッ!と音がして人にぶつかった。


「いてえな!」

「え……」

大翔は振り向き冷や汗をかいた。


 その相手はキッドに絡んできた3人組の不良だった。


 やばいこの人たち! とさすがに大翔は慌てた。


 しかしそう思う間もなく言われた。

「おい、どこ見て歩いてんだクソガキ!」

ドスのきいた声がとどろいた。


「あ、あわわ」

大翔自身、悪人におびえるのは久しぶりだった。

そのため上手く詫びの言葉が出なかった。


 真ん中の少年に続き2人目は言った。

「謝り方も知らねえのか。あ?」


 大翔達3人とも怯えて声が上手く出てこない。


 三夫は小声で言った。

「まずいよ大翔君、僕たちにはもう力がないんだ。ここは謝るか逃げるしかない」


 右側にいた少年が顔をずいと前に出し見下し威圧した。


「俺たちがこの学校を仕切るデビイさんの1番子分だと知らねえのか」

「まあ、こんなガキたちは知らねえだろよ」


 しかしついに大翔は最近の癖で反撃した。

「何だとお前たちになんか負けるか!」


「あ?」

これは相当少年の勘に触った。


「何だこののぼせたガキは。教育が必要だな」

いよいよ少年たちは怒りだした。


 しかし大翔は引き下がらなかった。

「魔法を食らわせてやる!」

しかし大翔が指さし詠唱しても何も出なかった。


「あれ、出ない」

「ぎゃーははは、出ねえじゃねえか」

少年たちは一転しあざけった。


「あ、あう」

大翔は恥ずかしさと危機感に慌てた。


「ここは謝った方がいい」

と三夫が言ったため大翔も従った。


「は、はいごめんなさい」

恐怖と慌てからへこへこ大翔は今更ながら謝った。


 少年の態度があざけりから怒りに変わった、

「ごめんなさいじゃねえんだよ。俺らが誰だか知ってんのか? あ?」


 また大翔が余計な事を言った。

「そうですね、いかにも下っ端の3人組と言う感じで、ははは」


 大翔は何故か頭を掻き照れながら言った。

三夫が青くなった。


 3人組は顔がみるみる紅潮した。

「こ、この空気の読めねえガキに世の中を教え込んでやる」


「た、助けて!」

しかし他の生徒は怖がって見ぬふりである。

大翔達は連れていかれた。



 大翔と三夫と田辺は校舎裏に連れていかれ、加減はしているがかなり殴られた。

「この辺にしとくか」

「うう」

傷は深い。


 そこへまた偶然のようにデビイが来た。

「えっ? デビイさん!」

「何やってるんだ?」


 3人組はデビイに「子供をいじめている」と思われるのがいやで必死に取り繕った。

さっきまでの凄みが嘘のようだ。


「あ、いえこのガキたちがふざけた態度取ったんでお灸をすえてたんすよ。虐待とかじゃ」


 しかしデビイはあまり怒っていなかった。

「そうか、まあいい。それより今日新入りが入ったんで紹介する」

「新入り?」


 1人の少年は前に出てぺこりとお辞儀をした。

「マックといいます。宜しくお願いします」


 そのマックと言う少年はどこにでもいそうな目の小さい顔は正方形に近い長方形、おとなしそうで不良とは縁遠かった。

「こいつ弱そうじゃないすか」


 デビイは説明した。

「何か俺らにあこがれてて仲間に入れてくれっていうんだよ」

「ふうん、面白いやつ」


「ところでそのガキたちは」

デビイは大翔に目をやり聞いた。

「ああ、こいつら学校をうろうろしてた変なガキなんすよ」


 大翔はもがいだ。

「放して! キッド君に迷惑がかかる!」


 急にデビイはピンときた。

「キッド? ロッドキッドの事か? 知り合いか?」

「は、はい」


 デビイは指示した。

「ふん、ちょうどいい捕まえろ」

「わあ!」

大翔達は縛られた。


 そして大翔がキッドと会うこともなく、やがて魔法闘技の授業がやってきた。

先ほどデビイが勝負しろと言った授業である。


 グラウンドはスポーツ有名校のようで広く、500平方メートルほどだった。

アスファルトでなく土であった。


 キッドのクラス総勢30名は校庭の真ん中で整列していた。

さっき絡まれたキッドはデビイの方を見やった。

デビイがにやりと笑ったのが不気味だった。


 教師は指示した。

「じゃあまずは射撃から」

これは手から出す魔法を上手く射撃の的に当てる授業だ。


 順番に1人ずつ生徒は前に出て集中して詠唱し、的に光の矢をおのおの放った。


 当てる生徒、外す生徒がいる中キッドの番がきた。


 キッドはデビイの事が気になりながらも、何とか集中しそれを見せないようにし、手で形を作り詠唱し狙いを定めた。


「行け!」

キッドの放った光の矢は見事中心に当たった。


 喝采を浴びる中次にデビイの番が回ってきた。 

終始にやりとしながら手を組み詠唱した。キッドにはそれが不気味だった。


 彼も見事中心に当てた。

余裕綽々で精神統一は必要ない、いやしているのだろうが、彼はそれを見せなかった。


「はい次は闘技の授業です」


 これは魔法のステッキに魔力を込め、相手と剣道をする授業である。2人づつ前に出て勝負する。


 そして何人かの生徒が取り組んだ後、ついにキッドとデビイは向かい合った。

緊迫感が走る。


 デビイは向かい合うとやはりにやにやしていた。それに対し猜疑心を抱いたキッドは


「何がおかしいんだ?」

と小声で聞いた。


「くっくく」

と言いながらデビイは横の遠くを指さした。キッドははっとした。


 何と3人組が大翔と三夫、田辺を拉致していたのだ。

「あいつらお前の弟か? あいつらの命が惜しけりゃわざと無様に負けてもらうぞ」

「やめろ! 大翔君たちは関係ないだろ」


「まあ、俺1人でもお前をぶちのめす事は出来る。だが俺はお前の中途半端さが前から嫌いだったんだ」

「中途半端さ?」


 冷徹な笑みの中に怒りと憎しみを宿した目つきでデビイは言った。


「そう、この学校は金持ちか平民出か2つに分かれている。しかしお前はそこそこ裕福でどちらにも属さない。さらに成績も中の上、努力も中の上で中途半端なお前が気にいらなかった」


「中途半端、かもしれない。でも僕は魔法学校を作ったら人間と友好を結ぶ仕事がしたい夢があるんだ。それに向けて努力してるんだ。お前にはわからんがな」


「そんな努力してるとは思えんがな」

「くっ!」


 教師は怒った。

「こら何しゃべってる! 早く始めんか!」

「お前みたいな中途半端な親から生まれた奴なんてたかが知れてる。偉くもなく貧乏でもない、中途半端な生き方をして中途半端な息子が生まれた。俺はビリより中途半端は嫌いなんだ」

「そんな理由で!」


 キッドは殴りかかったデビイの棒を棒で防いだ。

棒と受け止めたキッドの腕が震える。

キッドは悲しみの目でデビイを見た。


 しかしデビィは

「あっいいんだぜ、あのガキたちがどうなっても」


「うっ!」

キッドはわざと吹っ飛ばされた。


「そうそれでいいんだ」

デビイは棒でキッドの腿を強く殴った。

「ぐあ!」


「おっと手が滑った」


 捕まった大翔はキッドの危機を目の当たりにして思った。

「キッド君! くそ! 僕がつかまったばかりに迷惑をかけた」


 そしてあがきながら思った。

「くそ、魔王の力があればこんな奴ら! でも、おばあさんを助けた時は出来たのに自分で特訓した時やコボルドと戦うときは出来なかった。何故なんだ、何か決まりがあるのか? それがわからないと使えない」


 先程デビイの仲間になったマックは陰に隠れ通信機で誰かに連絡した。

「ルディン様ですか? もう少しであの小僧の力の秘密を探れるかもしれません」


 通信機からは

「よくやった。お前をわざわざ黒魔術から派遣した甲斐があった」

と声が聞こえた。


 デビイは起き上がったキッドの顔を殴った。

「こら! 何をやってる!」

教師は怒鳴った。


「くそ! やめろ!」

大翔の体からエネルギーが出始めた。

「おおっ! もしかして力が出せるかも!」


 三夫は

「どういう仕組みかわからないけど、他人を救いたいと言う気持ちが高まると出せるんじゃないか」

 

 マックは影でデビイ達には見せなかった不気味な笑みを浮かべた。


「なるほど、いいことを聞いた。キッドがもっとピンチになれば小僧は覚醒するんだな」


 またキッドは殴られ倒れた。

「キッド君、うおおお!」


 大翔は怒った。その度に大翔の力は上がった。

「行ける! 冥王たちと戦った時の感覚が戻ってきた!」

「ふふ、いいぞ」

「うおおお! あれ」


 三夫は聞いた。

「どうしたの?」

 

「力がなくなっちゃった」

大翔の体から溜めた力が抜けていく。

三夫はがっかりした。

「ええ」

  

「何だと?」

それを見ていたマックも疑問を感じた。


 デビイはさらに無抵抗なキッドを殴った。 

さすがに場内は「やりすぎだ」と言う感じでもデビイが怖くて言えない、と言うような空気が流れた。


 しかしキッドは初めて息を切らしながらもにらみ返し言った。

「俺の悪口はいいし俺は中途半端だ。でも親や家系の事は言うな」


 温厚な彼がこんな憎しみを前に出すのは珍しい。

それはデビイも感じた。


 しかしデビイはその気持ちを切るように言った。

「うるさい!」


「あの子供たちに手を出すな」

キッドは声を何とか傷ついた体から絞るように声を出したが声は一本芯が通っていた。


「いいぜ、お前が手を出さなければ放してやる」

「キッド君!」

その様子を見ていた大翔は怒りと辛さで叫んだ。


「キッド君! 僕たちの事はいいから反撃してくれ! そんな卑怯な奴らに負けないでくれ! くそ! 魔王の力さえ使えれば!」

大翔は本気でキッドを心配し、同時に自分の力のなさを悔やんだ。


 キッドにはそれがどこか聞こえているようだった。

「でもな、聞けデビイ、俺はあの子供たちが大事だが親や家系の事だって同じくらい大事なんだ。今度言ったら反撃するぞ」

「なに?」


 キッドの気持ちをそぐように今度は蹴った。

「やり返してみろよ。家系が大事なんだろ?」

「う、うう」


 キッドは怒りを維持しながらも痛みが少しきつかった。

しかし言った。


「他の生徒から聞いたぜ。女の子が急にちやほやしてきたのが妬ましいんだって? 小さい人間だな」

「何だと!」


 またキッドは殴られた


 キッドは大翔の方を見た。

「や、やはり彼らを見捨てられない」


「ふーん、見上げた意思だな。どこまで続くかだが」

とデビイはプライドを傷つけられながらも嘲笑った。

嘲笑うことが彼のプライドを傷つけず維持する方法だからだ。


 大翔は

「何であの人キッド君に言いがかりつけてんの?」


 三夫は

「わからない。何か理由でもあるんだろうか。そうなるに至った」


 田辺は

「あの人のバックボーンがよくわからない」

昔、私もこのような絡まれ方した事ありますが、不良ってほんのわずか体がかすっただけで「いてえな!」って言って襟首つかんで因縁つけてくるんですよね。

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