魔法界交通の秘密
時系列でご説明しますと、この回はキッドがデビイ達にからまれた時点より前の時点になります。キッドが人間界に戻った訳ではありません。
いつもロッドキッド達は人間界に来る際は魔法界から人間界に敷かれた透明な電車に乗っている。
何故なら転移の魔法は禁止されているからだ。
大翔が以前に三夫の家でキッドと話していた時、田辺も一緒に魔法界の事について聞いていた。
田辺は聞いた。
「キッドさん達ってどうやって人間界に来てるんですか? やっぱり転移魔法とか?」
さすが大翔達が気づかない事を聞く。
キッドは気が付いて答えた。
「あっそうだ。転移とかじゃなくて特殊な列車に乗って来てるんだ」
「特殊な列車?」
「うん。魔法界と人間界をつなぐ」
「へええ! 列車? 人間界に駅はあるんですか?」
好奇心の強い大翔は飛びついた。
しかしキッドは少し元気をなくした。何か言いにくそうだ。
「それなんだけどね」
キッドは間を置いて答えた。
「魔法界がパスポートを持っている人に人間界に引いた見えない透明な駅やレールに乗ってくるんだ」
妙にしんとした。
三夫は聞いた。
「透明な駅? どこにあるんですか?」
田辺も聞いた。
「すでに作られてたんだそんなの」
「見たいなあ」
まだキッドはためらっていた。
「うん、ぜひ見せたいところなんだけど」
「だけど?」
キッドは迷いながら口を開いた。
「実は人間界の人は乗せてはいけないことになってるんだ」
「えっ?」
田辺が突っ込んだ。
「ちょっと待って、魔法界の人たちは自由に人間界に来れるんでしょ? なのに人間界からは行っちゃいけないんですか?」
「はっきり言うとそうなるね」
大翔は言った。
「なんて不公平!」
三夫は止めた。
「大翔君はっきり言うなあ。キッドさんが悪いんじゃないんだから」
「ごめん」
田辺はさらに聞いた。
「えっ? でも魔法界の人たちは人間界に魔法を広めようとしているわけでしょ? それなら人間界と相互の交流が出来ないとダメなんじゃないですか?」
キッドは申し訳なさそうで元気がなかった。
「そうだね。魔法界の偉い人たちはずるいんだ。しかもその狡さに自分で気づいてない部分があるんだ。人間界を信用せず魔法界に入ってくるのは不安なくせに、自分たちは文化を広めると言って人間界に学校を作ろうとしてるんだから。普通の常識としてまずお互いの世界同士が理解しあってそれから徐々に文化を伝来していく形になっていないというか」
田辺はキッドと難しく話し始めた。
「国の政治家たちは今後人間界とどう接していくつもりなんですか」
「いつも話し合いが行われてるよ。だけど平行だったりまとまらなかったり。まずいきなり学校を建てる案とか、魔法使いが来て人間と仲良くなる案とか、普通の学校だとしたのが実は魔法学校でしたと後で言うとか」
田辺が厳しく言った。
「最後の案卑怯じゃないですか」
キッドは苦笑し答えた
「あっ僕も思う。だけどどの案も一長一短で難しい」
「ところで秘密の列車ってどこを走ってるんですか?」
「ああ、このあたり」
キッドは地図を広げた。
外国の森の中だった。
また田辺は聞いた。
「人間界に来た人が工事したんですか?」
「うん。魔法界から列車のレールを引くアイデアと計画が遂行されたんだ。人間には見せず生活にも干渉しない魔法の材質や技術で出来てる」
また田辺はきつく突っ込んだ。
「それって人間界の許可取ってるんですか?」
「取ってない」
大翔は聞いた。
「人間界と魔法界ってどう言う繋がりなの?」
「実は大昔ミランドと人間界は地続きだったんだ。ところがとんでもない力を持ったものが争いが起きないように大陸を分離してしまった」
田辺は聞いた。
「えっ魔法界って宇宙なんですか?」
「いやねじれた世界なんだ。歪曲世界とよばれている」
キッドは前ミランドの老人から聞いた話を聞かせた。
「近い内に争いが起きる事を懸念してねじれた次元の中にコロニーのように封印したんじゃ。歪みのなかなのにそこは普通に生活出来る。人間には決して知られてはいけないんだ。だから話題に出さなかった。行きたいと言われたら事情を話してお断りする」
田辺はまた聞いた。
「でも偉い人の話し合いはしているんでしょ」
「それだけに慎重に進んでいる。革新的かゆっくりとか。でも魔法って非現実的すぎてどうあってものんびりじゃない革新的伝来方法みたいになる。黒船が来たみたいに」
その頃東ミランドの外務省では話し合いが行われていた。
「やはり人間界の代表と我々が話し合うべきではないのかね」
「しかしそうすれば一気に人間との関係距離が狭まります」
「人間を信用するか否か。相互信頼なくして友好は築けんぞ」
「やはり後から『実は魔法学校でした』はまずいですね」
「そりゃそうだ信用をなくす」
「個人単位で人間同士が仲良くなれば」
「あるいはやはり代表を決めるか」