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第2部序章

 角刈りの長方形顔の13歳の少年が学校内の並木道で声をかけた。


 あの激闘から2週間、ロッド・キッドは東ミランドの魔法学校へ一旦戻っていた。


 今現在、午前10時15分は授業と授業の隙間時間である。

中学生の1部は別の授業を受けるため校舎を移動する。


 魔法学校は人間界の中学校と違い、校舎がいくつかに分かれた大学の様な構造をしている。


 校舎と校舎をつなぐ道は幅10メートルほどの舗装された道で木々がサイドに立ち並ぶ。


 ここは春ならば櫻で満開になる。入学式のシーズンは絶景だ。

東ミランドにも櫻は咲くのだ。 


 そんな中で角刈りの肩幅が少し広く目が横に細長い、背はキッドと同じくらいの少年は話しかけた。


「ロッド、もう傷は治ったか」

心配と戻ってきて良かった安心感が少年にはあった。


「ああ、思ったより回復は速かったよ。元々そんな大けがじゃないけど、心配かけたね、ウィム」

キッドはなるべく心配をかけないように元気に振る舞った。


 ウィムと呼ばれた少年は心配と好奇心を持って聞いた。

「何か、すごい戦いだったんだって?」


 キッドは苦笑せざるを得なかった。


「あはは……正直言うと生きて帰れたのが奇跡かな。何かとんでもない事がいっぱい起きたなあ確かに。化け物がいっぱい出てきたな。魔王が複数出てきたり冥王が出てきたりさらにその上がいたり」


 さすがにウィムはごくりと唾を飲んだ。


「何か、信じがたい話だな。世の中にそんなのがいるなんて。確かに魔王は西ミランドに昔から住んでるけど。冥王なんて初めて聞いたよ。そんなのいるんだ。映画だったら面白いけど現実にいたら怖いわな」


「うん、聞いた話によると冥王は魔王の力を大きく進化させる力を持ってる」


「す、すごいな。魔王よりもずっとすごいんだ」


「うん、すごいやつなんだよ。おまけに悪い。そもそも冥王は黒魔術が戦争に勝つため呼び出したら、呼び出した黒魔術たちが逆にそいつに支配される事になったって」


「へええ」

「迷惑な話だね」


「そんなやつ、どうやってやっつけたんだ?」

「ああ、それがね、魔王が何人も出てきてそいつらがかかって追い詰めたんだ。過去の魔王の進化させた怪物体ってやつ。それが複数出てきて本来の支配者である冥王に反逆したんだ。また反逆した魔王の中には元人間もいる。しかも、進化した魔王はリモコンみたいに人間が操れるんだ」

 


 さらにウィムの驚きは大きくなった。初めて聞く驚きの内容で彼には同じ世界の出来事に聞こえなかった。


「何で魔王が複数出るんだい? 魔王は西ミランドの王位に擁立されるのは1人ずつだろ? 元人間がいたんだ? しかも、魔王をリモコンみたいに操るっていったいどういう世界なんだ」


「それが、黒魔術が過去の歴代魔王の精神や肉体を保存しておいたらしいんだ。特殊な技術で。そして長い間たっても生き延びさせたうえコントロールできるように脳や肉体を作ったらしい。全部の工程は知らない」


「保存……脳を冷凍するとか? 体を機械化するとか」

ウィムは嫌そうな顔をした。彼は科学に疎いのもそう感じさせるのだろう。


「そんな所だと思う。保管室って言うのがあってね。怪しい装置とかあった。カプセルの中で脳が液体漬けになってぼこぼこ言ってんの」


「気持ち悪い。それ全部黒魔術の仕業なのか、怖いな、あいつらそんな力あるんだ」

ウィムは顔が青かった


「うん、魔法だけじゃない。科学だね」

「今、いやこれからどんな事企んでるんだろう。すごい兵器とか作ってたりして」

「油断は出来ないよ。だから先輩たちも皆調査するって。前の戦いで親玉を撃退したけど」


「すげえな、よく勝ったな」

「僕はほとんど何もしていないよ。先輩たちやそれに何と言っても人間界からの助っ人がね」

キッドは少し興味を持たせる話し方をした。


「伝説の魔法使いとか言う人? 今度会わせてよ」

「あ、うん、今度ね、あと」


「あと?」

「もう1人、すごい奴が人間界にいるんだけどね」


「へええ? どんな人」

ウィムは先ほどと打って変わりとても楽しみな顔をした。

「会ってのお楽しみにしよう」


 またキッドは思った。勇者グラン様の事は秘密にしよう、ところで人間界でうまくやってるかなあの人。


 ウィムは言う。

「俺ももっと人間界の人たちと知り合いになりたい。何かすごい人がいそうだし」

「そうだね。それが、知り合い、友達になる事が今後魔法を人間界に広める一歩だ。まず人間と仲良くならないと広める物も広められない。新しい文化を伝来するようなものだね」


「そのためには例えば外国語の習得とか大事になってくるな。通じなくてもコミュニケーションの幅は広がって何かの役に立つかもしれない」


 キッドは同意した。

「僕も語学もそうだし、いろいろ人間界に魔法を伝えるため必要な事を努力したい。魔法学校を人間界に広めるのが僕の夢なんだ。皆がほうきで飛んだり人形を操れたりしたら楽しいだろう?」

「夢の懸け橋だな」


一方、ここは東ミランドの文部科学省。

 

 東ミランドの魔法学校は人間界で言う国立学校である。職員は公務員、今の日本の様に効率性から国立大学法人が運営しているのではなくその前の時代の制度に近く、教育委員会は管轄でなく文部科学省が運営、設置などを決めている。


 東ミランドの文部科学省ではどのように人間界に魔法学校を建てて広めるかの計画が話されていた。


「今年、何としても人間界に魔法学校を設置したい。かなり押せ押せになってしまっているが、この辺で方針をはっきり決めようではないか」


「どのように広めていくかの計画ですが」

「やはり①案の『普通の学校としてカモフラージュして建て、その後『実は魔法学校です』と告白する方法はどうでしょう」


「いいえ、それは卑怯なので、②の『魔法学校と名歌って開校』にすべきです」

「それよりも③の、まず人間界に学校を作るより先に魔法を広めるのはどうだね」


「それより、④の魔法使いが個人単位で誰かと仲良くなって魔法を教えそこから広める、口コミ友達方式も良いのではないか」

と意見は割れていた。


 また別の意見が出た。

「黒魔術の動きを見張るためのカモフラージュを設置してはどうでしょう。先日の戦いで活躍した子供も加えて」





ここまでお読みいただきありがとうございます。

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