第6話 初ダンジョン
「参加者全員はスタート地点についてください」
アナウンスの言うとおりにみんなSと書かれた場所に移動していく。
「それでは、みなさんの検討を祈ります。ゲームスタート」
合図と同時にみんないっせいに走り出した。
俺も遅れて後をついていく。
一番最初に目に入ったのは雲梯だった。
天井からつり上げられるように固定されたハシゴが何列も並んでいる。小学校の時良く遊んだ遊具に似ている。
はしごの下は底の見えない濁った池のようになっていた。
距離としては10メートルくらいだ。
俺の腕力と持久力なら問題ないはずだ。
俺は天井にぶら下がったハシゴに掴みかかり一つ一つしっかり握りしめ、慎重に進んでいく。
下は水だから落ちても何とか助かりそうだ。でも落ちたら誰か助けてくれるのだろうか。自力で上がるのは難しそうだ。
突然、左側からボシャンと水面に何かが落下する音が聞こえた。
音の発信源に視線を向けると参加者が一人落下していた。
手でも滑ったのか?
すると、落下しバタバタともがいていたが参加者が突然池に沈んだ。
そして沈んだ場所から池の色が赤黒く変色し周りにどんどん侵食していく。
一瞬だけ、池からごつごつした長い口が見えた。
恐怖を目の当たりにして思わず全身の筋肉が緊張し思うように体が動かない。
しっかりと支えたはずの鉄棒が汗で滑り意思とは無関係に手が離れそうになる。
落ち着け、変なことを考えるな。今のペースのまま慎重に一歩ずつ進むんだ。
距離はあと半分しかない、俺ならできるはずだ。
下を見ないで前だけ見るんだ。
やってることはすごく単純、ただ前に進むだけだ。
恐怖に飲み込まれたらお終いだ。
俺は呼吸を整えただ前を進むことだけを考えた。
頭を冷やし次の鉄棒に掴みかかろうとした時、あることに気づいた。
よく見ないと気づかないような小さな針が鉄棒に仕掛けられていた。
「ふざけやがって……」
おそらくさっきの奴もこれが原因で落下したんだ。
針のない場所を見極め一歩一歩確実に進みどうにか池を渡ることができた。
他の全員もちょうど俺と同じタイミングで渡りきったようだ。
少し進むと今度は左右大きな壁に囲まれたエリアが見えてきた。
足元になにもないか慎重に確認しながら進むと、突然左右の壁からガコンッと大きな音した。
すると壁がスライドするように空き、中から一面に並ぶようミキサーのような巨大な回転する刃が左右から押し寄せてくる。
壁から迫りくる刃物を目にすると同時に全員が走り始めた。
俺も全速力で走り込む。
たいした距離はないはずなのに、どこまでも続く長い道に見えてくる。
迫りくる刃物から抜け出す3メートル手前くらいの場所に差し掛かった時、突然右足の自由が奪われ俺は転倒した。
慌てて右足を見ると、小さな穴にはまっていた。
迫りくる刃物で頭がいっぱいで足元なんかまったく気にしていなかった。
もう刃物はすぐそこに迫っている。
穴から足をはずすたったこれだけの動作なのに、混乱した精神が体を動かすのを邪魔してくる。
やべぇ死ぬ! 死ぬ! 早く足を抜かないと!
何とか右足取出し、俺は全力で前に進み間一髪のところで刃物が迫りくる壁から脱出した。
「あぶねぇ、もうすぐで死ぬとこだった。どこが難易度最低だよ……」
壁を抜けた後、ゴールはすぐ目の前だった。
みんな目的地に向かい走りだし次々ゴールしていく。
俺も遅れて走り出す。ゴールしてないのは俺と傘の子だけだった。
俺の目の前を走っていた傘の子が床にあったくぼみを踏んでしまった。すると傘の子めがけて横から弓矢が飛んでくるのが見えた。
「あぶねぇ!」
弓矢の存在に気づいてない傘の子に向かって俺は飛び込んだ。
俺は傘の子を押し倒しそのままゴールした。
ゴールと同時に左肩に激痛が走る。
左肩を見ると弓矢が深々と突き刺さっていた。
「ぐあぁぁぁッ」
肩からどんどん血があふれ出し出血が止まらない。
痛い、痛い。誰か助けてくれ。
肩の痛みにもがき苦しんでいると、突然頭がくらくらしてくる。
あれなんだ全身に力が入らない。
それに視界がぼやけてくる。
もしかして俺ここで――――