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第4話 生き残る方法

 部屋を出て真っ直ぐな廊下ずっと歩く。

 廊下の左右には扉がいくつもあり56、57、58……と続いていた。

 おそらくほかの囚人たちの部屋だろう。


 廊下を抜けると巨大なホールに出た。

 左手には受付があり、受付の上には巨大なモニターが三つ宙づりになっていた。

 ホールの中央には長い座席やテーブルがたくさん並んでいた。

 右手にはでかでかとエンターテイメント&レストランと書かれた看板がある。


 広場には俺と同じ囚人服を着た人がたくさんいた。

 笑いながらカードゲームをしている人、殴り合いの喧嘩をしている人、巨大なモニターの映像を見ながら「そこだやれ」「ぶっ殺せ!」と物騒な言葉を吹っかけ歓喜狂乱している人がいた。

 外見も派手で見るからに柄の悪そうな人たちばかりだった。


 それも何故か、ほとんどが女性だ。というか見渡す限り女性しかいなかった。

 もしかして、男は俺だけなのだろうか?

 見方によってはハーレムかもしれないが、俺が想像していたものとは遠くかけ離れていた。


 モニターに流れている映像を見ようと近づこうとしたとき、座席の下に光る何かを見つけた。

 近づいてそれを拾ってみると、金色の指輪だった。


「高そうだな。誰かの落し物か?」


 掌の指輪を見つめていると突然モニターの方から「うおおおおお」と歓喜の声が聞こえてきた。

 ギャラリーが熱狂している視線の先を目で追ってみると、3台あるモニターの内ど真ん中にメッキーの姿が映っていた。

「おおおっと我らがメッキー圧倒的だぁぁぁ!!! 危険な罠をいともたやすく回避しながらノンストップで二位と大差をつけてぶっちぎっていく! 開始してわずか5分しかたっていないにも関わらず、もう半分以上コースを進んでいるぅぅ!!! とても同じ人間とは思えない驚異的な身体能力だ!!!」


 モニターからテンションの高いナレーションの声が聞こえてくる。

 モニターの中のメッキーは底の見えないほどの高さにある一本橋を全速力で走っていた。

 人ひとりがギリギリ渡れるような一本橋、一歩間違え転落すれば命の保証はないだろう。

 さらに、一本橋の道には大きな鉄球の振り子が何個も設置されていた。

 にもかかわらずメッキーは恐れず、止まることなくすいすいと鉄球をかわしながら進んでいた。

 メッキーは一本橋を抜け広い道へ出た。


 すると、今度はメッキーめがけて四方八方から弓矢が飛んでくる。しかも足元にはあちこちトラバサミのようなトラップが仕掛けられている。

 メッキーは足元のトラップに気を取られることなく素早く無駄のない動作で移動している。さらに矢が飛んでくる場所がまるでわかってるかのような未来予知に近い、凄まじい反射神経で矢をかわしていく。


 すべてのトラップを難なく避けて進むと、今度は目の前に体調2メートルはあろう狼のような獣の集団がいっせいにメッキーに襲い掛かった。


 しかし、メッキーは腰から一本の黒いナイフを取り出すと獣にも負けない圧倒的な反射速度でカウンターの要領で急所である喉元を確実に切り裂き一歩も足を休めることなく進んでいった。


 やがて、ゴールにたどり着くと同時にまたテンションの高いナレーションの声が聞こえてきた。

「我らがメッキー半分以上の選手が次々脱落する中なんと8分42秒という圧倒的なタイムでゴォォォォォルゥ!!! ダンジョン最高難易度SSSランクをいともたやすくクリア!!! 信じられないほどの超人的プレーだぁ!!! おおっと、たった今2位それに続く選手が続々と罠の餌食になり星になりました。まだ四分の一も進んでないにも関わらず、全滅! はい残念でした。ていうことで、今回ぶっちぎりのタイムをたたき出し優勝したのはメッキーだぁ!!! 彼女には優勝賞金、クリア報酬合わせて100万スマイル、リッチな大ファン達から254万という莫大な金額合わせて354万スマイルが送られる。 最高のショーをありがとう! さぁみんな我らが最高のメッキーに盛大な拍手を」


 度肝を抜かれるようなメッキーの超人的な動きにホールにいる全員の興奮が最高に達していた。


「すげぇな。あいつ何もんだよ……」


 衝撃の光景に思わず独り言がポロリと出てしまう。


「あいつは最高にいい女だ。やりたい……、お前もそう思うだろ」


「へっ?」


 突然誰かに話しかけられ驚きのあまり変な声が出てしまった。

 声をかけられた方を向くと、すぐ隣に俺と同じ175センチくらいの背丈をした金髪ショートの美女が立っていた。

 金髪美女はまるで彫刻のような美しさとカッコよさを兼ね備えた容姿をしていた。

 女性にしては体格が良く、囚人服の前面がパツパツになるほど自己主張が強い胸に目が吸い込まれそうになる。


「お前つい最近、メッキーの同部屋になった奴だろ。妬けるぜ。ちくしょう!」


「えーっと、メッキーのお知り合い?」


 金髪美女のインパクトに気おされながらも、おずおずと俺は尋ねてみた。


「うんまぁ、何だ古い仲ってやつだ。あいつは覚えてねぇみたいだけどな……、そんなことよりお前この辺で指輪見かけなかったか? 金色のシンプルのやつだ」


 指輪もしかしてさっきたまたま拾ったやつのことか?


「もしかして、これのこと? さっきそこの座席の下で拾ったんだけど……」


 俺は先ほど拾った指輪を金髪美女の前に差し出した。


「おおっ! そうこれだよ、これ! 大切なもんなんだ」


 俺は黙って指輪を金髪美女に差し出した。


「サンキュー、お前良いやつだな。恩に切るぜ! この礼はいつか必ず返す!」


「いや、別にいいよ。たまたま拾っただけだし」


「そうはいかねぇ、それじゃあオレの気が収まらない。いつかお前が困った時、必ず助けてやるよ! オレは霧崎・B・灼だ。みんなからジャックって呼ばれてる。お前の名は?」


「えーと不知火灰斗です」


「齢はいくつだ?」


「17です」


「オレの三つ下か、わけぇな。それじゃよろしくなブラザー。俺はちょっと急いでるんで、それじゃあまたいつか会おう!」


「あ、はい。よろし――」


 ジャックと呼ばれる金髪美女は俺の返事を待たず、走り去り人ごみの中に消えっていった。 何か美人でハキハキとしてかっこいい人だったなぁ。


 それにしてもさっきメッキーが参加していたのが、ダンジョンと言うやつなのだろうか。

 あんなの普通の人間じゃとてもクリアできるわけがない。


 そういえば、メッキーが言ってたボードとバトルって何だろう。俺には無理だと言っていたが……

 バトルはなんとなく察しがつく。名前からしておそらく殺し合いでもさせられるのだろう。

 とりあえず、受付に行ってみるか、何かわかるかもしれない。


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