第28話 解決の糸口
「くそ! なんだよあいつ言いたい放題言って消えやがって!」
抑えきれなくなったイライラのはけ口が見つからなかった俺は近くにあったゴミ箱を思いっきり蹴り飛ばした。
空のゴミ箱は音を立てながら転がっていった。
俺が芽衣を殺せるわけないだろ。
あいつのやり方に従うもんか!
俺は……
俺はどうしたらいいんだ?
何でこんなにイライラする?
自分のことなのに良くわからない。
バトルを受け芽衣を殺せば、芽衣の所持している全スマイルが俺のものになり、ここを脱出することができる。
俺の最大の目的だ。
それに、芽衣は死ぬことを望んでいた。
罪悪感と周りに迷惑をかけたくないという強い責任感が芽衣を押しつぶし苦しそうな顔をしていた。
俺が芽衣を殺せば、その苦しみから解放される? もしかしたらそうかもしれない。
俺が芽衣を殺せば、俺と芽衣の望みは叶う。
でも芽衣は本当に死を望んでいるのか?
真意はわからないが、仮に芽衣が本当に死を望んでいたとしても俺にはできない。
芽衣に死んでほしくない。これ以上あいつの苦しむ姿を見たくない。どうにかして助けてやりたい。
渦巻く感情の中でそれだけははっきりしていた。
そうだ……
芽衣が死にたいと思ってるとかそんなこと俺にはどうでもいいんだ。
俺はただあいつを死なせたくなくって、苦しむ姿を見たくないだけなんだ。
だから、死にたいと言ったあいつにイライラしていたんだ。
俺は何て最低なやつだ。
芽衣の思いを無視して、俺の身勝手な理由で芽衣の望みを潰そうとしている。俺が芽衣を助けれる保障もないくせに。
俺は身勝手で、どうしょもない馬鹿野郎だ。
だから、芽衣の言うことは聞かない。
俺なりのやり方で何とかあいつを救って「生きる」と言わせてやる。
芽衣が死にたくなる理由を消してしまえばいい。
そのためにはまずあいつのもう一人の人格を何とかしなきゃ。
でも、どうすればいい?
もう一人の人格にどうやって会えばいい?
仮に会えたとしてもどうやって殺人を辞めさせる?
相手は話が通じるやつなのか?
そもそも話だけで解決できる問題なのか?
ていうか二重人格って何だ?
どうして芽衣の中にもう一人の人格が存在する? 原因はなんだ?
その人格は何のために人を殺すんだ?
いくつもの疑問が頭の中をぐるぐる回り思考がまとまらない。
どんなに考えても有効な解決策は思い浮かばなかった。
俺一人の力じゃ限界があるかもしれない……
誰かに力をかりるか?
でもこんな複雑な問題を解ける奴なんて……
いやまてよ……
あいつなら、
あいつならもしかして、問題解決の糸口を知ってるかもしれない。
助けると偉そうに決意しておきながら、さっそく他人に頼ろうとするなんて我ながらみっともない。この際、無様でもいい。できるだけのことは全部やって精一杯あがいてやる。