第23話 決着の行方
「会いたかったぜ! やっとお前と――」
メッキーが視界に消えたと思った瞬間、左頬に激しい衝撃が走り吹き飛ばされた。
何だこれ? オレは今殴られたのか?
慌てて体制を立て直そうとすると、次は腹に重くにぶい蹴りの一撃が走った。
「っは!」
吹き飛ばされたオレはそのまま後ろの壁に叩きつけられた。
前後から襲い掛かる強烈な衝撃で肺の中の空気絞り出される。
「ははっ」
思わず笑いが込み上げてきた。
オレはこの4年で前より確実に強くなったはずだ。相手がどんな野郎だと一撃も食らわず確実に仕留めてきた。
なのに。
何でこいつには手も足も出ないんだ?
4年たって奴と対等に渡り合えると思っていたのに、とんだ思い違いかよ。
オレも速さには自信があるが、奴の速さは想像をはるかに超えてやがる。
オレの目じゃ追いきれねぇ。
まぁ、見えなきゃ音と匂いで追えばいい。
さっきオレがいたるところ切り刻んでやったからな。
べっとりと血の匂いが染みついているはずだ。
オレは目をつぶり、不要な情報を遮断し神経を研ぎ澄ませた。
耳を澄ませ、地面の砂が舞うかすかな音、空気の乱れを読み取り、わずかな違和感めがけて飛び込み刀を全力で振るった。
オレの刀がメッキーのドスを捉えた。
「捕えたぜ、メッキー」
オレはそのまま全力で連撃を加えるが、メッキーはものともせず回避している。
舐めやがってドスを使うまでもねぇってか。
唐突に刀を振るっていたオレの左前腕をメッキーに掴まれた。
「ぐあっ!」
ゴキリッとにぶい音が聞こえた。
力をなくした左手から刀が滑り落ちる。
何て握力だよ。橈骨と尺骨が完全にいっちまってる。
さらに、体制が崩されたオレの右肩にメッキーのドスが牙をむいた。
「ぐあああッ、っは、ああ……」
右肩を貫いたドスをメッキーが引き抜いた後、オレのどってぱらに下から思いっきり拳を打ち込んでくる。
あまりに強力な一撃にわずかに体が浮かんだ。
脱力したオレは膝から崩れ落ちた。
ダメだ、完敗だ。
両腕も使えねぇし、それに体もうまく動かせねぇ。
メッキーが無言で見下ろし、右手でオレの首を掴んだ。
右手に力がどんどんこめられていく。
ああ、こんどこそ死んだな。
また、負けた。
こんなに本気出してんのに奴は呼吸ひとつ乱れねぇで涼しい顔してやがる。
こいつには一生勝てない。心からそう思った。
くそ、視界がぼやけてきやがった。
あの時からオレはお前にべたぼれだ。
何でこんなにに魅入っちまったんだろう。
どんなに必死に手を伸ばしても届かねぇ場所に立ってるから、魅力的に見えんのかな?
殺されるのは悔しいが、でもオレを殺すのがお前で本当に良か――