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第20話 犯人!?

 戻る途中ベンチに腰掛け飲み物を飲んでいるジャックを見つけた。


「よぉブラザー、まさかこんな早く再開するとは思わなかったぜ!」


「ジャックさっきは助かった。本当にありがとう」


「やめろ何度も改まって言うな照れるだろ」


 ジャックは自信に満ち溢れいつもハキハキしている。普段は適当で軽い感じだが体の中心にはしっかりとした芯が通っているように思う。

 俺は正直そんなジャックに少しあこがれていた。


 そんなジャックがプロの殺し屋って考えると少しショックだった。


 俺はジャックのすぐ横に腰を下ろした。


「ジャックがプロの殺し屋って本当?」


「ああ、間違いねぇ」


 ジャックはきっぱりと言った。


「それって依頼されれば誰でも殺すのか?」


「ああ、仕事はきっちりとこなす」


「その何ていうか、人を殺す時ってつらくないの? 罪悪感とかいろいろあるだろ?」


「そんなものはない。オレにとって殺しってのは生きる手段だ。てか灰斗お前だって人殺しまくってここ来たんだろ。いちいち罪悪感何て感じながら殺してたってのか?」


「あ、いや説明したら長くなるけど、俺人なんて殺したことないんだ。運悪く騙されてここに来ただけなんだ」


「なるほど、そりゃ大変だったな」


「信じてくれるのか?」


「当たりめぇだ。ブラザーの言うことをオレが疑うわけねぇだろ!」


「ジャックは会ってそんな日もないたってない俺をどうして信用したり、親しくしてくれるんだ。俺ただ指輪拾っただけだぞ?」


 ジャックは空中に視線を彷徨わせながら、

「殺しの世界に長い間身を置いていると一目見ただけでそいつが良い奴か悪い奴か大体わかっちまうんだよ。まぁ誰しも内側に化けもん飼ってるんだが、たまにブラザーみたいな善意の塊のような奴がいるんだよ。オレはどうしてもそういうやつが憎めなくってなぁ。ついかまってやりたくなる。ただそれだけだ」

 と言った。


 俺が善意の塊?

 そんなことないと思う。俺だってそれなりに良くないことは考えたりする。


「オレが殺し屋だって聞いてショックか?」


 言い当てられて一瞬ドキッとした。


「まぁ、正直ショックかな」


「無理もねぇ。生きてきた世界が違うからな。オレの家系はな裏の世界じゃ知らない人はいないほど有名な殺し屋一族なんだ。幼いころから、人を殺す術を学び子供のころから仕事をするんだ。オレは子供のころから数えきれねぇくらい人を殺したよ。でもそれはオレにとっては当たり前のことだ。習慣みたいなものさ。煙草を吸うのとなんらかわりはねぇ」


 幼いころから子供に人殺しをさせるなんてとんでもない話だ。


「だからオレは殺しを何とも思わない。なぁブラザー世の中ってのは実にシンプルなんだよ」


「シンプル?」


 意味が分からずついオウム返しをしてしまった。


「そうだ。食うか食われるそれだけだ。何千年前から繰り返されてきたことだ。この世は弱肉強食なんだよ。強い奴だけが生き残る。生物界での常識だ。そのルールは当然人間にも当てはまる。だから力のない者は強い者に殺されるしかない」


 ジャックの言ってることに納得できず、思わず反論してしまった。


「そんなのってあるかよ。弱い奴だって必死に生きてるんだ。勝手な都合で消されるなんていい迷惑だ!」


 ジャックはフッと笑った後、

「ブラザーの言うとおりだ」

 と先ほど言ったことあっさり切り捨てた。


「え?」


 意表を突かれた俺はきっと素っ頓狂な声をあげていたと思う。


「争うことなく支えあうそれが理想だ。だが現実はそううまくはいかない。世の中には欲望に飲み込まれ、己の目的を果たすためならどんな卑劣なことも簡単にやってのけるやつがいる。世の中がブラザーみたいなやつばかりなら世の中は少し変わったかもな」


「いや、俺なんか何の役にも――」


 ジャックが突然俺の背中をバンッと叩いてきた。


「そんな辛気くせー顔するな。お前は良いもんを持ってる! もっと自分に誇りを持て! オレが保証する。灰斗お前は誰にもまけねぇくらい立派な武器を持ってる!」


「それって――」


「真面目な話は終わりだ。かーっオレらしくもねぇ!」


 話は無理やり打ち切られてしまった。


 俺の持ってる武器……

 そんなもの本当にあるんだろうか?


 ジャックは多くの人を殺してきた殺人鬼だ。それは許されるべきことではないし、人として最低だと思う。だけど心のそこでそんなに悪い奴じゃないというモヤモヤした感情がどうし衝突しあい何とも言えない気持ちになった。


「てか、ブラザーオレに何か用があんのか?」


「あ、いや別に――」


 言いかけたところであることを思い出した。

 ついでだ聞いてみよう。


「ジャック鮫の刺青をしてる人って知ってる?」


「そいつがどうかしたのか?」


 ジャックの目つきが少し鋭くなったような気がした。


「あっいや、芽衣が鮫の刺青をした人探してるんだ」


「芽衣? 誰だそりゃ?」


「ああ、メッキーのこと」


「あいつそんな可愛らしい名前してやがったのか、で、何でメッキーは鮫の刺青の奴を探してるんだ?」


「えーとそれは……」


 このことは言っていいんだろうか?


「何だよ。勿体ぶってねぇで教えてくれよブラザー」


 さっき助けてもらったお礼もあるし、俺はジャックに話すことにした。


「なるほどな」


 ジャックが今まで見たこともないくらいうれしそうな顔をしていた。


「どう知ってる?」


「ああ、鮫の刺青した奴ならよーく知ってるぜ」


 次の日、俺は芽衣と一緒にホールに向かった。

 昨日別れ際に二人に大切な話があるからホールに来てくれとジャックに言われたからだ。

 約束の時間に行くとジャックはすでに待っていた。


「待ちくたびれたぜお二人さん」


 ジャックがホールの中央で腕を組んで立っていた。


「わざわざ、呼び出して何の用かしら?」


 朝が早いせいか芽衣は少し不機嫌そうだ。


「オレとバトルしようぜメッキー」


「嫌よ。あなたに興味ないわ」


「ん、そうか?」


 ジャックはニヤニヤしている。


「そうよ。こんなくだらない事にいちいち付き合ってらんないわ」


 芽衣はジャックに背を向け歩き出した。


「待てよ、メッキーこいつを見てもか?」


 芽衣がめんどくさそうにジャックの方を見た。

 ジャックは芽衣に背中を向けた後、上着を脱ぎすてた。

 その背中には鮫の刺青が刻まれていた。

 刺青の真ん中には縦に切られたような大きな傷跡があった。


「嘘だろ……、芽衣の家族を殺したのってジャックだってのかよ……」


 信じられない。何でジャックが芽衣の家族を。

 ジャックは首だけ芽衣の方に向けて挑発的に、

「どうだ殺るきでたかメッキー?」

 と口元をゆがめながら言った。


 俺は芽衣に視線を移した。

 芽衣の力強い目つきがジャックへと向けられていた。その瞳はジャック以外のものは一切映っていないように見えた。

「やっと見つけた。あなたを殺すわ」 

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