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第16話 鮫の刺青

 メッキーはどこか遠くを見るような様子で過去の出来事を語った。

 瞳にはいつもの力強さは宿っておらず、どこか弱弱しい。


「そして私はここに来たの」


「そうか大変だったな……」


 本当はもっと別に何か言うべきことがあったのかもしれない。

 だけど、かけるべき言葉が見つからない。

 きっと何を言っても安い気休めにしかならない。

 今のメッキーにはどんな言葉も役に立ちそうになかった。


「私はいつか必ず殺してやる。私の大切な家族を奪ったあいつを!」


 憎悪に満ち溢れた低い声だった。

 メッキーの家族を殺した人物、ヒントは背中の鮫の刺青それだけだ。


「鮫の刺青か……、それ以外に特徴はなかったのか?」


「あの時は暗くて姿がよく見えなかったわ。それに、全体的に黒っぽい服と帽子を被っていたから……」


「そうか」


「でも、ひとつだけ確かなことがあるわ」


 俺は黙ってメッキーの言葉を待った。


「あいつはここにいる」


「えっ! ハッピー&スマイルにいるってことか!?」


 メッキーは無言で頷いた。

 メッキーは今すぐにでもここから、脱出できるくらいスマイルが溜まってるはずだ。

 なのになぜここから出ないんだろうと気になっていた。

 やっとその答えが今わかった。


「鮫の刺青をしている奴を見たって人がいたの」


「誰なんだよ、そいつは?」


「もうこの世にいないわ。バトルで死んだの。本当に馬鹿だったわ、あの時すぐに聞き出せば良かったのに……」


 メッキーは唇を噛み悔しそうな表情をしていた。


「……もし、鮫の刺青をしている奴を見つけたら教えて」


 俺はメッキーに対し返事を返すことが出来なかった。

 もし、ここで肯定してしまったら、復讐の手助けをすることになる。


 メッキーが殺したいほど奴を憎んでいることはわかる。

 もし、俺がメッキーの立場だったら全く同じことを考えたかもしれない。

 でも、やっぱり人を殺すなんてダメだ。


 それに、俺はメッキーに人を殺してほしくない。

 復讐を果たしたところでメッキーが幸せになるとも思えない。

 黙っている俺を見たメッキーがさらに続けて口を開いた。


「もし、あなたが見つけてくれたら、ここから出してあげるわ。必ず」


「は? どうやって?」


「方法はその時がきたら言うわ。大丈夫約束は必ず守る。確実に安全にあなたをここから出してあげるわ。命をかけてもいい」


 確実で安全な方法何てあるのか?

 でもメッキーが嘘をついているようには全く見えない。


「何で方法を教えてくれないんだよ」


「だって聞いたらあなたきっと…………、とにかく約束は必ず守るわ」


 何で方法を教えてくれないんだ。言えない理由でもあるのか?

 メッキーの目は真剣そのものだった。


 ここから出ることができる。

 俺の最大の目的だ。

 普通に考えて俺が自分の力でここを脱出できる可能性は限りなくゼロに近い。

 自分の力でどうにかするより鮫の刺青の奴を見つけたほうが現実的な気がする。


「わかった……、とりあえず探してはみるよ」


 とりあえずは探してみる。

 仮に見つけることが出来たとしてもメッキーに教えるかどうかは、その時考えればいい。


「ありがとう。頼りにしてるわ」


「でも、俺なんかより、お前のほうがここにいるの長いし簡単に見つけられそうな気がするけど?」


「私はあなたほど交流関係は広くないわ」


「……なるほど」


 いや、俺の交流関係なんて大したことないぞ。

 俺が話したことあるのってこいつ覗いてジャック、レインメーカーと後、エル…………

 それくらいしか思いつかない。


 ていうか、こいつ何で俺の交流関係を知っている!?


「私もう寝るわ」


 時計を見ると21時だった。


「前からずっと思ってたんだけどお前いつも寝るの早いよな」


「私は昔から睡眠の質が悪いの、早く寝ないと次の日体がだるくなるわ」


 いくらなんでも悪すぎないか?

 この前なんてこんだけ夜寝てるのにも関わらず、昼寝もしていたような気がする。

 猫並みに寝てるんじゃないかこいつ?


 それとも、こいつくらい超人的な力をもっていると身体に負担がかかりすぎて長時間の休養が必要とか?

 考えてみたけどこれが一番しっくりくる理由な気がする。


「そうか、おやすみ。今日はその本当にありがとうな。助かったよ」


 しばらく、間があってから返事が帰ってきた。


「…………おやすみなさい」


 何か申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 メッキーの悪い噂を聞いて真実かどうか確かめもせずに悪い奴だと思い込み勝手に壁を作っていた気がする。

 最初はメッキーのこと冷たい奴だと思っていたが、不器用なだけで本当はすごくいい奴なのかもしれない。


 あんなにひどいことを言ってしまったのに、メッキーは弟に似てるって理由だけで俺を助けてくれた。

 この恩はいつかからなず返してやりたい。と強く思った。


 俺も疲れが溜まっていたのですぐに寝ることにした。


 目を覚まし洗面所に向かおうと立ち上がると、当然のように爆睡しているメッキーの姿があった。

 相変わらず寝顔が可愛いやつだ。

 寝相が悪いのか、服がはだけてヘソのあたりが丸見えだ。

 んっと吐息のような声を漏らしながら、動くたびに服がさらにめくれ上がり、目のやり場に困る。

 なんだかとっても刺激的だ。

 朝の身支度を済ませたあと、俺は特に理由もなくホールに向かった。


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