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第13話 エルの愛?

 俺の身体は突然脱力しベッドに放り出された。

 何だこれ、手足が痺れて全然力が入らない。何が起きてるんだ?


「もうそろそろだと思ったの。灰斗くん全然力入らないでしょ?」


 エルがうっとりしたような顔でベッドに腰掛けたまま俺を見下ろしていた。

 エルは立ち上がり俺のお腹の上に座る。


「は?、何を言ってるんだエル? これは一体どういうことなんだ?」


「テトロドトキシンって知ってる? フグの毒っていえばわかりやすいのかな? あれって物凄い神経毒でね呼吸が止まって死んじゃうんだって。でもこれはね、30分だけ痛覚を残して四肢の動きだけを選択的に麻痺させるみたいなの」


 何を言ってるんだエルは?


 俺の身体の動きを奪ったのはエルなのか?


 何で何のために。

 何かがおかしい……


「冗談はよしてくれエル」


「灰斗くんココアおいしかった?」


 エルが俺を見下ろしニッコリと微笑んでくる。


「お前まさか、あのココアに……」


「私もふうちゃんにやられた時は、すごくびっくりしたんだよ。私はふうちゃんを可愛がりたいだけだったのにひどい話だよね。ふうちゃん頭良いから私がすることばれちゃってたみたいなの。でもふうちゃんはすごく優しいからね。私が実験体になれば命までとらないって言ってくれたの。それどころかこうやって薬を分けてくれたの」


「おい……、嘘だろ。エル俺に何をする気だ」


「えへへ、それはね」


 エルはポケットから何かを取り出した。


 それはカチッ音を立てた後にギラリと光る刃が飛び出した。

 折り畳みナイフだ。


「嘘だろ、何で信じてたのに、俺を殺す気か、何でだ! 何でなんだよ!」


 エルは俺の胸部から腹部にかけてナイフの刃先を走らせた。


「ぐああああ、やめろ!」


 鈍い痛みが上半身に広がっていく。

 こんなの俺が知ってるエルじゃない。


 怖い、怖い

 誰なんだこいつ。

 何でこんなにうれしそうに笑っているんだ。


「そうずっと灰斗くんのその顔が見たかったの。ダメもう我慢できない!」


 突然エルは前に倒れ込み俺を力強く抱きしめた。

 そして、ゆっくり顔を上げると俺の胸部からうっすら滲み出る血を舐め始めた。


「やめてくれ、エル。どうしたんだ今日のお前おかしいぞ?いきなりどうしたんだよ!?」


「灰斗くん、次は何をしてほしい?」


「今すぐここから解放してくれ! お前本当にエルなのか? どうしてこんなひどい事するんだよ!」


「どうしてって私は灰斗くんが大好きだからこうやって愛情を分けてるだけだよ?」


 エルは小動物みたいな感じ首をかしげながら言った。

 おかしい、おかしい、こんなの普通じゃない。


「何言ってんだ! これのどこが愛なんだよ。ふざけてんのかお前!?」


「私の大好きなパパとママはいつもこうやって私に愛をくれたの。だから私の大好きな灰斗くんにも愛をいっぱいあげる」


「お願いだやめてくれエル!」


「あっそっか! ごめんねナイフだけじゃ飽きちゃうよね。ちょっと待ってて!」


 エルは俺から離れ物置を物色し始める

 戻ってきたエルの手には見たこともない道具が握られていた。


「これはね、爪を剥がす玩具で、こっちは目玉をくりぬく玩具なの。他にもカミソリとかいっぱいあるけど灰斗くんはどれがいい?」


 嫌だ、こんなところで死にたくない。誰か助けてくれ。


「あっでも、目玉をくりぬくやつはダメ! 灰斗くんには最後まで私を見ていてほしいから、これはダメ! あっでも片目だけならいっか!」


 エルが妙な器具を俺の片目に近づけてくる。


「やめろおおおおおおお! 誰か助けてくれ!!!」


 妙な器具が俺の目までわずか数センチまで近づいたとき、唐突にバンッとドアが激しく開け放たれる音がした。

 ドアの方に視線を向けるとメッキーがいた。


「アスカから離れなさい!」


 メッキ―が大声で俺の方を見ながら言った。

 アスカ?

 メッキーが俺の方に近づいてくる。

 エルはいつの間にか俺から離れ部屋の隅で両手で頭を守るように縮こまり「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、殴らないで」と何度も呟いていた。


「大丈夫?」


 メッキーは俺の方を見ながら言った。


「えっ? 何でここに、ていうか何で俺を……」


「歩ける?」


「いや、手足に力が入らなくて」


「そう」


 そう言うとメッキーは俺をおぶり部屋を出た。

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