第九十一話 後悔
イドンの新居に到着するとユウキ、レイラ、ルーミエが出てきて、順番に抱き合い無事に帰ってきたことを喜んでくれた。
リビングのソファに座り、エソルタ島の状況を伝える。
魔人たちの目的を聞き出したこと、中央にあった転移魔法陣に飛び込んだことや向こうの世界で魔人を倒した話。そして魔人はもはや俺の苦手と思う相手ではなくなり、エソルタ島の魔人及びモンスター全てを数日で倒すことも可能だと伝えた。
「ありがとう、アキト」
ルーミエとユウキは深々と頭を下げる。
「うん、俺も二人の力になれて嬉しいよ。それで相談なんだけれど、魔人やモンスターを一掃した後、二人はあの島をどうしていきたい?」
唐突な質問にルーミエ、ユウキは困惑しているようだ。
「どうって言われても、私は国を捨てて逃げた王女よ……。今更、『王女です』って出ていけるとは思っていないわ」
「そうだね……」
エソルタ島から逃げ出したことに負い目を感じているのか、ユウキうつむいている。
そんな二人に俺がこれまで考えていたことを伝える。
「ルーミエとユウキは逃げたことで負い目を感じているのかもしれないけれど、異世界から侵略があった当時、仮に二人の王女がそれぞれの国に残っていたとしても、侵略は止められなかったことには変わりないよ。
それよりも島から生きて逃げてこなければ、今の俺たちの関係はなかったんだ。二人に会って、話を聞いて、島のことを知って、危険かもしれないけれどその状況を変えたいって俺は思ったんだよ。
だから逃げてきたことは間違いじゃない」
「アキト……」
「まだ全ての問題を解決したわけじゃないけど、だからこそ今の島の状況を一緒に見に来てほしい」
「……うん」
「合わせる顔が無ければ、顔を隠せばいい。
気持ちを伝えることが辛いのなら、話さなくてもいい。
……でも生き残った人たちの声を聴いて、俺たちに何ができるのか一緒に考えよう。そしてその人たちの今後を支えていくことで二人が感じている負い目を少しでも和らげることができたらいいなって俺は思っているよ」
「うん……うん……」
二人は頷きながら、泣いていた。
時には逃げることは必要だ。それでも現実から目を背け続けるわけにはいかない。いずれ受けて止めてどう生きるかを考えることはとても大切なことだ。
二人はエソルタ島に行くことを決め、レイラは体のこともあるのでイドンに残ることになった。
「出発は明日の朝。それまでに各自準備をしておいてほしい。……それとレイラ」
「なあに」
「屋敷に残してきたメイドさんたちをイドンに来られるか聞いてみるよ」
「うん、そうだね。来てくれたらとても助かるわ」
カムラドネのに建てた豪邸にメイドを三人雇ったまま放置してきた。当面イドンのこの賃貸住宅で暮らす予定にしているが、身重であるレイラを一人でここに残しておくのも心配だ。もともと住み込みで働いていてもらっていた彼女たちだが、意思確認は必要だ。
「それじゃあ、夕方には戻るから、適当に晩御飯を用意しておいて」
「うん、わかったわ。気を付けてね」
□
庭で異世界転移魔法陣を展開する。
行先は魔人の世界、デネパ。
さっき通ってきたが、十分に注意することに越したことはない。箱魔法に乗り、展開している転移魔法陣を通り抜け、すぐさま次の転移魔法陣を展開し通過する。無事にカムラドネの屋敷の庭にたどり着くことができた。
まずはノイリに会いに行く。巫女の屋敷の扉をノックするとメイドさんが出てきて、ノイリに取り次いでくれた。
応接室で待っていると、ノイリが部屋に入ってきた。しばらくぶりに会うノイリとお茶をいただきながら、お互いの近況を詳しく報告しあった。
「あまり時間が経っていないのに、なんだか長い間会っていないように感じますね。ルーミエやユウキと一緒に旅している時はこれからもずっと一緒にいると思っていたのに……」
俺を探して二年近くも一緒に旅を続けてきた三人。
ノイリの表情が寂しそうにみえた。思えば俺の周りは常にカラルやレイラの仲間がいたが、ここだと一人でじっとしているだけだもんな。
なんとか元気づけてやれることはないだろうか……そうだ!
「じゃあさ、これからみんなの所へ行って晩御飯を一緒に食べないか?」
「ええっ?」
「神託がいつ降りてくるか分からないから、各国へすぐに連絡できるこの拠点を離れるわけにいかないんだろう。
何日も離れるわけじゃないんだ。ほんの数時間だけだ。何かあったら俺が責任もって送迎するから、イドンにいる皆に会いに行かないか?」
ノイリの顔が満面の笑顔になる。
「行きます!私、すぐに準備します。出かけることを爺やさんにも伝えておかないと……」
言い終わらないうちに勢いよく立ち上がると、部屋を飛び出していった。
「庭で待っているよ」
走っていく背中に声をかけた。




