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第八十五話 弱点?

 抱きついたままのカラルが呟く。


「アキト様が強くなられると実際の弱点はわらわということになるのでしょうか……」


 カラルと俺はつがいとなり、一心同体となっている代わりに、寿命が千歳くらいまで延びたり、宝具ストレージが共有できたりするメリットがあった。しかしカラルの命がなくなると同時に俺の命もそこで終わる。その逆もまた然りだ。


 カラルが弱点になるなんて考えもしなかった。


「そんなことはないよ、カラルもそうだけどルーミエやレイラやユウキは俺の力の源だよ。命を共有するカラルを弱点なんて考えたこともなかったよ」


「本当に?」


「ああ、本当だよ。それにさっきのこともそうだけれど、この世界のことを色々教えてくれたり、ヒントを与えてくれる存在なんだ。皆大切に思っているよ」


「ありがとう」


 さみしそうな表情が少し和らいだ。



 エソルタ島の二つめの街を攻略し終わった。レベルを確認すると957から1367まで上昇している。これだけ上がるとどうしていいものか分からなくなってきたが賢さ2000以上はキープして適当に振り端数はボーナスに残してみた。


◇ ◇ ◇

Lv1367 HP13670/MP13670

強さ:3300、守り:2000 器用さ:2000 賢さ:2200 魔法耐性:2100 魔法威力:3000 ボーナス:70

◇ ◇ ◇


 時間は夕方頃で少し早いが晩御飯にする。テーブルと椅子をアイテムボックスから出して、肉野菜炒め、野菜の煮物、焼きそばなど屋台飯を一通り並べ食べ始める。


 さて、これからどうするか…。


 荒廃した街を見て回っても、もはや得られるものは無かった。次の街に行って攻略するにはおそらく日が暮れてしまっているので、難しい。


 極私的絶対王国マイキングダムでは何がそこにあるかは感じることができるが、光が当たっていないと詳細までの情報が伝わらない。要は暗い時に危ないことをしない方がいいということだ。


 これからの攻略について少し検討してみよう。


 エソルタ島は真ん中を境にカノユール王国、イメノア王国があり、大小合わせて二百以上の街が存在している。街をひとつずつ攻略するのはあまりにも時間がかかりすぎる。


 エソルタ島の中央付近の上空にある巨大な魔法陣のあたりが、奴らの本拠地なのだろう。さっきの倒した魔人によれば地脈の力を細々ではあるが吸い上げているようなことも言っていたな。


 焼き飯をほおばりながら考える。うーん……全てのモンスター、魔人を倒したい。捕らわれた二千人を救いたい。中央の巨大な魔法陣に入って魔人世界のポイントをマーキングしたい。


 若干の恐怖は感じているが、俺は向こうの世界にも興味がある。いける場所は積極的に増やしたい。すべてのモンスターや魔人を倒してしまうと、魔法陣が消えてしまうので先に入っておく必要があるな……。


「カラル、島の中央にある魔法陣に行こう」


「はい。それでは魔法陣を破壊されるのですね」


「いや、中に入る」


「ぶはっ、あ、危ないじゃないですか!?」


 カラルの口に入っていた物が出そうになる。


「まぁ何とかなるだろう。そこで、戦闘に入ると魔人の動きについていかないといけないから、カラルは俺におんぶされることでいいかな?」


「え?」


「多分、高速で動くから、カラルの腕とか引っ張ってケガさせても嫌だし……。そうなったらおんぶが一番効率的かな?」


「言いたいことは分かりました。それなら、擬態しましょう」


 そう言ってカラルは身長や体形や服装を変えていく。


 ショートカットの高校生くらいの女子になった。身長は俺より十センチほど小さくなって。もちろん胸のボリュームも抑えられている。生足スカートなのは何故なのだろう……。


「どうして生足スカートなんだ?」


「手が直に太ももにふれた方がアキト様は喜ぶと思って……」


 恥ずかしげな表情をしながら言っているのは俺の好みに合わせているからだろう。カラルならそれくらいのことはやってのける。


 一旦おんぶして、太ももの感触を確かめ——いや動けるかどうかの確認をする。よし、問題ないな。


 俺の趣味を理解していて大変うれしい限りなのだが、危険なのでズボンに履き替えてもらう。


「いかがですか?」


 ヤバい、全然関係ないけれど、初恋相手の髪型と似ている。くるっと回るカラルに俺はドキドキしながら感想を伝えた。


「うん、とってもかわいいよ」



 エソルタ島での初めての夜を迎える。


 寝床はダンジョンコアに貯めている精気を使い、ダンジョンを作る要領でカラルに地中深くに部屋を用意してもらい、俺は地上まで探知できる領域テリトリーを展開し襲撃にそなえる。


 さて、明日に備えて早めに寝ますか、と思っていたらカラルは笑顔で"ちぎりの寝具"をだしてきた。


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