第八十四話 検証
魔人の首を跳ねる。血しぶきがあがり、膝をつき、そして前のめりにずしゃっと音を立てて倒れた。
俺から見えている魔人の何段もあるHPバーは一撃ですべてなくなった。致命傷の一撃は即死につながる。そして数秒後、魔人は光の塵となってカラルのダンジョンコアに取り込まれた。
「お見事です、アキト様」
「うん、ありがとう。一対一の勝負ならもう負けないな。それでもまだ心配な点があるけど……」
「今の戦闘でそう感じたのなら、わらわには分からなかったのだけど、良ければ教えてくださいな」
「まずは相手の動き出しを見極めるところがまだ甘いところがあるな……あとは魔人の戦士系の身体能力が優れた奴しか相手にしてないけど、魔法使い系も当然いるよな?」
俺は街に向かって極私的絶対王国を発動して、中断していたモンスター討伐作業を開始する。
「そうね、魔人の魔法使いは見たことがないのだけれど、とても強力な魔法を持っていそうな気がするわ」
「例えば……」
そう言って俺は街とは違う方角に、火魔法で高さ三十メートルほどの火柱を繰り出し、回転運動を加えて、炎の竜巻を起こす。
「俺ですらこれくらいの広域に対して、簡単に攻撃ができる。そう考えると魔人の魔法使いクラスならもっと強力な魔法を出してきたときの対処を考えたいんだよ」
「なるほど、ご心配に思われていることを理解したわ」
そう言ってカラルは小声で詠唱を始める。
詠唱が終わり金色と銀色の炎が混ざった、俺の出した炎の竜巻と同じくらいの大きさ竜巻が完成する。
「なかなか美しいな……」
「ふふ、さあ力比べとまいりましょう」
俺の方は通常の炎でカラルの炎はゴールジュとシルヴィの霊格の炎の力を借りたものだから、当然俺の炎の魔法の方が負けるはずだ。
街とは反対の方に炎の竜巻を移動させて、竜巻同士をぶつける。
二つの炎の柱はドーンという大きな音を出して、辺りに熱風をまき散らす。やがて俺の炎の威力が削られて小さくなっていく。
もちろんMPをそそげば状態は継続されるのだが、それではいつまでたってもカラルの魔法には勝てない。
「これで何が分かるの?」
「同じ炎の魔法だけど、霊格の炎の力を借りた方が強いということは炎の質の違いで強さが順位づけられるの」
「魔法の質か……」
「続いて魔法が発動している、わらわが敵だとしたら、アキト様はどうやって倒すのかしら?」
「うーん、この状態からか……」
炎の魔法はもう通じないとなれば選択肢は1つ。
「極私的絶対王国を使って、術者を止める」
「じゃあ、わらわがどこにいるか、わからなかったら?」
「極私的絶対王国を使って索敵、それから術者を止める」
「そうね、じゃあこの魔法がアキト様の直上にまで迫ってきていたらどうなさいます?」
うーん、どうしようか……。いったんクロックアップで避けるか、いや時間をかけても抜け出すことのできない広域魔法だったらどうする?それなら……。
「極私的絶対王国を使って魔法を止める……ってそんなことができるのか?」
「わらわにもわからないわ。でもその発想は大切なのよ。早速やってみましょう」
俺は十メートル大きさの極私的絶対王国を発動して、カラルの炎の竜巻の近くに持って行く。炎が箱の中に入るが箱自体には触れることもできないので、壊れることは無い。
ここで炎に命令をする。”消えろ”と命じると極私的絶対王国内にある、炎が消えて外にある炎はそのまま残るといった現象が起こった。MPの消費量は少し多かったが許容範囲内だ。
「おぉ、そういう事か。この場合は俺の魔法の力がカラルの魔法の力を上回っているから打ち消すことができたんだな」
「ええ、正解ですわ。アキト様がおっしゃった力を”強度”と呼びます。魔法の強度での対決となれば、そうそうアキト様にかなう敵はいないかと思うの」
「基本的には敵の位置の把握はしておくべきだな」
「左様です。索敵、察知ができるのであれば有利に事が進みます」
「なるほど、ひとつ心配事が減ったよ、ありがとう。カラル」
「お役に立てて良かったわ。それに強さに奢らず、常に検証される姿勢にわらわは惚れ直してしまいましたわ。アキト様の強さの秘訣はその探求心だとわらわは思うの。だからいつでもご相談に乗りますよ」
そう言ってカラルは俺に抱き着いてしばらく離れなかった。




