第七十八話 素行調査
怪しげな高揚感のある雰囲気の中、俺は宰相のゾーンことゾンヌフと皇帝のルゴーことエルゴードと席を囲み、反省会に立ち会っていた。
そんな大学生男子がしそうなコンパの結果報告やダメ出しなどの会話を繰り広げる二人をみていたのだが、ふと、入り口の扉が開かれ、俺は視線を奪われた。
そこには四人の女性が立っていた。もちろん仮面をつけているので素顔は見えない。それにしてもなぜこんなに視線が向いてしまうのだろうか?
隣のゾンヌフはもちろんエルゴードも会話を止めて、扉の方を見ている。
四人の女性たちは、注目を浴びていることを気にせず会場内に入っていく。彼女たちが歩く前に道ができる。
女性たちは一人とは別れて、三人はソファー席にかけて、周りを眺めている。
周囲の男どもは、この時間帯で狙っていた相手といい感じになっているのか、ここまでせっかく高めてきたテンションを捨ててまで、新たに参入してきた女性たちへアプローチを掛けようにもできないでいた。
そう、俺たち以外は……。
「おぉ~、なんて魅力的なんだ……」とエルゴードが呟く……。
少し離れたところに座った女性三人を眺めている。
「ルゴー、ご出陣なさいますか?」
「そうだな……」
まだ行く気ですか?陛下!?
突然、俺たちの視界を遮るように女性が立ちはだかった。
「ごきげんよう。たった今来たところですが、私たちとご一緒いただけませんか?」
さっきの四人の内の一人だ。しかも、逆ナンだ!……ん、待て、この声と甘い感じの香水……カラルか!!!
ということは向こうの三人はレイラ、ルーミエ、ユウキか!みんなきらびやかな衣装に身を包みと豪華な仮面をつけていて、こっちに向かって手を振っている。
なんで来ちゃったの?
分析能力発動……。
四人仮面の”魅力”は+30だった。そんなに気合い入れて作らなくてもいいのに……。
「それは是非とも!」とゾンヌフが答える。
カラルに案内され、三人の待つ席へ移動する。当然のように女性人たちの間に割って入る、ゾンヌフとエルゴード。
ルーミエ、皇帝、ユウキで一つのソファ。カラル、宰相、レイラという形でもう一つのソファに着席して、なぜか三人掛けソファに俺一人で配置された。
ゾンヌフさん……何この配置?
仮面アイテムでさらに魅力的に見える四人の女性に挟まれて、カガモン帝国の皇帝と宰相は鼻の下を伸ばしきっている。
「それでは自己紹介と行こうか!俺は……」と先ほどの流れと同じ感じで始まるが、明らかに男二人のテンションが高い。
ゾンヌフがゾーンと名乗りを上げた後、俺がすかさず割って入る。
「俺は冒険者のジーンだ!」
若干力強くなってしまったが、意図は通じたか、続いてカラルが「ラルよ、よろしくね」
と言ったことでほかの三人もそれぞれ本名ではなく別の名前を名乗った。
同じ展開ではあるが、その間に飲み物が運ばれてきて、みんなで乾杯をする。
俺は……俺はこの世界で自由に生きるって決めたんだ!!!
すかさず極私的絶対王国発動する。
いかに皇帝とはいえ、嫁たちには指一本触れさせない!……早い話が、ただの嫉妬です。男の焼きもちはみっともないとは、まさにこのことだ。
自分はさっき別の女性とキスをしたり、アレをする直前まで行ったくせに……なんてわがまま。
ゾンヌフのお得意のトークで盛り上がり、嫁たちも楽しそうに話をしている。レイラはゾンヌフの隣から離れて、俺の隣に来る。
む、ぴったりと密着してきてくれて、嬉しい。
だが、油断は禁物だ。特に皇帝は手が早い、奴は何かにつけてすぐにボディタッチをし始めるのだ。何かあったら、その手の動きを極私的絶対王国で止めてやる。
それと気になっていたことが一つあったので四人に聞いてみる。
「四人は今日のこの”会”にどうして参加しようって思ったのかな?」
「初めて参加するんだけど楽しそうだなって思って……」
ユウキは好奇心か。
「わらわの想い人も同じことをしていると聞きましたので、その意趣返しですわ」
カラル姉さん、遊んできても良いって行ってくれたじゃないですか!
「「旦那がオイタしていないか、偵察に来たの!」」
ルーミエとレイラが同じことを言った。やばい怒られる……。
「はははは、愛しの人のことが気になるお方が多いようだね、でもまあ、今日はそういったことは忘れて僕らと楽しもうじゃないか!」
ゾンヌフが相槌を打つと、同時になんて質問するんだといった、俺に目線を送っている。
かなりの腕前を持つ奴でも中々苦戦しているな。しかしこのままでは今日の戦果などを聞き出されかねない。どんな会話をしてもさっきのことがばれるのも時間の問題だ……。
その時だった。ユウキがルゴーこと皇帝に対して
「あの……もしかしてエル殿下だよね?」と問いかけた。
自分の素性がばれるとことは露程にも思わなかったのだろう。
「……はひ?」
間抜けな感じで皇帝ことエルゴートも答えてしまった。




