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第七十四話 宰相と……

 夕食の後、皆に宰相のゾンヌフの所に行ってくると伝えて宿を出た。


 カラル以外の三人は一国のトップクラスの人にそんな簡単に会えないよ、とか、約束はちゃんとしているの?とか母親みたいに心配してくれたが、カラルはちょっと含みのある笑いをこらえている感じだった。


 砂浜から例の金ぴかマスクを装着して、飛び立つ。宰相のゾンヌフは広い屋敷の中、二階の部屋で一人で酒を飲んでいる。護衛は一階に数名いるな……。


 二階のベランダにそっと降り立ち、極私的絶対王国マイキングダム発動する。


 カラルに作ってもらった金ぴかのマスクをひらひらとゾンヌフの前に持って行くと何度も目をこするゾンヌフ。


 ベランダからすっと中に入る。


「お休みの所失礼しますよ、宰相」


「お!貴兄か、よくぞ参られた」


「アレ?不法侵入だよ、怒らないの?」


「ガハハハハハ、そなたくらいの強者つわものであればどんな要塞や警備があっても、ひらりとかいくぐってきてしまうのであろう?」


 確かにその通りなんだが、柔軟な対応する男だと思ったが、なかなか肝がすわっているな……。


「約束通り届けてくれたのだな、ありがとう。……せっかく来てくれたんだ。一杯どうだ!」


「それじゃあ、ごちそうになろうかな」


 俺は極私的絶対王国マイキングダムでグラスを棚から取り寄せて、ボトルを傾ける宰相からお酌をしてもらう。ついでに防音効果を持たせる。これで部屋の声外に漏れることはない。


「これまた、面妖な技よのぉ……。ふむ、面白い。そなた俺と友になってくれんか?」


「はい?」


「たまに会いに来るだけでいい、言葉遣いもお互い無礼講と行こうじゃないか。この役職になるとなかなか腹を割って話せる奴がおらん。頼む!」


 話の展開が見えないが、かなり酔っぱらってるのか?でも確かに面白い。断る理由もない。


「いいよ、……それでは、友に」といってグラスをかかげる。


「友に!」


 ゾンヌフとグラスを合わせた。小気味良い音が響く。


「じゃあ始めに自己紹介といこうか、俺はゾンヌフだ。カガモン帝国の宰相をしている。今は休暇中だ。とはいえ明日には皇帝陛下も来られるのでその下準備中だ」


「そうか……俺は……」


 といって名を名乗ることができないことに気が付いた。えーと、えーと俺の小学校のあだ名は明人アキヒトからメイジンって呼ばれてたから……。


「ジーンだ」と適当に命名する。


「冒険者をやっている。今はエソルタ島を奪還するためにここに来た」


「すげー!ジーンの話でけえな、俺の皇帝陛下の世話なんか鼻くそみたいだな!ガハハハハ」


 豪快に笑い飛ばすゾンヌフ。しかし、急に真面目な顔になり語りだした。


「アカネアからいろいろ話は聞いた。長い長い囚われの期間、家畜同然の扱いをされながら、次々と人は連れていかれ、そして戻ってこなかった。明日は我が身かと思い続けて、生かされているいることの恐怖。そう思い続けて生きている人がまだあの島にはいるのか?」


「まだ一つの街しか見ていないが、確実に他にもいるだろう」


「そうか……俺にできることがあれば何でもするから、相談してくれ」


「わかった」


「それと連れてきてくれた十八人にはジーンの事は口外をしないことを約束させた。人の口には戸はたてられねぇって言うが、やらないよりかはましだ。お前の持っているその飛行魔法はどこの国にとっても脅威だ。それを俺は守りたい」


「……」


「おそらく冒険者ラッテ級の強さなんだろ?」


 友となるのであれば話してもいいか、顔も隠してるし……。


「口外しないというのであれば話すが……」


「この仮面にかけて、口外しない」


 俺があげた仮面じゃないか。こういう時は「命に」とか、「誇りに」とかに掛けるんだよ。何に掛けてんだよ、おっさん。


「ははっ!!面白いな。……そうだな強いと思うし、これからもっと強くなりたいと思っている。おそらく魔人にも対抗できるようになってきた」


「あの物語に出て来る『魔人』にか!?最強じゃないか~。うわ~傭兵として雇いたいわ~。なぁなぁいくらなら雇われる?」


「丁重にお断りします」


 俺はそう答えた後、二人で馬鹿笑いをした。


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