第七十三話 御開帳
少し暗くなってしまった空気を変えるべく、大げさにアイテムボックスから妖刀ロウブレンを取り出す。
「ジャジャーン!!」
その剣を見てルーミエが食いついた。
「どうしたのその綺麗な剣は?」
「これは冒険者ラッテの使っていた剣だよ」
「ええ!手に入れたの?どうして?どうやって?どこにあったの?本当に本物?」
落ち込んでいたが一変して予想通り元気いっぱいの反応をしてくれるルーミエさん。
「試してみたんだけどやっぱり衛星ゲオルには箱魔法でも行くのは難しいんだ」
「へぇ~、いいなぁ」
相槌が噛み合わないが俺はどうやって手に入れたのかを経緯を話す。
「それで俺はエソルタ島が怪しいなって思ってたわけ、説明したけれど、みんな信じてくれなかったでしょ?物語の中でエソルタ島の近海の海で落としたってなると夢がなくなるから、衛星ゲオルで落としたことに物語を変えたんだろうね……」
「ふぅ~ん、ほしいなぁ」
俺の話は半分くらいにしか聞いていないルーミエに、妖刀ロウブレンを持たせてみる。
「おっ、おも、おもたっ!」
両手でしっかりと持っているが、それでも支えきれないようだ。
落としそうになったので。俺は慌てて受け取る。切れ味が鋭すぎて自重で二階の床どころか一階の床を突き抜けて地面にまで到達しそうだ。
ぶんぶんと片手で軽々と振ってみる。俺にとってはそんなに重く感じないが、強さステータスの差ではないような気がする。持ち主ではない者には振らせないという剣の意思があるのかな?
妖刀ロウブレンを机の上に置き、しばらくの間うっとりとを眺めるルーミエでした。
□
エソルタ島から戻ってきたその日の昼過ぎ。
ルーミエ、ユウキ、レイラの三人は今後の拠点となる貸家を探しに出かけた。
俺は砂浜のベッドチェアに寝そべり、海を眺め休んでいるとカラルがやってきて、俺のそばに腰掛ける。水着のような大胆な露出が多い服だがとても良く似合っている。
「アキト様、次回の出発はいつなの?」
「そうだな……二、三日ゆっくりする予定だよ」
「それでは少しのあいだお預けね……」
アレの事のようだ。俺の得た経験値をカラルも得たいのだろう。
「焦らなくても俺は逃げないよ」
「そうね……楽しみにしているわ」
そうだ、カラルにお願いしないといけないことがあった。
「あの仮面もう二個作れる?」
「ええ、作れますが、あれがどうかしたの?」
「今朝この国の宰相が来て交渉してた時に、この仮面見てすごい気に入ったみたいでね。欲しそうだったからあげる約束したんだよ。知り合いになっておくといろいろ融通きいてくれそうだろ?」
「そうでしたか、あの仮面はアキト様がより魅力的に見えるようにしておきましたのよ」
何故そんなステータスを付けて作ったか意味が分からないが、分析能力で見てみると、本当に”魅力+10”ってなっている。そんなステータスあったなんて知らなかった……。
「それではデザインが異なるもので同じく魅力的に見えるようにしたものを差し上げましょう。くれぐれも使い方にはご注意くださいね」
「ああ、伝えておくよ」
「アキト様もオイタはほどほどにね……ふふっ……」
カラルさんそれは浮気も容認するよってことですかい?意味深な笑顔が色々と想像を掻き立てる。
「そんなアキト様に宝具ストレージからおひとつ良いものをご紹介しましょう」
そういって取り出したのはイヤリングだった。
「これは幻惑のイヤリングよ。相手に念じた幻惑を見せることができるの。使い方は、耳につけて魔力を流してね。複数人に対しても幻惑は通用するわ。だけど実力のある冒険者には全く効き目はないのでご注意を」
そんなオイタに使えそうな道具まで紹介してくれるなんて……ありがとうカラル!
早速、宰相のゾンヌフがどこに住んでいるのか、領域で付近の調査を開始する。大きい家を一軒ずつ、表札や中にいる人を調査をするうちにイドンという街はリゾート地だということを知った。いかにもセレブといった商人の家や政府高官関係らしき人が何人もいる。当然、皇帝の別荘のでかい屋敷もあった。
そうこうしているうちにゾンヌフの家を見つけた、やはりバカンス休暇中のようで家の中ではラフな格好をしている宰相だった。




