第七十一話 捕らわれた人々
カラルが作った顔を隠すため用の金ぴかマスクを装着して、捕らわれた人たちの所へ向かう。カラルには俺の名前を呼ばないようにだけ注意をしておく。
街の中央にある大きな建物の地下。一時的に罪人を捉えておく場所だったのだろうか、牢屋への階段を下りると異臭が鼻を着く。
「光魔法を」
「はい」
「助けに来たぞ、大丈夫か?」
照らし出される人々。風呂になんか当然入っていない。トイレも穴をほってそこにしているだけの最低最悪の環境だ。牢屋の中からうめき声が聞こえてくる。
俺は妖刀ロウブレンを取り出し、鉄格子を切って出口を作る
「うぅ……み……水……」
「桶を作ってくれ」
「はい」
俺はそこに水生成能力で水をそそぐと、牢屋の中の人たちは桶に群がり、手ですくいながら水を飲む。その間に全員に回復魔法をかける。
「おおっ!……ありがたい……」
しばらく水を飲んだり、頭から浴びたりしているが、とにかく匂いがひどい。歩くことのできないものはいないようなので、外に出るように指示をする。
カラルに浴槽を三つほど作ってもらいお湯を貯める。手持ちの石鹸も二個しかない、もちろんタオルもそんなに持ってきていなかったので、付近の住宅からかき集める。
みんな体を洗ったり髪を洗い小一時間ほどで全員がきれいになった。
「誰か、いまの状況を手短に教えてくれ」
近くにいた男が答える。
「色々としていただきありがとうございます。我々は長い間この地下の牢屋に捉えれられておりました。三年ほど前でしょうか、モンスターの襲撃があり、奴らに占拠されてしまい、抵抗したものはみんな殺されてしまいました。残ったものは家畜同然の扱いをされながらもなんとか今日まで生き延びることが出来ました……」
そうか、生き残りはいたんだ……。
「貴方たちを助けに来た。ここから出て、イドンまで送り届けてやる」
「「わあーーーー!」」と歓声が起こった。
ここには十八人が捕らわれていた。最初はこの街でも一万人以上はいたが、次々と連れていかれて戻ってこなかったそうだ。おそらく殺されてしまったのだろう。
全員が乗ることのできる大き目の箱魔法を展開する。みんな何が起こるのか不安そうにしているが、箱魔法の中にアイテムボックスにある食事を並べるとぞろぞろと入っていき、夢中で食べ始めた。
俺とカラルは別の箱を用意して二つの箱で一緒に飛び立つ。食事の途中だが、この地に長居は無用だ。徐々にスピードを上げて海に出る。
「きゃーーー」
「なんだこれは……」
叫び声をあげる者、驚く者、そのまま食事を続ける者が反応も様々だ。特に説明は行わずエソルタ島を離れていく。
今日は星が明るく輝いている。満天の星空の中を猛スピードで航行する中、ノイリに通信指輪で話しかける。
「ノイリ、聞こえるか?」
「……はい。アキトさん。どうされましたか?」
「今エソルタ島から戻るところなんだが、頼みがあるんだ」
「なんでしょうか?」
「カガモン帝国のなるべく地位の高い人物に連絡とることはできるか?」
「はい、できますよ」
「実はカノユール王国の港町コウルンで捕虜にされていた十八人を島から連れ出すことができたんだ」
「「「ええ!!」」」
ルーミエやユウキの驚きの声も通信指輪に乗ってきた。
「街にいたモンスターを全て倒して、これから連れて帰るところだ。早朝でもいいので、国に受け入れるように手配をしてほしいんだ」
「わかりました。今から連絡を取ってみます」
「ありがとう、頼むよ」
「ルーミエ、ユウキ、レイラ。これから食料をニ十人前ほど買ってきてほしいんだ。夜中には海岸につくので、三人は宿で待っていてほしい。食料はカラルに取りに行ってもらうので、渡してくれ」
「わかったわ」
イドンの灯台の明かりを頼りに夜中にイドンの砂浜に到着した。
俺は燃えそうなものを適当にアイテムボックスから出して火を起こす。捕らわれた人たちも協力して付近から木を集めてくれた。
カラルがレイラたちから受け取った食料をテーブルの上に並べると、先ほどの食料だけでは少なかったようでみんなまだまだ食欲は旺盛のだ。
俺は今後のことについて説明する。
「今、カガモン帝国に交渉をしているところだ。明日の朝、役人が来て確認してくれるはずだ。それまでの間みんなここでおとなしく待っていてほしい」
代表者を一人決めることにした。捕らわれた中に街の貴族の一人が生き残っていたので、彼に翌日のカガモン帝国との交渉について伝える。
「見ての通り俺の身分は明かせない。交渉の場には立ち会うが、あとは自分たちで何とかしてほしい」
彼は街を治めていた者の一人として責任を全うしたいと言ってくれた。誠実そうな彼にひとまず任せてみよう。
一人ひとりと握手をして今回の戦闘で得たカノユール王国金貨をニ十枚ずつ手渡し、翌朝まで一緒に待つことにした。




