第六十六話 嫉妬
バタン……。お風呂場の扉を閉め、レイラが抱き着きしばらくの沈黙が流れる。
はぁ~と深いため息とともに本音が漏れる。
「……大丈夫だって思ってもやっぱり寂しいものなのね。悲しいってわけじゃあないんだけど……やっぱり嫉妬しているのかなぁ……」
目には涙を浮かべている。他に嫁がいても大丈夫とは言いつつも、なかなか受け入れられないでいるのだろう。嫁たちの気持ちは俺が積極的にフォローしなければならない。
俺の生きたいように生きることは、時にはわがままで、他人を傷つけてしまう。
謝るか……いいや、それも違うな、言い訳することでもない。今は何を言っても悲しませるだけだ。ずるいと言われればそれまでだが、ただ抱きしめるだけしかできない。
しばらく抱き合った後、長いキスをする。心の中で「レイラごめんな」と謝った。
そのあとはゆっくりと二人でお風呂に入り、少し安心したのかレイラに笑顔が戻った。
□
翌朝。朝食を終え、俺とカラルは街での食料を買い込み、イドンを出発した。
今回の目的はエソルタ島付近での冒険者ラッテの使っていた剣を探すことと島の端にある街を調査することだ。
途中でカラルと一緒に宇宙を目指して、上昇してみる。カラルが苦しそうに言う。
「こんなに高いところには来たことがないわ……見たことない景色で綺麗だけど息が苦しいわね」
「もっと行けば息はできなくなる」
「冒険者ラッテの話とは違ってこれだと衛星ゲオルにはいけないわね……」
酸素が薄くなることを確認した俺は猛スピードで降下しながら再びエソルタ島をめざす。
「ラッテの使っていた剣が海底にあるとして、問題はどうやって見つけるかよね。エソルタ島はとても広いでしょう、その外周の海を調べるのには結構な日数がかかりそうね」
「そうだな、とりあえず箱魔法を沈めてから考えようか」
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昼すぎには遥か彼方にエソルタ島が見える位置に到着し、昼飯を食べながら作業を開始する。
まずは五キロ四方の極私的絶対王国を展開して海に沈める。水深は千メートルほどだが水深がもっと深いところがあるかもしれないし、海溝とかあったらそこも探す必要がある。
沖合から島に向かって極私的絶対王国を移動させる。やはり海の中は真っ暗で形を感じることができるが、岩や人工物らしきもの、船の残骸なども多く、剣かどうかがわからない。生物以外のものは判別が難しいな。
続いてスキャン機能を使って極私的絶対王国内の存在する生物の統計情報を見るが、こちらの世界の魚の名前は知らないので、どのような生物なのかが分からない。
個体数が多いものは無視して一、二体しかいないものだけを次々と海面に上げる。クジラのような巨大な生物や中にはサメを巨大化したモンスターもいる。この世界でのダイビングは避けた方がいいな……。最初は物珍しいこともあり楽しんでいたのだが、徐々に飽きてきた。
そんな感じで何度か沖合から島まで探ったが、今のところめぼしいものは見つからない。作業も惰性になりつつある中、水深も二千メートルのところも出てきた。
この作戦も意味ないな~と思っていると、統計情報に見たことのあるモンスターの名前が上がる。セイレーンだ!
捕縛すると抵抗しているようだが、問題なく抑え込める。深海から一気に引き上げた。
「あっ!」
引き上げた姿に俺もカラルも何の生き物か判別がつかなかった。
「なに?この生き物は」
「……セイレーンなんだが」
口から何か袋のようなものが膨張して出てきていて、目玉も飛び出し痙攣している。
急激に深いところから引っ張り上げたからか?
サメのモンスターやクジラではそんなことにはならなかったのだが、こういう状態になっている魚を映像で見たことあるぞ。まさか人魚でこんなことをしてしまうとは思わなかった。
まだ死んでないよね?話ができるのなら聞きたいことがあるのだが……。
急いで回復魔法をかけると、口から出ていた袋や目玉も元通りに戻った。
分析能力発動。
◇ ◇ ◇
Lv40 セイレーン リオ 26歳
◇ ◇ ◇
「げぇっほっ!げぇっほっ!」
セイレーンの体は元に戻ったが、状態可視化能力で見ると”怯”、”驚”、”憂”という文字が浮かんでいて、俺たちに対して完全に怯えきっている。




