第六十一話 未知の世界
カムラドネから移動してきておよそ半日くらいでダンジョンを制圧した。大変スピーディではあるが、やりきった後の達成感は感じている。
部屋で少し休憩したあとルーミエは晩ご飯を食べに行こうと提案してくれた。何を食べようかと相談しつつ街を歩く。
最終的にルーミエの選んだ店は屋台街ではなく、個室のあるお店だった。料理が一通り並ぶ。
もぐもぐと食べながらユウキが呟いた。
「カラルもお兄ちゃん強すぎるね……」
ルーミエも同調する。
「もう私なんかがかなう相手じゃなくなっているわね……」
「そうだな……。それでもまだエソルタ島にいるモンスターのことを考えると不安ではあるかな」
「本来なら軍隊とか冒険者たちがパーティとか組んで挑むものだし、仕方ないんじゃないかな?」
「それでも俺は何とかしたいって思ってるんだよ」
「ありがとう、アキト。私たちはその言葉だけで本当に充分なのよ……」
ルーミエの言葉に、焦らなくてもいいよという意味も含めていってくれているのだろう。俺は返す言葉もなく黙ってしまい、その場がシーンとなってしまった。
□
店を出た後、俺はギルドに向かい、ルーミエとユウキは先に宿に戻っていった。
別れ際、戻ってきたら話があるとルーミエから言われたので、さっきの個室でも良かったんじゃないかなと思いながらもギルドに向かう。
ギルドで討伐情報もらいを見た後に後悔する。まだ幼女要素たっぷりの情報ばかりだった。ぼーっとしていたのでつい癖でギルドに寄ってしまった。カラルがダンジョンを作り変えているから、そのうち他の街の同じような攻略情報になるだろう。
宿に戻り、ルーミエの部屋をノックするとルーミエがドレスの姿で招き入れてくれた。
部屋にある椅子に腰掛ける。髪と同じ色の赤のシルクは落ち着いた深い色合いでとても上品だ。戦闘時の防具やゆったりした服装では普段あまり見えることのないボディラインがくっきりとみえるドレスが引き締まった肢体を強調して、いつもよりも魅力的に見えドキドキする。
「どうしたの、そのドレス?よく似合っているよ」
「ありがとう。これはお母様からいただいたもので、特別な時に着るものなの……」
「特別な時?……」
「アキト……私と結婚してください!!」
顔を真っ赤にしながら結婚を申し込むルーミエ。レイラに続いて二度もプロポーズされたことになるが、こちらの世界では女性からプロポーズすることは多いのだろうか?
いつかは妻としてむかえいれるんだろうなぁと、漠然と考えていたので、今の現時点で告白をうけるとは思いもよらないものだった。
「……レイラと結婚しちゃってるけどいいの?」
「ええ、レイラから聞いているけれど、手に負えない時があるって言ってたわ」
「何が?」
「その……例のアレが……」
耳まで真っ赤になっている。
「私もレイラと同じように、ずっとずっとアキトに憧れていたの。そしてやっと出会えたって思った瞬間、この人と一緒になりたいって強く思ったことを覚えているわ」
「……そうなんだね、ありがとう。嬉しいよ」
ルーミエに歩み寄り、ゆっくりと抱きしめると嬉しそうに微笑んだ。
「それとね……とっても言いにくいことがもう一つあってね。変な子だって思われちゃうかもしれないけど、ユウキも一緒がいいの……」
「ん?それってユウキも同時に娶ってもいいってこと?ユウキの了承はでてないけど……」
と、言ったところでユウキが部屋のクローゼットの中から出てきた。
「ジャジャーン、お風呂担当大臣、推して参った」
よくわからない登場の仕方だなぁ。照れ隠しのつもりなんだろう。そのことにはあまり触れずに素直に聞いてみた。
「ユウキは俺と結婚してもいいの?」
「うん、レイラとルーミエが一緒だし、今更他の男性探すこともないだろうなぁって思えて……」
「消去法?」
「えへへへ。でもお兄ちゃんのことは大好きだよ。ね?いいでしょ?
もちろんレイラにもお許しはもらってるんだよ」
それもそうか……。そしてルーミエは恥ずかしそうに爆弾発言する。
「それとね、アレも一緒がいいの……」
ユウキもやれやれといった表情をしている。
「その私、初めてだし……一人じゃ怖くて、ユウキも一緒だと安心かなって思ってユウキにお願いしちゃったの」
ユウキも顔を赤くしている。
「まあ、あたしは一緒にお風呂入ったりできればいいかな、ぐらいに思っていたんだけどねぇ。こういうのも何かの縁だし、勢いで楽しんじゃえばいいんじゃないかな、なんて……」
「勢いって……」
ちょっと勢いよすぎませんか?
「でも優しくしてね……お兄ちゃん」




