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第五十三話 できちゃった……

 みんな寝てしまい歓迎会もひと段落……。メイドさんたちが入ってきて、静かにあとかたずけをしてくれている。


「アキト様、外にでない?」


「いいよ」


 促されるまま、庭に出た。


「屋敷を建てられるとしたら、このあたりでしょうか?」


「そうだよ……」


 以前レイラの先代の使っていた屋敷が今の屋敷の裏にあったそうで、取り壊されて今は空き地になっている。


「わかりました。それでは失礼して……アキト様も不要な金属類がありましたらここに積み上げてください」


 そういうとカラルはアイテムボックスから刀、盾、鎧を取り出して積み上げていく。俺は何が始まるのかわからないまま、これまでため込んでいた不要の武器、防具を取り出して並べる。


 最後に漆黒の杖を出した。


「あと使っていない業物の剣を数本お持ちですか?」


 古新聞の回収業者みたいな聞き方だな……。


「あるよ」


 カラルとの戦いで折れた剣を出し、オリハルコン製、ミスリル製やアダマンタイト製の剣を十振りほど並べる。


「良いものをお持ちですね」


 そういいながら、杖で円で描いたり、地面に象形文字のような言語で何か書き込んでいる。


「では始めに、カモフラージュですね。足場のようなものを組み上げて、全体を隠します」


「まさか家作っちゃうの?」


「ええ」


 カラルは地面に手を置き、詠唱を始める。


 金属の足場が組まれ、柱には黒い布が結び付けられてあり、中が少し透けて見える程度の目隠しがされた。


 詠唱が続く中、俺はもっと金属が必要だと思い、せっせとアイテムボックスから不要な金属をサークルの中へ投げ込む。沼に沈んでいくように金属は地中に取り込まれていった。地下からは地響きが聞こえてくる。


 次に屋根部分がせり上がり、二階部分が頭を出し、続いて一階部分が地面から出てきた。


「最後に地下を作ります」


 さらに詠唱は続いた。


 そして時間にして約十分、気が付いたら家が完成してしまった……。


 家を覆う足場には黒い布がかけられているのでカラルはそのままにしておくように伝える。急に家が建っていたら近所の人驚くだろうから、建築中をアピールしておこう。


 今使っている屋敷を少しだけ小さくした建物だが、一般の家と考えるとかなり大きい部類に入る。

作っている最中の音で目が覚めたのか。四人が屋敷から出てきて驚きの声を上げる。


「アキトどうしたの、これ?」


「カラルが作ったんだよ」


「わらわは一般住宅を作ることはありませんが、普段のダンジョン造りと比べるとトラップをつくらないのと、迷路にしなくてもいいので簡単できましたよ」


 外壁は重厚なレンガ造りだ。中に入ると吹き抜けのエントランスホールがあり、その横に二階への階段がある。大理石で床や階段は構成されていて内装もとても豪華だ。どうやって作っているのか分からないが、これでは大工さん商売あがったりだよ……。


 先ほどの宴会で聞いたリクエスト通りにすべて出来ている。屋敷内には家具類は全くなく、入れ物だけが出来上がった状態だった。


 二階に上がり、俺の部屋を確認する。回転扉の分厚さといったら銀行の金庫の扉か!というような分厚さでできている。


 取り敢えずレイラからもらったベッドを出して、今度ソファセットも買いに行こう。レイラとユウキの部屋も何もないが見せてもらい、ルーミエの部屋には聞き取り通りのお風呂があった。


「あれ?カラルの部屋はどこ?」


「わらわの部屋はアキト様の部屋の向かいです」


 見学させてもらったが別段何もなかった。最後にカラルがこう付け加えた。


「ご不満な点がありましたら、改修しますのでおっしゃってくださいね」


 内装の変更も可能なのか……さすがダンジョンマスター。


 一通り見学が終わったので、いったん巫女の屋敷に戻る。今日はこっちで休んで、明日には引っ越しを開始したいと思う。



 家が建ってから一カ月くらいは新しい家の準備をゆっくり進めていた。みんな思い思いに部屋を作っている。ルーミエとユウキにとっては、第二の故郷となる場所だ。長い長い旅をつづけてやっとたどり着いた場所。二人とも自分たちの家ができるって本当に喜んでいたな……。


 いい家具を求めて王都まで箱魔法で買い出しに行ったり、途中にある街に寄り道をする。訪れた街では散策と買い物、そしてギルドにも寄って、暇な時間に読むための討伐情報を入手する。


 ノイリ以外がそれぞれが部屋作りに励んでいた。新しい家にもノイリの部屋は用意してあるが泊まるためだけの部屋なのでたいした物を置いていない。


 遠夜見とおよみの巫女の責務としてカムラドネを離れることは許されない。ノイリは巫女の重責を感じていて、部屋の資料を読み漁っているが、歩いて街に買い出し行く時にはレイラが声をかけ必ず一緒に行くようにした。


 レイラが少し前に言っていたメイドさんを雇う件について、二人をこれまでお世話になっていた人を引き抜かせてもらい、残り一人は募集をかけて新規で契約をしていた。


 そして夜のセイカツ!報告。二日連続して一日休みといった具合で主にレイラがお相手してくれる。来る日は必ず合図をくれる。


 そして夜になると秘密の回転扉を重そうに押して入ってくる。とてもとても幸せな時間。壁も分厚くて防音性能はばっちりでユウキからの苦情はない……はずだ。


 その分カラルとの逢瀬は減ったが、レイラが来ていない夜中に必ず、床下に仕掛けている秘密の部屋の通路を通り抜けて、俺の床を開けてやってくる。俺の部屋とカラルの部屋の床には一メートル四方の取っ手のない隠し蓋があり、カラルは浮遊魔法、俺は極私的絶対王国マイキングダムを発動して開けなけばならない。


 俺の部屋には秘密が張り巡らされている……お、ちょっとカッコいい表現だな。


 中に入ると中二階と呼ばれるような場所で腰をかがめて立つくらいの高さしかないが、色々楽しむには充分だ。


 カラルとの逢瀬にはかなり気をつかっている。極私的絶対王国マイキングダムを発動して音が外に漏れないように魔法で音をかき消したり、レイラとユウキがいつ入ってくるか分からないため、秘密のドアに魔法での抵抗を加え、重くしておいて、回転扉が開くと感知したら、カラルを放置して素早くベッドに戻る。といったことも想定してカラルと二人で訓練した。いったい何の努力をしているのだろうか……。


 そんなことも含めてカラルは俺の大切にしていることや趣味をどんどん取り入れてくれて、コスプレのレパートリーもずいぶん増えていった。

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