第四十八話 ルグアールの夜 その一
ルグアールは人口は約三万人と小さな街道の街だ。カラルの光魔法で俺の箱魔法を人の目には見えないように偽装し、そのままルグアールの裏通りに着地する。あたりに人がいないことを確認して、箱魔法を解いた。
カラルとの戦闘で破損した服は捨てて、王都で買った軽装備のジャケット、パンツ、ブーツを着用している。装備品にはあまりこだわらなくなった。一定の硬度があればそれで十分だ。
カラルはダークエルフに擬態している。なぜダークエルフかと聞いたら、「アキト様の好みに合わせているのよ」って微笑んだ。
確かにいいよな~。ダークエルフ。
宿をとって、食事に出かける時にもカラルの擬態や衣服の変更とかもまじまじと見てしまう。
「アキト様のえっちぃ……でも、いいよ」
うむ!エロイ!最高!
「じゃあこういうのはどうかな?」
服装はそのままだったが、背が少しずつ縮み、見た目年齢が二十代前半だったが十代後半の女の子に変化している。ロングの金髪はショートカットになり、胸が小さくなったが、全然違和感がない。
服装もギャルっぽい感じに変わった。分析能力発動!
◇ ◇ ◇
カラル:レベル599 悪魔族
158cm B82cm W58cm H79cm
270歳 ダンジョンマスター
◇ ◇ ◇
明らかにスタイルが変わった。ん?レベル上がってないか?契りを交したからか、さらに強くなっている。
「おお、良いね!まったく別人になるな。どうなっているの?」
「これも擬態能力よ、精気と魔力で体形を変化させることができるの。服も生成能力で変化させることが可能よ。お望みならもっと幼くなれるけど……」
「いやいやいや…このくらいがちょうど好物……良いと思うよ」
何を言わされているんだ俺は!とも思ったが楽しみが増えた!
□
いつものダークエルフ姿になってもらい、腕を組んで街を散策しながらいくつかの店を見て回る。雰囲気の良さそうな店を選び入る。
店の中は繁盛していて、賑わいがあった。着席してコース料理とビールを注文する。出てきたビールはキンキンに冷えていて、いろんな意味で酷使した体に染み渡る。
うまい料理、うまい酒、綺麗な女性。そして会話は弾む……。俺ってこんな奴だったっけ?ちょいと堕落しすぎてないか?
でも、ドノグレイバンやカラルと命がけの戦いもして……いやドノグレイバンは茶番だったな。着実に強くなってるからいいのか?
みんなの願いを受け入れて、流されてこの状況になっていると、自分に言い聞かせ納得することにした。
□
会計を済ませて店を出た。夜風がを心地よく感じて街を歩いていたのだが、大通りで汚らしい風貌の冒険者なのか盗賊なのかわからない数人とすれ違う。
目つきが明らかにこちらに向きギラついている。嫌な感じだな、と思っていると、すれちがいざまに声を掛けてきた。
「いよぉ~、兄ちゃん、いい女連れてるじゃないか……」
そのまま囲まれてしまう。
「何か用か?」
「ひゃひゃひゃ……聞いたかよ、用があるから声かけたんだよ、その姉ちゃんにな!」
いきなり真剣か……。遅いあくびが出そうだ。切りつけてくるが、踏み込んで掌底で相手の肘を突き上げる。メキっという鈍い音とたててに変な方向に腕が曲がった。
「あぎゃうぅ…」と、 男は変な声でうめきながらその場にうずくまる。
せっかくいい気分で街を歩いていたのに台無しだ。それに残りの数人を一人ずつ相手にするのも面倒だ。指を鳴らし、極私的絶対王国発動。
いや、鳴らさなくても発動するんだけど、なんとなくカッコつけてみた。そして頭の中で命じる。カラル以外は全員動くな、声を出すな。うずくまった奴も声も出せず、動きも止まった。やはり便利な魔法だ。
「アキト様、やはり頼りになるお方ね」
「カラルがしても同じことだろう」
「いいえ、改めて”守ってもらう”ということに感激していますわ。以前なら周囲の目もあって、殺すわけにもいかないから、わらわ自身が殴ったり、蹴ったりしていたので……」
殴ったり、蹴ったりしていたのか、それはそれで見てみたい絵面だ。まあ、それだけ魅力的だと夜の街もおちおち歩いてられないだろうな。
「こんな奴らは放っておいて、もう少し夜の街を散策しましょう」と、言って腕組みしてくる。
「そうだな、じゃあ行こうか」
”気絶しろ”と、命じると男たちはピクリとも動かなくなった。
□
散策をしたあと、宿を戻り風呂に入る。当然のようにカラルが入ってきて、一緒に湯船につかった。
「人族のお風呂に入る習慣も悪くないね」
「前はあまり入ってなかったの?」
「ええ、汗をかいても擬態の効果で肌は清潔に保つことができたからあまり入ったことないわ」
へぇー、擬態って便利なものだな。
「あ、そうだ。戦いの時に持っていた剣と盾みたいなのってどうなってるの?」
「今、それを聞くの?この状態のわらわに興味はないの?」
ちょっと拗ねているようだ。
「そういうわけではないけど、シルヴィのこともあったし、人前でする話でもないし……」
「隠す必要はないので、お話ししますわ」と、言って何故か、女子高校生くらいに擬態するカラルさんでした。
話を聞く自信が無くなってきたぞ。




