第四十七話 契り
空には大きな入道雲、三百六十度見渡しても地平線しか見えない荒野のど真ん中。青と白と茶色しかない世界でソファにくつろぐ男女。
少し熱いな……。箱魔法を黒で作り出し屋根代わりに浮かせる。
緊張していたせいもあって喉もカラカラだ。グラスをアイテムボックスから出して、水生成能力でグラスに注ぐ。そのグラスを俺の手から奪い取ったカラルが水を口に含む。
「なんだ、カラルも喉が渇いてた——うんぐぅ」
言い終わる前にカラルが口移しで水を運んでくれた。
「ありがとう……その返事だよな」
「ええ、わらわの真意をお伝えたし、あとはアキト様の返事待ちね」
寿命が延びる。強い相棒が手に入る。しかも美しい。
残る心配はレイラのこと、ルーミエやユウキのこともある。
「俺には嫁がいるけど、それはいいの?」
「ええ、結構です。他種族とは寿命が違うので……なんならずっと秘密にしていても構わないわ」
「即答か。わかった。番いになろう」
レイラには時期をみて話そう。と、ずるい考えの俺だった。
「ありがとう、アキト様。わらわはこの日が来るのをどんなに待ち望んでいたか……それでは早速儀式と参りましょう」
「儀式って何?」
「アキト様の好きなアレよ。うふふふ。ちょっと手伝ってくれる?」
そしてそのプランを聞いて俺は愕然とした。だがちゃんと実行した。だって男の子だもん!
◇ ◇ ◇
プラン
1.箱魔法で人目がない上空に移動。一緒に天空のお風呂を楽しむ。(自動魔法継続指輪を使用しました)
2.”強さ”(レイラの時は5くらいに下げる)はそのままイコール体力MAX、精力MAXで天空のカラルの特別豪華ベッドで楽しむ(時間無制限)
◇ ◇ ◇
全てを終えて仰向けになり空を眺める。カラルと別れた冒険者二人よ、判断間違っていたぞ。でもありがとう。
ふと、見ると視界左上のレベルが上がっている。戦闘後には上がってなかったはずだが、カラルとの契りをかわしたからか?
◇ ◇ ◇
Lv402 HP4020/MP4020
強さ:1100 守り:1000 器用さ:500 賢さ:400 魔法耐性:400 魔法威力:540 ボーナス:1080
◇ ◇ ◇
アレしてレベルが100以上も増えるなんて……。適当に振り分ける。
◇ ◇ ◇
Lv402 HP4020/MP4020
強さ:1100 守り:1000 器用さ:800 賢さ:400 魔法耐性:700 魔法威力:1000 ボーナス:0
◇ ◇ ◇
地平線に夕日が沈む、天空のベッドで二人で眺めていたその時だった。
『お邪魔いたします。アキト様』
『やっほーアキト君、うっわ!何この状況——』
長らくご無沙汰だった、銀色の炎のシルヴィと金色の炎のゴールジュが勝手に現れたので、俺は飲んでいたフルーツジュースを吹き出してしまった。
突然出てこられたらこういう状況もあり得るだろう。召喚してもいないのに勝手に出てきちゃうなんて、まったく自由だな。
『お姉様、美しい夕日を二人で眺める至福の時にお邪魔しているのよ』
『いや~、ほら二人とも裸だし、なんか生々しくって……ついね。ごめんねぇ、アキト君』
「いや、いいんだけど。どうしたんだ?」
『カラル様にぜひご恩をお返ししたく、出てまいりました』
「わらわは別にそんな大したことしてないわ」
『いいえ、そんな事はございませんよ。カラル様とアキト様とは契りを結ばれ、命を共有されました』
え、今のでそういうことになっちゃうのか?でも、始める前に儀式ってちゃんと言っていたな。忘れて楽しんでしまった。
「ええ、儀式は滞りなく終えて、わらわたちは番いとなりました」
『そこで私たちをカラル様に召喚できるよう、アキト様にお許しをいただきたいのですが、よろしいでしょうか?』
「アズアフィアとは離ればなれになっちゃうけどいいの?」
『命を共有されたことで、共有スペースができました。そこでいつでも会えるので問題ありません』
何それ!何処にあるの?
「俺の意思で召喚できなくなっちゃうってことになるのかな?」
『はい』
『アキト君、寂しい?寂しいでしょ?』
寂しくないといえば嘘になるが、カラルが霊格の炎を召喚できるようになって、力になるのであればそれもいいな……。
「いいよ、許可する。カラルを守ってやってくれ」
『御意にござります』
カラルが困惑している。
「いいの?アキト様こんなに強力な霊格な炎を二体も——」
「意思を持っているんだ、尊重してあげたいじゃないか。それにカラルを守るってことは俺を守るってことに変わりないんだし、いいじゃない。同じ女性同士仲良くしてくれ」
「ありがとう、アキト様」
裸で抱き合う俺たちを見かねた霊格の炎は『よろしくおねがいします』と、言って消えていった。
□
夕日が沈んだあと、レイラに連絡をとる。
色々とごまかし、カラルとの戦闘があり、疲れたので近くの街で一晩過ごしてから帰ることを伝える。レイラはちょっと心配そうだった。
「早く帰ってきてね」
そう言って通信を切った。
「アキト様、相当愛されてますね……」
「そうだよ、だから大切にしたいんだ」
近くの街で宿を取ろうと思い、アイテムボックスから地図を取り出す。
メノム平原?なのかここは……。
「カラル、近くの街はどこにある?」
「はい、ルグアールがよろしいかと……あちらの方角よ。歩くのも、お疲れのようだし、箱魔法で街に入っていきましょう」
「そんなことしたら注目の的だよ」
「大丈夫、わらわの光魔法で見えなくするわ」
「えっ!光魔法?あの光魔法?」
「”あの”というのがどの光魔法かは存じませんが……光魔法よ」
「勇者が使うような?」
「勇者というのがこの世界には存在したかは定かでないけれど……」
光魔法についてはまたゆっくりと聞いていこう。
「そうか、これからも色んなことを教えてくれ」
「はい、喜んで」




