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第四十四話 王都をあとに

 王への謁見も済ませて、屋台街で腹を満たした後、これからの話を始める。


「これからカムラドネに戻る。落ち着いたらルーミエとユウキの故郷を訪れたいと思うんだ」


 ルーミエが心配そうに声をかける。


「アキト、別にそんなに急がなくてもいいのよ」


「国の二つが侵略されてしまったんだろう?エスタやカムラドネみたいに一日、二日でなんとかなるとも思ってないし、俺自身も難しいと思っているんだ。国の端っこの方から、少しずつ状況確認だけでもしておこうかなと思う。俺に何が足りないか見極めつつ挑戦していこうと思っている。……それを俺のライフワークにしてもいいと思ってるんだ」


 ダンジョン攻略をライフワークにするのは悪魔族が運営している場合もあると聞いて、攻略しづらいと思い変更した。


「カラル、こういうことを聞くのは失礼なのかもしれないけれど、侵略された街は国はどうなってしまうんだ?」


「わらわは悪魔族ですので残念ながらお答えできません。……ご存知のことと思いますが、これまでこの世界の国の侵略を悪魔族が成功させた例がないからです」


「現にカノユール王国とイメノア王国は侵略を受けて、滅んでいるんだけど……」


「それはわらわ達以外の種族が侵略に成功してるのです」


「……魔人は悪魔族ではない?」


「ええ、彼の者たちとわらわの種族は住んでいる世界が違うわ」


 この世界と悪魔族の住む世界と魔人が住む世界は別なのか……。俺が異世界転移術でいけるのは魔人の世界だけだ。そういえばナリヤではルーミエとユウキが自分たちの国への侵略を思い出すきっかけがあったな……。


 街を覆ういくつもの魔法陣が展開される前にファンファーレが鳴り響き、終末を告げるような歌が聞こえたな……。その共通点だけを見るとナリヤとルーミエ、ユウキの故郷を襲った奴らは同じ種族で、エスタを襲った、えーとなんだけっけ、魔界将軍とか言ってたな……。どっちかっていうとカラルの種族の方だろうか?


 まだ想像でしかないが、もっと詳しく知りたい!この世界だけでなく、少なくとも二つの異世界が存在する。きっと他にもあるはずだ。ひょっとしてその一つに元いた世界もあったりするのだろうか。



 今後のカラルの予定はこれから魔法研に退職を伝え、引継ぎを行うそうだ。また、精気の抽出はダンジョンマスターであるカラルにしか行えないため、数カ月ごとにダンジョンにメンテナンスに来なければならないが、ダンジョンの管理を今もほとんど任せている者に任せるそうだ。


「いつぐらいにシュウゼルゥトに迎えに来ればいい?」


「引き継ぎには何日必要か不明ですので、アキト様のお持ちの通信用指輪に私の予備の指輪の同期して、それで連絡をするというのはいかがでしょう」


「そんなもことできるのか……それじゃあ、頼むよ」


「はい、それでは失礼して——」


 カラルは俺の背後に回ってカラルの持っている指輪を今ついている通信用の手と反対の手に付けてもらう。


 後ろから抱きかかえるようにして、左右の指輪同士を少林寺拳法の挨拶するような格好にしてくっつける。柔らかい感触が背中に当たる。


「では同期元の指輪から同期する指輪への方へ魔力を流してください」


 耳元で囁かれ、鳥肌が立つほど、ぞくぞくしながら言われるがままに魔力を流す。あっという間に、通信指輪が一つ増えた。さすがの開発者である。


 だが、口頭での指示でもできる内容をあえて、密着してくるあたりがカラルらしい。


 続いて、ドノグレイバンの治療に取り掛かる。みんなに断ってから、領域テリトリー発動し、目をつむる。


 城の中を探索して、治療術士による治療を受けているドノグレイバンを見つけた。眠っているのか、意識を失っているのか、表情は苦しそうだ。切断部位の血は止まっているが、切断面には包帯が巻かれて血が滲み、見るからに痛々しい。ってこの状況にしたのは俺なんだけどね……。


 術士は汗だくになりながら、目を閉じ眉間にしわを寄せながら必死の形相で次の術に向けての詠唱を行っている。切り飛ばした手足は近くのテーブルに置いてあった。


 領域テリトリーから極私的絶対王国マイキングダムに切り替える。切り飛ばした手足をそれぞれの断面のところに持っていき切断面を合わせるようにくっつける。


治療術士は気づいていない。両手両足の包帯を取り外し、『治癒』と念じる。身体と切断された部位がくっついていく。黒紫色になっている切断された部位はみるみるうちに血色をもどし、綺麗にくっつき ドノグレイバンの苦痛の表情も和らいだ。


 治療術士は最後まで気が付かなかったようだが、このまま放置して彼の功績にしてやろう。MPも治療だけで四百ほど使った。一人あたりの治療にしてはなかなかの消費量だった。


 治療も終わり、屋台街でカラルと別れた。


 あと王都を離れる前にしておきたいことは、本屋にいったりお土産を買ったりすることくらかな。


 事前に調べておいた、本屋に行く。


「ルーミエ、あの冒険者の話って誰の話だったっけ?」


「冒険者ラッテね、一緒に探してあげるわ。大人向きの方がいいのかしら?」


「大人向きってことは子供向きもあるの?」


「ええ、対象によって内容が変わってくるのよ、読めばわかるわ」


「じゃあ、一通り買うよ」


 ルーミエとユウキに手伝ってもらい、本を二十冊ほど購入する。レイラとノイリも資料書籍を購入していた。



 宿に戻り荷物をまとめる。いい部屋だったな。王都に来る際にはまた寄ろう。


 受付エルフ娘との最後の会話するチャンスも阻止され、ルーミエによってチェックアウトの手続きは無事終了してしまった。最後にもう一度あの声を近くで感じたかったのに、残念だな。


 宿をあとにして、城外に向かって歩きながらここ数日を振り返る。


 あっというまの四日間だった。ダンジョンにも行ったし、レベル上げも多少できた。それにカラルと出会えたことは、俺にとっては幸運だった。


 精気を自由に扱える悪魔族であれば誰でも良かったのかもしれないが、霊格の炎を癒せる力を持つ仲間が増えた。


 王都にある森に入る。箱魔法を展開して、みんな乗り込む。……さて、帰りますか。


 今回は箱魔法でもと来た道のりを飛行して帰らない。魔人に出会う可能性もあるので安全とは言えないが異世界転移魔法を使用する。


 異世界転移魔法……行先選択……”ネデバ”……発動!


 足元に広がる転移魔法陣に、みんな固唾を飲んだ。


箱魔法で魔法陣にずずっと、入っていく。魔法陣を通り抜けるとそこは乾いた荒野が眼下に広がっていた。


 通過した魔法陣を閉じる。光の塵となって魔法陣ははじけた。


 ここは魔人の住む世界、長居は無用だ。元の世界に戻るための魔法陣を用意する。


異世界転移魔法……行先選択……”カムラドネ”……発動!


 同じく魔法陣に箱魔法で入っていくとそこはカムラドネの上空だった。


「はい、到着~」


 レイラが聞いてきた


「アキト、これが転移魔法?」


「そうだよ、前に使えるようになったって言わなかったっけ?」


「聞いてたよ、だけどこんなに早く移動できちゃうなんて思わなかった。私は景色も見ながらの移動も好きかな……」


 そうか、景色を楽しみにしていたのか。


「近いうちにまたどこか旅行に行こうな」


 そう言ってレイラの頭を撫でた。


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