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第三十五話 王都シュウゼルゥト

 カムラドネを出発して、いくつかの街を通り過ぎおよそ一時間で王都が見えてきた。遠くから街を眺めていると分析能力が発動する。


◇ ◇ ◇

エスタ王国 王都:シュウゼルゥト 面積455平方キロメートル 人口1,237,894人

◇ ◇ ◇


 えーと、一平方キロメートル当たりの人口は——…………。


 すぐに計算できなかったので”電卓機能追加希望”と、願っておく。そんなに無茶なお願いじゃないから、明日には備わっているだろう。これまで金の計算も大雑把だったが、いい機会なので、お願いしておこう。


 街を上空から見下ろす。川や山や森があって、遠くまで街並みが続いている。城を中心に東西南北に大きな通りが十字に整備されて、その十字路に対して小さな環状線が幾重にもなって通路を築いている。これまでの街とは違い城壁は城下町の周りにしかなく、街と草原の境目には簡単な柵が作られ、家畜を飼っていたり、農作物を作っている。その他は工事も行われていて、街の拡張が続いているようだ。細部までまじまじと見ていると都市作成ゲームを見ているようで面白い。


 街の中にある山へ降下する。領域テリトリーで周りに人がいないことを確認しながら山の中を進み、森の出口手前で箱魔法を解除して歩いていく。レイラと手をつないで歩いていると、ルーミエも手をつなぎたかったようで空いていた反対の手をキャッチするように俺の手を取って手をつないだ。


 森を抜けしばらく歩くと川沿いに公園があり、手入れをされているようで綺麗な花々が咲いている。時間もちょうど昼ぐらいなのでご飯を食べることにした。木かげに椅子とテーブルをアイテムボックスから出して、これまでの長距離移動前や討伐前に買った食料をそれぞれテーブルに並べた。


 エスタ、カムラドネ、ナリヤで購入した残りなのだが、見た目や味付けが街ごとに異なり、食べ比べができて楽しい昼食だった。


 食べならこれからの予定を考える。宿をとったあと、ギルドにもいって情報収集したいし、あと本を置いているところにも行きたいな……。


「アキト、なんだか楽しそうね。何かいいことでもあったの?」


 デザートの果物の皮を向きながらレイラが尋ねる。


「みんなとこうやって旅ができて楽しいなって思っていたところだよ」


 先日のナリヤ防衛のために訪れるのとは、意味合いが違う。


「私も大人になって初めての旅行がみんなと一緒でよかったって思っているのよ」


 巫女は普段の生活は自由だが、お役目のためカムラドネから離れることはできなかった。


 昼食を終え、城壁の中の城下町に向かって歩く。門をくぐり城下町に入ると人、馬車、牛の往来もさらに多くなり、賑やかだった。いくつかの宿屋の外観や雰囲気などを見て、みんなで協議して決めて入った。カウンターでは綺麗なエルフの女性が受付をしている。


 おっ!この宿にして正解だ。ならば俺が受付しようではないか!と、一歩踏み出す前にルーミエが間に入って宿泊手続きをし始めた。


 せっかくエルフ娘との会話を楽しもうと思ったのに……。下心がバレバレだったのだろうか?


 一番広い部屋を取ってもらうように伝える。金額は五人で朝晩の二食付きで一泊三十万モコ、四泊の申し込みで百二十万モコだ。前払いで金貨十二枚をルーミエ経由でエルフのお姉さんに渡す。


 本来のレイラとノイリの予定は使者と護衛たちと一緒に四日かけてカムラドネからシュウゼルゥトに移動したのち、王都での指定の宿で一泊した翌日に王との謁見の予定だったそうだが、それをお断りしたため、二人の旅費や護衛費用として金貨十枚を受け取っていたようだ。


 部屋は最上階のワンフロアでバルコニーからは城が見え、その向こうに続く城下町が見渡せた。


 ベッドが三つしかないなと思っていたら、案内してくれた男性従業員がアイテムボックスから同じサイズのベッドを同じ並びに二つ出してくれた。朝食、夕食は受付に伝えれば、部屋までもって上がるとのことなど、部屋の説明もそこそこに男性従業員は引き上げていった。


 部屋の中の仕切りはなく、お風呂とトイレが別部屋になっているだけで、リビング、ダイニング、寝室スペースは一つの大きな空間だった。ルーミエ、ユウキ、ノイリは楽しそうに部屋のあちこちをチェックしている。


 こんなにオープンになっていたらレイラといちゃいちゃできないな……。そんなことを思っていると、レイラも同じように思ったようだ。


「どうしようか?」と、レイラが耳元で囁いてくる。


「しょうがないよ、ここに泊まっている間はおとなしくしてよう」


 俺は苦笑いで答える。


 部屋の中を確認もひと段落して、ユウキがお茶を入れてくれた。


「ちょっと領域テリトリーで街の中を見てみるよ」と言ったら、屋台街がどこにあるかとか、書籍を扱っている店やポーション関連を扱っている店がどこだとかの調査依頼が舞い込む。


 領域テリトリー発動して付近全体に広げる。


 屋台街はいくつかあったので一番近いところを伝える。飲み屋も多くあり、この時間帯はまだ準備中のところもあるが、夜はにぎやかな感じになるんだろう。


 続いて書籍関連は魔導書店が近隣に三店舗ほどあって、ポーションを扱っている店は四ヶ所あるギルドの近くにありそれぞれの大体の方角と距離を伝える。


 一番近いギルドに領域テリトリーを移動させる。


 ギルド内のほどよい喧騒が頭に響く。冒険者たちの話に聞き耳を立てみると、ほとんどが近隣のダンジョン攻略の話をしている。もっとも古くからあり、今もなお人気の高いダンジョンがあることがわかった。


 ダンジョンのネタを仕入れたところで、改めて周りを見回す。王都ということもあり、戦闘能力の高い竜人や獣人が多い。


 竜人の特徴は体が大きく肌の露出が多く、個体によって差があるが露出部分には固そうな鱗がある。そしてみんなプロポーションがいい。男性は見事なまでに逆三角形で、女性も出ているところは出て引っ込むところは引っ込んでいるナイスバティだ。


 よく見るとそれぞれ違う特徴があって、目は蛇の目を持つ者や、手や足の爪が鋭い者もいたりする。人族との混血具合によって特徴が変わってくるのだろうか……。


 獣人もまた多種に分かれていて、獅子や狼や犬を二足歩行にした感じの者から、耳だけが獣でその他は人間と同じ者とか様々だ。


 次は城の中の見学だ。上層階から見てみよう。最上階の四層は王族の生活空間で、お風呂は大きくて、浴槽だけで八畳くらいあるな。他には王妃の部屋、衣裳部屋、侍女の部屋、衛兵の部屋、食堂をメイドや衛兵がうろうろしている。


 王は寝室のベッドにいるようで何かもぞもぞしている。


 昼寝かな?と思っていたら若い女と一緒で昼下がりの情事の真っ最中だった……。あまりまじまじと人の行為を覗いても悪いし、見すぎてもこちら後の処理にも困る。


 あとは豪華で広い部屋が四室ありどの部屋にも肖像画が飾られてあった。おそらく王子または王女の部屋なのだろう。いずれの部屋の主も不在だった。


 さらに下の階をみると晩餐会などが開かれそうな大きなホールがあった。十階くらいの高さがあって、ここから見える風景もなかなかな綺麗だ。映画で見たような宮中ダンスパーティが行われているのだろう。そこから下は会議室など小さめの部屋や塔に務めている人たちのスペースとなっていた。


 街と城の中の偵察を終えて、情報収集とダンジョンの詳細を聞き、今回の旅の目的の一つであるダンジョン攻略に向かうことにした。


 今回は通信指輪を俺、レイラ、ルーミエで持つことになった。なにかあったら転移魔法で俺が駆けつけると約束をする。


「じゃあ行ってくるよ」


「いってらっしゃい、アキト」


 街並み眺めつつ歩くこと十五分でギルドに到着した。カウンターの受付はおっさん二人だった。さっき確認したときには獣人の女の子がいたのだが、交代したようだ。残念、ついていないな。


「こんにちは、情報だけもらうけどいいかな?」


 ダンジョンの情報はどの都市でも需要が高いので、記事の内容は濃いものになっている。そのため討伐情報などは結構読みごえがあって、それが楽しみでギルドに来ているところもある。


「おう!いいぞ。……兄ちゃんあまり見かけない顔だな。最近来たのか?」


「今日着いたところだ」


 おっさんが俺の記録石きろくせきの情報をよみとる。


「冒険者ランクは”壱”か……。仲間はいるのか?」


「ああ、お勧めのダンジョンはあるか?」


「お勧めは王都北部の山のふもとに昔からあるダンジョンだな。一層から四層までが初心者向けだ。今のところ攻略が百五十層くらいまで進んでいるが、お前さんたちが挑むにはもっと鍛えないとな。強くなってくれよ、期待しているぞ、兄ちゃん!!」


 おっさん、静かに頼むよ、冒険者ランクが”壱”っていうのも考えものだな。あんまり注目されたくないのだが……。まあ、ものはついでだ。情報を聞き出してみよう。


「最終階には何があるんだ」


「残念だが詳しくはまだわかっていない。なんせ二百層、三百層あるかもしれないと言われているからな。

 他の攻略されたダンジョンの話だが、百層くらいに悪魔がいて、そいつを倒すことでダンジョンは終わりを迎え、攻略したパーティは二十人ぐらいだったが十年は遊んで暮らせる財宝を手に入れたそうだ」


「へぇー、それは羨ましいな」と、適当な相づちをする。


 やはりダンジョンの最終層には悪魔か……。カムラドネもそうだったな。悪魔はダンジョンを作るのが好きなのかな?


 おっさんから世間話も含めて他の情報を聞いて、テーブルに移動し記録石きろくせきの情報を確認する。


◇ ◇ ◇

1.初心者が押さえておきたいダンジョン必需品特集。

2.あなたは肉派?小麦派?米派?長く潜る秘訣は食べ物にあった!!

3.今月のアイテムドロップ情報

4.人気コーナー拡大版 私の武器を探してください。

5.今人気のダンジョンはどこ?

6.連載 世界を歩けば ナンバー427

  エスタへの襲撃、カムラドネの悪魔の塔、ナリヤへの襲撃の意外な共通点

7.シュウゼルゥト軍隊情報&王家側近護衛者たち

8.遠夜見とおよみの巫女の意外な素顔

……

◇ ◇ ◇


 情報量が多く、読むには時間がかかりそうだ。記事の6が気になるな。


◇ ◇ ◇

「6.連載 世界を歩けば ナンバー427」

 これまで王都ギルド情報部ではエスタ、カムラドネ、ナリヤの三都市間で起こった、襲撃またはダンジョン攻略についてそれぞれで取材を進めていたが、今回の調査でいくつかの共通点があることがわかった。


 いずれの三都市とも討伐者や踏破者が不明で、エスタに至っては目撃情報がなく、高額な賞金が出るにもかかわらず名乗りを上げたものはいなかった。その名誉を拒む理由がわからないが、倒したものは確実にいたはずだ。


 エスタ襲撃の防衛に成功したその四日後、カムラドネの悪魔の塔が消えた。塔が無くなる直前に上空に突如青い巨大な火の玉が現れ、塔を焼き尽くしたとの目撃情報が多数寄せられ、こちらも術者は不明だ。情報部ではこの青い炎は、魔法経典にある暴食の炎ではないかと推測している。


 さらにカムラドネの悪魔の塔の消滅から五日後、ナリヤに遠夜見とおよみの巫女による神託が発表され、異世界からの襲撃があった。


 いまだ混乱が続くナリヤだが、難を逃れた住民や兵からの情報を統合してみると、襲撃のあった夜、無数の魔法陣が街の上空に現れ、モンスターが大量に押し寄せたが、ある時間を境に魔法陣が一つ、ひとつと消えていき、最終的にナリヤ上空を覆う数百の魔法陣は全て消えた。


 魔法陣が消えた後、詠唱主の分からない炎がモンスターの残党を倒して回ったという目撃情報があったのだが、エスタでの防衛戦の終わりの方でも、この詠唱主がわかならない炎魔法がモンスターを倒していたという目撃場があったことが報告されている。この三つの都市で共通する謎の炎の魔法使いは同一人物なのだろうか……。


 しかしエスタからカムラドネへは通常馬車で七日かかるところを早馬なみの速度の四日で到着し、さらにナリヤへの移動には最低でも馬車で四十日以上はかかるところ五日で到着することは不可能なため、同一人物とは考えにくく同じ魔法能力を持った者がいたと推測するしかなかった。


 謎は謎のままで闇に消えてしまうのかと諦めていた情報部だったが、先ほどその真実に近づくための証言をとある関係者筋から得た。


 それは記録石きろくせきの情報記録から、この三都市の事案発生日に近い日時で同一人物がギルドに立ち寄っている。というものだった。


 その冒険者の情報や移動手段などの詳細は不明ではあるが、一筋の光が見えてきたため、今後も精力的に取材を続けたいと思う。

◇ ◇ ◇


 記事を読み終えて俺は崩れ落ちた。


 完全にばれとるやないかーーーい!!!


 記録石きろくせきってログとってるんだ。管理している奴らがいたとは想像していなかった。どこから情報が漏れるか分からないものだな。この関係者筋ってのがどこなのか突き止める必要がある。


 王都ギルド情報部……覚えておくぞ。


 とりあえず今日はこのまま王都シュウゼルゥトで最も古く、人気もあり、ギルドのおっさんおすすめの北のダンジョンに向かうことにする。


 王都の中にある森に入り、人がいないことを確認してから箱魔法でそのダンジョンに向けて飛び立った。


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