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第二十八話 襲撃 その一

 襲撃当日。


 ギルド演習場で少し体を動かし、領域テリトリーの使い方や魔法の練習をする。

 ルーミエとユウキも緊張しているのか口数が少なめだ。異世界からの侵略で故郷の滅亡を経験したこともり、テンションはいつもよりもだいぶ低い。


 昼食後はこれからやってくる夜の襲撃に備えて、宿でゴロゴロしたり、眠って時間を潰していたが、時間がとても長く感じられた。


 きれいな夕焼けで街が赤く染まる。前世では海外は行ったことないが、たまにテレビで見るような、中世ヨーロッパに似たレンガ造りの建物が並び、道路は石畳で舗装されている。いい街並みだ。


 カラスの鳴き声が響き、塔からは定刻を知らせる鐘が鳴り響いた。街は静まり返り、緊張感で包まれている。


 街のいたる場所に配置されている防衛軍はそれぞれ二つ、三つのパーティーが集まり二十人ほどの集団を作り、来たるべきその時を待っている。


 俺たちは宿から夕焼け空を眺めていたが、日没になると、あらかじめ決めておいた近くの広場に向かった。


 アイテムボックスから椅子を出して、時折他愛のない会話をしながら時間を潰した。


 日没から三時間ほど経過し、月も高く昇った。上空を見上げていたルーミエがつぶやいた。


「来たわね……」


 音もなくナリヤ上空に魔法陣が一つずつ展開されていく。八個の魔法陣が円状に連なり、ナリヤ上空で光り輝いている。


 それぞれの魔法陣からミノタウロス、オーガ、ドラゴンなど防御力が高そうなモンスターがずずずっと現れ、浮遊魔法がかけられていてゆっくりと地上に降下し、降り立った先では防衛軍と衝突が始まる。これくらいならなんとかできるな……。


 しかし厳しい戦いになることは間違いない。何故なら上空にある、魔法陣に手を出せる者がほとんどおらず、魔法陣を閉じることができない。これまでの戦いのほとんどが、敵を殲滅し尽くして防衛をしたと聞いている。垂れ流しの蛇口の水のように無尽蔵にモンスターが降り立つことを想像すると心も折れそうになるはずだ。


 通路の狭い場所の中での戦闘で怪我人が出始めている。


 地上に降り立ったモンスターを圧縮火炎球マグマボールで攻撃して倒していく。向かった先の魔法陣からはドラゴンが数匹が召喚され、防衛軍が苦戦を強いられている。


 取り巻いているが有効な攻撃が当たっておらず、ドラゴンは暴れ狂っているので綺麗な街並みがどんどん壊れてしまう。


 もったいないな……。


 圧縮火炎球マグマボールをそれぞれのドラゴンの頭部に向けて放つ。すべて着弾させて頭部をじりじりと焼いいるが動きを止めることができず、さらにのたうち回り、大きな図体が建物などあたり崩壊させてしまったが、ドラゴンは全て倒した。


 よし、この魔法陣の下は制圧した。今回の戦闘では魂の吸収は行われていないようだ。死体はそのまま残ったが、戦闘の邪魔になるので誰かがアイテムボックスに回収していった。


 続いて降りてくる途中の敵を圧縮火炎球マグマボールで打ち落としていく。防衛側では突如現れた、いくつもの圧縮火炎球マグマボールの連弾に驚きと誰が魔法を発動しているのか詮索が始まっている。


 顔を向けているだけで、無詠唱でかつ離れたところからの圧縮火炎球マグマボールの発現させているので、誰も俺がをコントロールして倒していることに気が付いていないようだ。特に名乗りを上げる必要もないのでそのまま放置する。


 二つ目の魔法陣もなんとかなりそうだ。


他の魔法陣はどうなんだろうか、見て回った方がいいかと思案していた時のことだった——。



 シャリーン……シャリーン……シャリーン……



 遠くから、鈴の音が聞こえる……。



 ん?何だ?



 歌が始まる……俺たちが使っているの言語ではない、女性の複数によるコーラス。


 荘厳なハーモニーが徐々に大きくなっている。一体誰が歌っているんだ?


「ダメよ……」


 突如ルーミエが呟いた。見るとルーミエの表情は青ざめ、生気を失ってしまっている。ユウキもすっかり怯えてしまったいる。


「どうした、ルーミエ、ユウキ」


「嫌よ嫌よ嫌よ……。また同じことの繰り返しなのっ!?」


 二人ともひどく混乱している。


「落ち着け二人とも」


 二人を抱きしめる。


「あの歌が終わった後、もっと多くの魔法陣が展開されるわ……だめだよ、アキト殺されちゃう……私とユウキの国を襲った奴らよ。さっきの魔法陣とは数が違うわ。お願い、私たちと逃げよう」


 ルーミエが泣きながら懇願する。


「落ち着いてよく聞いてくれ、二人は無理に戦わなくてもいいから安全な場所に避難してくれ」


「アキトは?」


「この街をほっておけないし、二人の仇となるならなおさらだ。奴らと戦う」


「だめだよ……」


 ユウキは俺の手を握って引き止める。


「ごめんな」


「嫌よ……アキト行かないで……」


 ルーミエは俺を強く抱きしめた。


「帰って来たらなんでも言うこと聞くから、行かせてくれ」


 ルーミエとユウキを交互に見つめる。


「……絶対に帰ってきてよ。約束だよ」


「わかった約束だ」


 さらに二人を強く抱きしめた。


 明るく白かった満月が赤く染まる、奴らが展開した魔法陣の影響か、空気に何かフィルターがかかり月を赤く見せている。


 歌が終わる……。荘厳的で敵ながら少し恰好いいと思ってしまった。ナリヤ上空にさらにの魔法陣が発現する。


 街全体を覆い尽くす魔法陣。その数はゆうに二百は超えている。ルーミエの言った通り、桁違いの数の魔法陣が展開される。そしてモンスターたちが降下しはじめた。


 このまま防衛を続けていては、この街は守れない。ためらわれていた策を実行することにした。


「ルーミエ、ユウキ……行ってくるよ」


「「ご武運を……」」


 俺は箱魔法に乗り込み高速で飛び立った。


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