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第二十三話 カムラドネでのびりんぐ

 悪魔の塔攻略の翌日、朝食前に一仕事する。


 日の出前にレイラに起こされ、色々とイベントが発生して、確認を後回しにしていた”新しい機能が追加されました。スキャニング能力”というログについて試してみる。


 この世界の暖かい配慮もそっちのけだったが、大変ありがたいと思っています。「世界よ!ありがとう」と、感謝の気持ちを表し、祈りのポーズをとった。


 屋敷の二階から隣の家を凝視するとAR表示でリストが浮かび上がる。


 建物内にいる人の名前、性別、職業、レベル、死亡可能残数、存在フロアが表示され、項目名をタップすると並び替えが行われる。それに集計用ページもある。人種ごと合計や性別合計などの人数が表示されている。これは便利だ!!


 続いて記録石キロクセキの修正を行う。今回の悪魔の塔を冒険者もろともに破壊したため、全て無かったことにしたい。見つかると犯罪者扱いになる可能性が高い。


 記録石キロクセキの討伐一覧を見ると、双子の悪魔の姉のウルム、妹のネイズの名前を始め、モンスターのみが表示され、冒険者らしき名前は一つも無かった。おそらく教会へ送られているのでカウントされていないものと勝手に解釈する。


 戦利品には冒険者が使っていた武器などが入っているが、特に目新しいものはなく、他人の持ち物を売ると足が付くかもしれないので不要であれば破棄しようかな。



 朝食の時にレイラからのプロポーズがあったことと、俺がそれを受け入れ、二人が婚約することをみんなに伝えた。

 どうやら事前にレイラから事前に話がされていたようで、みんな納得しているようだ。

三人からお祝いの言葉をもらい、レイラが答える。


「みんなありがとう。でもアキトは私だけのアキトじゃなくて、みんなのアキトだからね」


……ん?


「レイラ、一体どういうこと?」


「え~とね、アキトにプロポーズする前にみんなと約束したんだ。私は先にプロポーズさせてもらうけれど、みんな後からでも告白してもOKだよっていう協定を結んでいるの」


 そんな協定成立しちゃってもいいの?レイラと結婚するけど、ルーミエとユウキとノイリにその気があれば嫁にすることが可能ということか。この世界の結婚の観念が分からないが、みんなそれを受け入れているようだ。一夫多妻制バンザイ!


「レイラはそれでもいいのか?」


「うん、みんな仲間だからね、私はアキトと同じくらい三人のことも好きなんだよ。だからこれまで通り三人と接してね」


 憧れの一夫多妻を叶えることになるとは思わなかった。異論もなく俺は受け入れる。

それでも本人たちの気持ちも大切だし、これまで通りに接することにしよう。


 今日の予定はレイラのご両親に挨拶と昼からルーミエの剣技を教えてもらう。の二本立てで、まったりしている。


 この二週間にエスタ防衛戦、エスタからカムラドネへの移動、悪魔の塔の攻略とハイスピードでイベントが発生している。そして極めつけは嫁までできてしまったことだ。


 めまぐるしく変化しているため、ここらでちょっとのんびりさせてほしいと四人に願い出た。


ルーミエとユウキも「ここからは先を急ぐ旅ではないので、休養を取ってカムラドネでゆっくりしましょう」と、提案を受け入れてくれた。



 お昼前にレイラの両親に結婚のお許しをもらうため、実家を尋ねる。そのままの服装でいいのと、結納の品として小刀を献上することになっているそうで、エスタの防衛戦の時に得たオリハルコンの短剣を渡すことにした。


 短剣を献上する意味をレイラに聞いたところ、娘と別れることがあれば、この短剣であなたを殺しますよ。と、いうことらしい。何それ、超こわいんだけど……。


 両親にお会いして、「お嬢さんをください」的なことを伝え、お昼を一緒に食べながら、これからのことを伝えた。


 どのような経緯いきさつで結婚することになったのか聞かれた。内緒にしてほしいと前置きしてから、悪魔の塔を破壊したのは俺でレイラの命を救った恩人だとレイラは強く両親に伝えてくれた。


 両親にはいつかレイラを救ってくれる可能性がある人が現れるという神託が出ていたことは伝えていたので、いきなり現れたどこの馬の骨ともわからない俺のことを温かく受け入れ、結婚も認めてくれた。


  最後に「娘を幸せにしてください。よろしくお願いします」と、お願いされ「わかりました」と、伝えご両親二人と固く握手を交わし、レイラ実家を後にした。



 午後からルーミエの剣技を教えてもらう。


「教える前にアキトの実力を見るために木刀での模擬戦をしようか」


 木刀を持って身構える。


 最初に森の中で見たルーミエとユウキの動きを思い出す。ルーミエは視界から消えるほどの移動速度持っているが、俺にそのスピードが見極められるだろうか……。



 肩幅ほどに足を開き、少しつま先立ちでいつでも動ける状態を作り、ルーミエを注視する。


「いくよ……」


 ルーミエの体が左へ揺れ、沈み込む。前のめりになり、こちらへ木刀を突き出し直進してくるのがわかる。


 一撃目を木刀を受け止めると、ルーミエは少し驚いた顔をしたが、すぐに攻撃を重ねてくる。


 一撃一撃が木刀とは思えないほど重たい。”強さ”によるチートのお陰で、なんとか受けきれている。


 防いだ木刀が次の瞬間には、別の所を攻撃してくる。木刀は一本しかないのに、まったくどうなっているんだろうか。舞うようなルーミエの連続攻撃が止まらない。攻撃を返す隙を伺うが、反撃は無理だった。


 しばらく続いた連続攻撃はとまり、ルーミエは距離を取った。


「はい、おしまい……」


 じんわりと汗ばんだ彼女が褒めてくれる。


「すごいね、アキト。全部防いじゃうなんて」


「いや、防ぐだけで精一杯だったよ。見ていると型があるように思えたのだけど……どこで修得したの?」


「これはエソルタ島に伝わる王国の剣技なの」


 懐かしそうに語るルーミエ。


「私が幼い時にね、剣技の踊るような動きを真似していたら、お父様とお兄様に教えていただいのが始まりだったかな……。筋がいいなって褒められて、それが嬉しくてね。兵士の方と一緒に訓練を続けていたら、お料理なんかよりも剣技の方が得意になってた。お母様は笑って諦めていたわ。

 今ではたくさん教えてもらったこの剣技がお父様やお兄様との思い出なのよ」


 そして夕方近くまで剣の基礎を教えてもらった。


 その日の夜。


 お酒も控えめにして、自室にて早々に寝る準備をする。一人で寝るなんて、エスタでの教会以来じゃないかな?みんなと寝るのも楽しいが、考え事をする時間も結構好きだ。


 部屋の行灯あんどんを消し、仰向けになり天井を見る。この世界には電気がないため、みんな寝るのが早い。暗闇の中、うとうとしているとコンコンと、ドアがノックされ、開けるとレイラが枕を持って立っていた。


「……一緒に寝てもいい?」


 断る理由はどこにもない。ドアを広げて中に入るよう促した。ベッドに枕を抱えてちょこんとすわったレイラ。隣に俺も座る。


 窓からは月の光が差し込んでいる。


「レイラと結婚できるなんて本当に幸せに思っているよ」


「私もアキトと一緒なら何も怖くないよ。でもね……巫女はこの街を出て旅をすることは禁じられているの。巫女の能力がある限り、アキトと一緒に旅ができないんだよ。今日は、私のすべてをアキトに知ってほしくて……」


 そうか、巫女ともなれば厳しい制約があるんだな。


「わかったよ」


 長い長い口づけの後、二人は初めての夜を過ごした。それはとても甘美な夜だった。



「なあ、レイラ。俺、この世界の人間じゃないんだよ」


「そうなんだ」


「あまり、驚かないんだね」


「うん、アキトのことは何があっても不思議じゃないと思っていたからね。どんな世界だったの?」


「この世界とは違って、魔法がなくてモンスターがいない世界。優しい両親がいて、俺はそこで普通に大きくなった。勉強して、友達と遊んで、恋をして、失恋して、立ち直って……。命の危険を感じることが無かったし、幸せな世界だったのかもしれない」


「帰りたいって思う?」


「そうだな、家族には一言挨拶しておきたかったかな。向こうの世界では最後、俺は死んでいることになっているから多分両親は悲しんでいると思う」


「それは寂しいね」


「うん。それだけが心残りかな。でも今のこの世界は俺の憧れでもあったし、この強すぎる力を最大限に生かして、レイラやみんなと楽しく生きていけると思うと家族との別れを差し引いても本当に幸せだよ」


「ありがとう。……でも一つ聞いてもいい?アキトの前の恋人の話、参考までにちょっと聞かせてよ。どんな女の子だったの?」


「どんなといわれてもなぁ。三年くらい付き合いだったかな。見た目も性格も普通の子だった……。十六歳の時かな、その子と付き合うようになって、二人でいろんなところへ遊びに行ったなぁ」


「あら、いい思い出ね。どうして別れちゃったの?」


「結構えぐってくるな……」


「いいじゃない、私、だいぶ嫉妬してるんだから、ここまで来たら最後まで話してよ」


「なんで別れたのかな……。付き合いが長くなって、学生だし、結婚できる年齢でもなかった、それでお互いの嫌なところが見え始めて、別れたって感じかな。まあちょくちょく連絡は取り合っていたから、もしかしたら、付き合って、別れてを繰り返して最後には結婚していたかもしれないかも……」


 レイラは聞いて置きながら機嫌が悪くなってきたようで、話題を変えた。


「じゃあ私と結婚してどういう風に思っているの?」


「良かったと思っているよ。料理は上手だし。こんなにかわいい奥さんいないよ。もしあっちの世界で出会っていたら、多分俺は相手にされないって思ってレイラに声を掛けてないよ」


「ふふふ、ありがとう。アキト」


 その後、レイラに回復魔法をかけてもう二回戦ほどありました。


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