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Re*Birth  作者: 星乃泪
第1章 序章
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第1章 第5話 いっつ、"ノウリョク"しょー!

「私はね、『凍結』の能力を持っているの。あーでも実はまだ能力がちゃんと制御できてないからさ。このマフラーはそれを抑制するモノなんだけど、気安く触ると火傷するから♡」

「火傷で済めばいいけどな……」


笑顔でさらっと恐ろしい事を口にするユイに、思わずソラは後ずさる。しかし、彼女の一言で"能力"の意味をやっと理解することができた。簡単に言えば魔法だ。それも、ある一つのことだけに突出した限定的な魔法。当然ソラにも、その力が備わっているというわけだ。

「んーじゃあ、その能力を実際にお披露目する訳だけど、その前に……。ハヅキ!そろそろ出てこい!」


ソウマの怒号に驚いたのか、鈍い音の後にドアの隅から瞳に涙を抱えた少女がゆっくり顔を出した。

顔の位置からして、恐らく腰が抜けて四つん這い状態。先程気配を感じた正体は、あの子だったようだ。

暫くその体勢のままボロボロ涙を流す彼女を放っておくこともできず、ユイが半ば無理矢理彼女の手を引いてこちらへ連れてきた。

茶髪のお下げに丸眼鏡、本を持たせたらまさに文学少女だ。


「あ〜すまんすまん。別に驚かすつもりはなかったんだけど、ってかそろそろその人見知り直したらどうだ?」

「まだハヅキっちは初対面、特に異性には慣れてないの!あーもうハヅキっち大丈夫?」

「……あたま、ぶった」


赤く腫れた額を押さえ涙ながらに答えるハヅキを、ユイはヨシヨシと宥める。そこで何かを思い出したのか、ユイはハヅキに喋りかける。


「あ!そうだハヅキっち!りんご出して欲しいんだけど」

「え?……うん」


いきなりの要求にハヅキは頭を傾けるが、言われるがままに窓側へ駆けていく。そして腰に掛けていたウエストポーチから何やらゴソゴソと探し始めた。


「え、なに?何が始まるの?てかなんでりんご?」


ソラただ一人だけがこの状況を理解できないままでいた。確かこの辺にりんごの実がなっている場所なんてなかったし、そもそもなぜユイはハヅキにりんごを強請ったのかさっぱりわからない。

ハヅキは目的の物を見つけると、それを窓の外へ投げた。


ーー大きくなってね。


彼女の願いに反応して、何もないはずの地面からみるみる内に一本の木が生えてくる。


「え!?なんで?木が!木が生えてきたけど!え!どゆこと!え!」


有り得ない光景に絶叫するソラ。まるで初めて遊園地に訪れた時の子供のようだ。

突如生えてきた木は、瞬く間に真っ赤な果実を実らせる。ハヅキはその果実を人数分だけもぎると、それぞれに配った。

正真正銘ただのりんごだ。どこをどう見ても、食べ頃の美味そうなりんごにしか見えない。ソラは恐る恐る口へ含む。


「う、うめぇ……」


溢れ出る果汁と共に旨味が口一杯に広がる。これなら一ヶ月間フルーツのみでもいけそうだ。


「1分半ってとこかな」


唐突にタイムを呟くソウマ。彼の腕には腕時計が巻かれていた。


「…ってかそれ時計じゃん!!」


ソウマの腕へ真っしぐらなソラ。さながら夕方のタイムセールで人格が変わる主婦のようだった。が、時計の秒針はピクリともしない。


「あーなんか最近調子悪くてさ、ストップウォッチ機能は使えるんだけど時間がわからなくて。そういえばソラがここに来たあたりだったような……」

「なら割と最近だな。この部屋何処にも時計ないから時間知りたくて。第一カグラは時間なんて概念ないとか言ってくるし」


ソラはぶつくさ言いながらソウマの元を離れてゆく。今でも窓の外を覗けば、晴れ晴れとした青空が広がり、ずっと海中から空を仰いでるかのようだった。


「ハヅキっち前より30秒も縮まったね!すごいな〜」

「コツ…掴んできた!」


誉め讃えるユイに思わず笑みが溢れるハヅキ。その二人を眺めるソラの方へ、今度はソウマが寄ってきた。


「ハヅキの能力は『促進』。まぁ見たまんまだけど、彼女が触れた物を任意に促進させることができるんだ。今回の場合だと、りんごの種子の生長促進。まぁたまに制御が効かなくて触れた物を無条件に促進させちゃったりするのが傷だけど」

「触れた物ならなんでも促進できるのか?例えば生き物とかも」

「まぁ、そうだろうな。まだ試したことはないけど」

「そうか。ところで、なんでタイムを?」

「あぁ、これはな。ここって退屈だろう?周りにはなーんにもないし、大人しく座ってるだけなんて人生の無駄遣いじゃん。だからこうして能力を制御する練習をしてるってわけ。まぁ特にあの二人はまだ制御仕切れてないからさ。これでも昔よりはだいぶマシになった方なんだぜ?」


ソウマは笑いつつも、安堵の溜息を吐く。その姿は子の成長を見守る親のようだった。


「ハヅキの能力すごいな〜。驚いたよ!」


ソラもハヅキへ賞賛の言葉を告げる。が、返ってきた言葉は一瞬思考を停止させるものだった。


「ぜ、全然すごくなかと!」

「……ん?」

「ハヅキっち、訛り出てるよ」


つい訛りが出てしまったことと、それを初対面の人に聞かれてしまったことが相当恥ずかしかったのか、手で顔を覆い隠し謎の呻き声をあげていた。

苦笑いで立ち尽くすソラ。ユイは彼女の失態を誤魔化そうと話題を変える。


「あ、あはは〜。じゃあ、次は私ね!」


手の中にあるのは先程ハヅキから配られたりんご。ソラとソウマは既に食べてしまったが、ユイは食べずに取っておいたようだ。

そういえばハヅキにりんごを要求していたのはユイだった。一体りんごに何の意味があるというのか。


「え〜この種も……種は中にあるけど、仕掛けは無いこのりんごを、一瞬で凍らせてみせます!」


マジックショーの幕開けの如く能力について実演を始めるユイ。その手に乗せられたりんごは正真正銘さっき美味しく頂いた物だ。

彼女は若干顔を顰め、ゆっくりとりんごを持つ手に力を注ぐ。


ーーピキッ


ゆっくりとりんごの表面が白く霞んできたと思いきや、あっという間に凍り付いてしまった。


「はっ?えっ?どーなってんだよ!」


余りに一瞬の出来事に動揺を隠せないソラ。本当に凍っているのか確かめようと思わず手を伸ばした瞬間、りんごは形を保てきれず床に崩れ落ちてしまった。

辺りには白い煙が立ちこもる。彼女が能力を発動しただけで、この部屋の温度が一気に下がり、夏だというのにソラの腕には鳥肌が立っていた。


「あーまた失敗しちゃった」


掌に残った無数の結晶を見つめ、何故か落胆するユイ。そこに追い打ちかけるようにソウマがタイムを口にする。


「11秒……この間よりタイム縮んでるぞ」

「え、縮んじゃダメなのか?」

「あーほら、ユイの能力は強力過ぎて制御が難しいんだ。その気になればこの建物ごと一瞬で塵にする事もできる。だからなるべくゆっくり凍らせる練習をしてるんだけどな。ハヅキに比べて成長が著しく悪い……」


ソウマに痛いところを突かれ、なにも言えずただただ苦笑いで誤魔化すユイ。抑制効果のあるマフラーを着けてもなお制御が難しいのは、とても辛いことかもしれない。彼女の笑みが、ソラの目にはとても苦しく映った。


「さて、次は俺の番だが。ハヅキ、あの木使うぞ」


ソウマは彼女からの承諾の返事を待たず、首に掛けていたヘッドホンを耳に当てる。その瞬間何かを察知したカグラが、慌てて机の下に隠れ耳を塞いだ。ユイとハヅキも同様に耳を塞ぎ慌てふためく。


「な、なぁ!みんなして耳塞いでるけど、ソウマの能力ってなんだー?」

「い、いいから早く耳を塞ぎなさい!」


取り敢えずカグラの言う通り耳を塞ぐが、ソウマがどんな能力なのか、これから何が起こるのか全く想像もつかず、ソウマに催促の目で訴える。

一方ソラと目が合ったソウマは、不敵な笑みを零すと手を開き、構えの態勢に入る。


パン。


この部屋中に、手拍子の鳴る音が虚しく響くーー筈だった。


実際に響いたのは地面を割るような轟音。地響きで足がもたついてしまう。そしてその轟音とともに目が焼けるほどの閃光が視界を遮った。正にバ○ス状態。アイツの気持ちがよく分かる瞬間だった。


「な、何が起こったんだ……」


次第に轟音と地響きが収まり、視界に色味が戻る。しかし周囲は土煙に覆われ、何かが焼け焦げる臭いが漂う。

眼を凝らすと、窓の外に生えていた木がパチパチと音を立て燃えていた。


「みんなー大丈夫かー?」


周りを見渡すと、絶叫しながら走り回るマフラー少女と蹲って手だけ挙げてるエセ文学少女は視認できた。カグラはというと、ソラの脚を掴んでブルブル震えている。


「お前、机の下に隠れてたんじゃなかったのかよ……」


無反応のカグラは、無言で涙を零していた。意外な一面ではあるが、既にキャラが崩壊している感じがして、これ以上何もツッコむ事もできなかった。


「あはーごめんごめん。ちょっとやり過ぎちゃったわー」

「やり過ぎってレベルじゃないだろ……」

「まぁそんな怒らない怒らない。一発ド派手なのもまた一興じゃん?あ、言い忘れてたけど俺の能力は『電気』ね。微弱なものからさっきみたいなものまでお手の物さ!」


ソラはカグラをなんとか引っ剥がすと、パチパチと燃えている木の方へ向かった。先程まであった立派な木が、真っ二つに分断されている。


「これでコントロールも抜群だから何も言えないよねー」


確かにソウマには気になる欠点などない。発動までのラグもないし、コントロールもズバ抜けている。強いて言うなら威力の微調整ってところか。それでも、他の2人と比べ能力の扱いに慣れている感じだった。

ソラの隣でユイが嫌味をたらすと、変わり果てた木に向かって息を吹きかける。それは吹雪となって火花を消し、木は氷のオブジェと化した。


「さーて、トリは……」


ソウマが言いかけた瞬間、再び重いドアが開かれた。

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