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Re*Birth  作者: 星乃泪
第2章 救出編
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第2章 第4話 異変と疑問とその答え。

 時刻は少し遡る。

 ソウマが姿を消しソラと別れた後、花坂率いる一行は二人とは別の方角を進んでいた。

 相変わらず進行方向に目立つ建物はひとつも見つからない。

 踏み締めているこれが仮に砂ならば、間違いなく砂漠だろう。

 それほどまでに果てしなく、一度道を誤れば永遠に迷い続ける世界が目の前に広がっている。

 そんな中、カグラはひとり静かに苛立ちを露わにした。


「さっきから気になっていたのだけど、その格好はなに?」

「え?おかしいかなぁ……」


 自分の身なりを振り返るユイ。


「おかしいとかそれ以前に、そもそもあなたいつ着替えたのよ」

「えっと、ソウマっちとソラっちがいなくなった後……かな?」


 皆がダウン一枚で寒さをしのいでいる中、ユイだけが分厚い鎧……ではなく、防寒着を身に纏っていた。

 そして唐突に始まるユイのコーデ紹介。

 上下は分厚いスノーウェア。

 靴は防水加工の厚底ブーツ。

 冷えやすい手には毛糸の手袋。

 頭部も守れるニット帽。

 首元にはもちろんマフラー。

 ポイントは、スノーウェアの中に重ね着をすることで断熱効果と保温効果の両立を実現。

 一通り喋り尽くした後、彼女は「むふー!」と満足げに鼻を鳴らしていた。

 そんな格好でドヤ顔されたところで、ただリアクションに困るだけだ。

 一行が呆れる中、カグラが頭を抱えながら口を開く。


「コーデの紹介なんてどうでもいいの。その摩訶不思議な格好について問いてるのよ」

「……う、ウチの代償知ってるくせに!」

「限度というものがあるでしょう……!」


 静かに怒りを露わにするカグラに対し、ユイは「ぶー!」と子供のように反抗して見せた。

 そんな二人を宥めるように、花坂は口を開く。


「まぁまぁ二人とも、喧嘩してないで先を急ぎますよ」


 彼は二人の肩を叩きつつ、先導する。

 未開の地、更にはこの異常気象を前に、平常心を保てていることに彼は安堵していた。

 気が緩み過ぎているのも良くはないが……。

 そう思いながら、雪玉を投げ合う二人に苦笑していた。


「それにしてもユイ、私でさえちょっと汗をかいているというのに、よくその格好で汗ひとつかかないわね」


 白い息を吐くカグラに対して、ユイからは白い息は出ていなかった。


「うん。この能力が発現してから汗かけなくなっちゃって。てへへ」


 嫌味とは露知らず、ユイは笑みを浮かべる。


「はぁ……もう少しハヅキを見習ってみたらどう?あと別に褒めていないから」


 そう言って彼女はユイの顔面に雪玉を命中させる。

 ユイはその衝撃で雪上に倒れ込んだ。

 顔を真っ赤にしながらも、無邪気な笑みを見せるユイ。

 そんなユイにハヅキは手を差し伸べる。

 ユイはハヅキの手を握り体を起こしつつ、カグラの問いについて考えていた。


「ハヅキっちを見習う?うーん。ハヅキっちとの違いねぇ」


 ユイはハヅキをぐるりと見回すと、何かに気付いたのか、ポンと掌を打った。


「ほら、ハヅキっちはおこちゃま体温だから!」


 カグラが言っていた意図とズレてはいないものの、その答えに納得がいっていないハヅキが激しく反論する。


「こ、子供じゃないもん!」


 怒らせてしまったハヅキを宥めようとして、さらに怒りの火種を大きくしてしまう。


「そ、そうだよね!ちょっと見た目が小学生なだけだもんね?」

「まだ中学生くらいだもん!」


 ユイの失言にハヅキは完全に機嫌を損ねてしまった。

 小学生は子供に含まれることなど、一般的な感覚の人間であれば容易に想像できるはずなのだが、ユイは少し感覚がずれているようだ。

 ただ、子供という点で言えば、小学生も中学生もさほど変わらないのだが。

 改めて二人を並べてみると、服装の違いが明確にわかる。

 なんというか、フォルムからして明らかに違う。

 例えるなら、都会に住む人が着ていそうな軽やかな冬服と、月面着陸に成功した、ヘルメットを失くした宇宙飛行士くらいの差だ。

 この場合、ヘルメットを失くしている時点で成功どころか死亡案件なのだが。

 怒りが収まらぬ中、ハヅキは気になる一言を投げかける。


「そ、そいえば、ちょっと前まではそこまで寒がりじゃなかったよね?寒さ対策にしては度が過ぎてる気がするって私も思うんだけど」

「あー。その、アレからちょっと冷え症が悪化しちゃってさー、あはは」


 少し戸惑いを見せながらも、ユイは答えた。

 本人以外、彼女の言う『アレ』についてピンときていない様子だったが、『アレ』とは昨日暴走したマグマ野郎こと、タケシの攻撃を防ごうとしたときの出来事のことだ。

 代償は、能力を発動すればした分だけ自分の身に降りかかる。そしてあの時、彼女は平気なふりをしつつ限界ギリギリまで能力を発動していたのだ。ならば負う代償もそれ相応ということ。


「でもさ、能力使ったら使っただけ代償として返ってくるのって、なんか迷惑な話だよねー」

「もしかしたら、私達はその能力に見合う肉体を持ち合わせていないから、ということなのかもしれないわね」

「え、それって、つまり頑張って鍛えれば代償もなくなるってこと?」

「そんな単純な話じゃないわ。少なくとも今の私達に代償を取り除く術なんてものはないわよ」


 能力とその代償。

 アニメや映画によくいる能力者は、基本的に能力は使い放題で特段代償を負うことはない。

 あえて挙げるとするならば、体力の消耗くらいだろう。

 もしくは、ゲームで言うところのMPのようなものかもしれない。

 生命力が削られるのではなく、能力を発動するために必要なエネルギー。

 だが、それが消費されたとしても、死に至ることはない。

 一方こちらの場合、能力を発動すればその対価が代償として返ってくる。

 カグラの言う通り、能力に見合った肉体を持ち合わせていないと言う説は有力なのかもしれない。

 なぜなら、過去に起きたウィザード現象とは違い、ある日突然、昨日まで普通の人間だった者が強大な力を手に入れるからだ。

 タダで能力が使えるなど、そんな虫のいい話はない。

 ならばなぜ、何のために、何と戦うために、神様はこんな不自由な力を人々に与えたのだろうか。


「それにしても、空は曇っているし、地面も一面雪で真っ白。これでは天地がひっくり返っても気付かないですね。ところでカグラ君、方角はこちらで合っているんですよね?」


 白く広大な景色を目の前に、花坂は軽くため息を吐く。


「えぇ、合っているわ。……というか、あなたも地図と方位磁石は持っているのだから、自分で確認できるじゃない」


 彼女はポケットに忍ばせていた方位磁石を取り出し、方角を確認しながら答えた。

 方角は真っ直ぐ北を指している。携帯電話が使えず、更には雪のせいで目印となるものが何もないこの状況では、もはや紙媒体の地図すら役に立たず、方位磁石のみが頼みの綱だ。

 こんな世の中に、こんな原始的な方法で人探しをすることになるとは、誰も思っていなかった。

 時折、走り去るような追い風が粉雪とともにカグラの金髪を連れ去ろうとする。


「さむさむ〜」


 後ろを振り返ると、あれほど着込んでいるはずのユイが相変わらず寒さで震えていた。

 彼女を見ていると、季節が夏だということを危うく忘れてしまいそうになる。

 さらに言えば、彼女の行動を見るたびにこちらまで寒さが移る気がしてならない。

 迷惑そうに一瞥すると、カグラは身震いをしながら前を向き直した。

 暫く歩き続けているが、景色は一向に変わることはなく、手掛かりも見つからない。

 花坂を先頭に一行が進んできた足跡は風に流され、殆どその形を保ててはいなかった。


「それにしてもさー。なーんもないね、ここ。ホントに北海道なの?南極と間違えてない?」


 手掛かりもなく、変わり映えのしないこの状況に対して既に飽き始めるユイ。


「私の能力の限界をわかっているでしょ?ワープできる範囲にも限度というものがーー」


 そう言いかけたカグラの横をものすごい速さで走り去るユイ。

 その先には雪が隆起して山のようになっている場所が規則的に並んでいた。

 ユイはそのひとつに近づき、寒さのことも忘れ夢中で表面の雪を払い落としていく。

 そしてそれが何かを知っていたかのように、こちらへ声をあげる。


「みんなー!これ、家だよ家!」


 彼女の言葉を聞くまで、彼女以外の誰一人として何が起きているのか理解に及んでいなかった。

 彼女の一声で我に帰り、彼女の下へ駆け寄ると、確かにそれは家の外壁だった。

 さらに彼女はその外壁に沿って掘り進める。

 そして窓が現れたところでその手を止めた。

 ユイはそっと窓の中を覗き込む。

 そして、何か納得したかのように呟く。


「やっぱり……」

「何が、やっぱりよ……」


 彼女の言動に理解が追いつかず、カグラはユイに聞き返した。


「ここに来たときから、ずっとなんか、違和感?感じてたんだよね。みんなは感じてなかった?」


 彼女の問いに一同は答えを見出せずに黙り込む。


「なんか、気配っていうか……そう!人の気配がないんだよ!それでさ、窓の中覗いてみたんだけど、やっぱり誰もいなかった!それに、おかしいと思わない?普通こんなに雪が積もったらみんな雪掻きするよね?これじゃ外に出れないもん!」


 ユイの言葉にカグラははたと気付かされる。

 確かにこの状況は異常だった。

 ここへ着いたとき、ソウマもこの異常な状況に気付いていたのに、なぜ人の気配がないことまで考えが至らなかったのだろう。

 そんなことを思いながら、カグラは花坂を睨みつける。


「花坂、あなたはこの状況、初めから知っていたんじゃないの?」


 カグラの一言で視線が花坂に集まる。

 対して花坂は動じることもなく、笑みを浮かべながら口を開く。


「まぁまぁそんな急かさなくてもきちんと話しますよ」


 口ぶりからして、花坂はこの状況を理解しているようだった。

 花坂は歩を進めながら再び口を開く。


「と言っても、僕も聞いた話だから確証はないんですけどね。どうやら日本政府はこの状況を察知していて、秘密裏にシェルターを全国各地に作らせていたみたいなんですよ」

「シェルター?そんな話聞いたことないわよ。それに国民全員が収容できる規模のシェルターを国民が知らない状態で作れるかしら」

「だから僕だって驚いているんです。人がいないということは、そのシェルターに避難した以外推測できないじゃないですか」


 花坂の話を聞き、カグラはしばし思考する。


「大体のことは理解したわ。でも仮にそれが本当だったとして、国民ははいそうですかと納得してシェルターへ避難するかしら。それと、仮にシェルターへ避難してしまったなら、私達が探している能力者も避難しているという可能性はないのかしら」

「それはないです。理由は単純で、僕達がシェルターに避難していないのと同じ。各地にある施設もウチと同様でシェルター並みの耐久性があります。だから避難しているという可能性はないんです」


「そういう理屈ね」


 カグラはそういうと、不機嫌そうに飴を取り出し、口にほう張る。

 ふと後方を振り返ると、ユイとハヅキが少し遅れて歩いているのが見えた。


「ほら、二人とも。遊んでないで早く来なさい」

「「はーい」」


 カグラは後方の二人に声をかけ、先を急ぐよう促した。


「なぁハヅキっち。さっきから何してるん?」

「花坂先生の足って案外大きいんだなぁって」


 ハヅキは雪でできた足跡の上をなぞるように歩き、自分の足との差を確かめていた。

 確かに、ハヅキの足跡と比べると、ふた回りくらいの差があることが見て取れる。

 この何気ないやりとりに意味などないはずだった。


 ーー足跡。


 その言葉を聞いたカグラは、ハヅキが踏みしめている足跡の先を追う。

 そして彼女は咥えていた飴を雪面に落とす。

 それは、その足跡は、花坂のものではなかった。

 それは第三者の、大人の、足跡。

 ここにいる誰でもない、未知の足跡。

 彼女はすぐに声を出すことができなかった。

 この足跡は誰のものなのか。

 その答えを知るのは、もう少し後のことである。

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