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散歩日和  作者: Freakman
1/2

勇者と僧侶

「なぁ、僧侶」

「どうされました、勇者様?」

「散歩、いかね?」


これは、いろいろな人がただただ、散歩するだけの会話劇である。


「それにしても、ついにここまで来たな」

「ええ、ついに魔国領との国境付近ですね」

「モンスター、いねぇな?」

「そうですね。かえって静かすぎる気もします」

「わざわざ剣持ってきたのに、意味ねーじゃん」

「まあまあ、備えあれば憂いなし、とも言いますしね?」

「そっか、僧侶が言うならそうなのかもな」

「まぁ、光栄です」

「……所でさ、俺たちが出会ったのって結構昔だよな」 

「確か…去年の今頃、こんな風に紅葉の時期でしたよね」

「俺が王都を出て最初に出会ったのが僧侶、次に戦士、魔法使いだったかな?」

「ええ、そのはずです。」

「俺たちさ、休みなくずっと戦ってきたじゃん」

「ええ、かれこれ一年。」

「それでさ、この戦いが終わったら、魔王を倒したらさ、どっか遊びに行かないか?」

「そうですね、戦士さんと魔法使いさんも来てくれると思いますよ。」

「いや、そうじゃなくてさ…」

「何か言いました?」

「いや、何でも無い」

「そうですか」

「……それにしてもさぁ、親父、あ、いや、国王の奴さ……」

「え、ちょっと待ってください、今なんと?」

「あーやべっ、聞こえた?」

「むしろ聞こえないとお思いで?」

「ハァ…あれだ、あれ王子だよ。王位継承権第二位だ」

「………」

「…いや、黙るなよ?今まで通りのお前で居てくれよ。言葉遣いはキレイなのにたまに言葉遣い乱れて、必要以上にイタズラの過ぎるお前でさ?」

「………」

「冗談!冗談!だから!ね?泣かないで?不敬罪とかそんなの無いから!ね?ほら、見ろよ空が綺麗だぞ?」

「う、うん…」

「イタズラなんてむしろ大歓迎だから!ヘイ!カモン!」

「アハハ…」

「えっ?」

「アハハハハハハ」

「ちょっとまて、まさかとは思うが。」

「ハァ…ハァ…ご明察です、勇…いえ、王…子様」

「取って付けたように王子って呼ぶな!しかも嫌々!」

「ンフフ、なんだか二人きりだった頃を思い出します。」

「実際半月も無かったよな、二人旅」

「ええ、私としてはこのまま魔王の所へ乗り込んじゃってもいいと思うんですがね。」

「お前が言うと冗談に聞こえないからやめてくれ」

「勇…いえ、王子様のご意向とあらば…」

「次それやったら泣かすぞ?」

「そしたら勇者様だけ、回復魔法かけてあげませんよ?」

「僧侶様、本日もお綺麗で…」

「せめて抑揚をつけてください。」

「僧侶!様!本日も!お綺麗で!」

「そうじゃないです。なんかいろいろと方向性が可笑しいです」

「お前に言われたくないな。」

「あーそんなこと言って良いんですか?回復魔法かけてあげませんよ?」

「お前こそ良いのか?いざという時助けてやらねーぞ?」

「良いですよ。私にはメイスがあるので。」

「……それじゃあ、あれだぞ、ドラゴンのブレスとか防げるのか?」

「防御障壁張るのでご安心を」 

「いやでも、流石に魔王の攻撃とかは…」

「転移で逃げます」

「え?」

「三人分の魔法陣なら五秒で展開できます」

「……え。」

「あっ、勇者様!私朝食当番なんでそろそろ帰りますね、ごゆっくり〜」

「……嘘だろ、あいつ。」

  

 海の見える小高い丘で二人は分かれた。




〜三日後、魔王城、玉座の間にて〜


 戦士、魔法使い、気絶。

 魔王が大技を繰り出そうと溜めに入る。


「このオーラ…流石にヤバい!一時退却だ!僧侶!」

「ただいま!」

「あと五秒とないぞ!?」

「勇者様!二人を抱きかかえてこちらへ!」

「おう!!」


 勇者が二人を抱えて魔法陣の上に乗ったそのとき、僧侶はその魔法陣から自ら出て行った。三人分しかないキャパシティのために。

 

「さよなら、勇者様…」

「僧侶ぉお!!!!!!」 


 勇者の視界が暗転、そしてすぐに明転、そこはあの丘だった。


「僧侶ぉ!!!!!何でだよ!何で!何で!何で!何で!何で!これが終わったら遊びに行こうって言ったじゃん!海行ったり、山行ったり、温泉や雪国も!二人でいろんな所に行っていろんなことやりたかったんだよ!何で!お前が!お前が!」


 その大きな声で二人は意識を取り戻す。寝転がったまま会話を始める


「大丈夫勇者さん?」


「ああ、何でもない…」


「本当か?勇者殿。」


「ああ、本当に何でも無いんだ…」 


「王子様でも泣くんですね」


「だから…なんでもな…王子って…」

「ごきげんよう、ヘタレ王子」

「何で!僧侶が、幻覚か?幻覚なのか?」

「いえ、違います」

「幽霊…か?」

「勝手に殺さないで頂けますか?それとネタばらしは後でしてあげますので魔王城まで行きますよ。」

「え?」

「ほら、お二人も。」


 そう言って先程よりも長い時間かけて魔法陣を展開、玉座の間へとたどり着く。


「っど、どういうことだ…」

「私がやったんですよ、勇者様。」

「お前が、か?」

「ええ、その通りです。」

「いや、だってあのとき、魔王の攻撃は転移して逃げるって…」

「溜め攻撃の場合は別です。」

「え?」

「改めて聞いてみます?」

「え、じゃあ、魔王の溜め攻撃の時は?」  

「メイスで殴って戦闘不能にします」

「………」 

「まさか…お前。」

「ええ。殆どSTR極です。」(※能力を全てSTR、つまり腕力に割り振ること。)

「魔法陣の展開に時間がかかるのも?」

「INTスカッスカです。」(INT、知力のこと、魔法系職最重要ステータス)

「一年間、そんなの一言も言ってないよね?」

「聞かれなかったものですから」

「んなことあってたまるか」   

「所で勇者様、何か私に言いたいことがあるのでは?」

「……ここで?」 

「ええ。」

「二人と亡骸一体の前で?」 

「その通りです。」

「あー、えー、あー」

「シャキッとしてください、じゃないと断りますよ」 

「オーケー分かった……」

「まだですか?」

「心の準備が…」 

「本当にヘタレですね。」  

「待て、あと五秒。」

「ハァ…転移しちゃいますよ?」

「分かった!まて!今言う!」

「………」

「僧侶、俺と付き合ってくれ!」

「お断りします。」

「え?やらかした…?」

「違います」

「え?」

「その代わり"私と"付き合ってください」

「え?」 

「受け身は性に合わないので。」



後日

「そう言えば僧侶、あの時の、「さようなら、勇者様…」ってのは?」

「イタズラです。」



 アグレッシブ系STR極降り僧侶とヘタレ勇者、終わり

最後にタイトルが変わるのは仕様です

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