始まりの日(1)side一花
本編開始です
「187、188、191……あった!199!」
自分の番号を見つけたのだろう、茂は歓喜の声を上げた。
「ああ、ちゃんとあるよ。大丈夫だ」
「よっしゃぁぁぁ!」
咆哮をあげ「点数開示行ってくる!」と走り出した茂を半笑いで見送る。
「さて」
隣にいるもう一人の連れに声をかけた。
「俺たちも見に行くか」
「うんっ」
疑似大学科の合格発表の掲示板は普通科から30mばかり離れたところにある。
連れの手を引いてそちらに向かって歩き出した。
「それじゃあ三人とも無事如月高校に合格できたことを祝って、乾杯!」
所変わって僕の家。合格記念パーティと称して炭酸飲料を傾けていた。
「それにしてもすげぇな、チカも美咲も。疑大科だぜ?全国の高校生のトップが集まるとこじゃねぇか」
「努力の甲斐があった、ってとこかな。結局美咲には勝てなかったけど」
「いーちゃんには負けないんだよ」
「というか誰にも、な」
思わず苦笑する。
「どういうことだ?」
「美咲、学年一位なんだよ」
「あ、疑大科は順位まで出るんだ」
「人数が少ないから」
ちなみに今年の合格者は27人だったりする。
「それで、得点は」
「897点だったんだよ」
「……え?」
美咲の言葉に部屋がしんとなる。そうだよな……僕も最初聞いた時は驚いたもんな……
「チカ、一応聞いておくけど満点は――」
「900だ」
現役の大学受験生でもこのスコアをたたき出すのは厳しいだろう。
「むしろ何を間違えたんだよ……」
「地理らしい」
「だってだってだってさ、あそこに網をかけたんじゃヒマラヤ山脈だと思うじゃない」
「確かに紛らわしかったし正答率も低かったらしいけどな……補助文章読めばあれをヒマラヤ山脈としたときに矛盾が――」
「すまん、チカ。俺を置いて行かないでくれ」
いけない、茂はあの問題を知らないんだった。
「ああ、まぁこの話は置いておこうか。茂はどうだったんだ?」
「338……」
もちろん500点満点での話だ。
「僕は784点だったよ。ちなみに6位。それにしてもギリギリだったな、茂」
去年の普通科最低点は342点だったはずだ。
「ああ、まあ疑大科と違って最低基準点もないし、今年は難しかったらしいしな。それにしてもギリギリなのには変わりないけど」
受かれば同じだよ、と言って茂はコーラを飲みほした。
「それにしても」
ゲップを抑えながら茂が言った。
「よくドクペなんて飲めるな、美咲」
「そうかな?普通だと思うけど」
「僕も嫌いじゃないよ、ドクペ」
今はジンジャエールを飲んでいるけど、それは単にジンジャエールのほうが好きだというだけの話だ。
まじか、と言うと茂はカーペットに仰向けに転がった。ゲップ抑えるの大変そうだな……
「ひょっとしてドクペと頭の良さに何か関係あったりするのかな」
……それはないと思う。
次回、side茂になります