始まりの前に(2)
「これで数学IIBの試験を終わります。お疲れ様でした。各自解散してください」
廊下に出ると高田先生が待っていた。
「お疲れ様です、笹本先生」
「高田先生こそお疲れ様です」
「して、昨日の3人はいかがでしたかな」
「それが……」
そんな自分の様子を見て早合点したのか高田先生は高らかに笑い出した。
「カッカッカッ、ダメじゃったか。なにそんなこともあるわい」
「いえ、逆です」
「逆とな?」
「3人目の女子生徒ですが……今年は化け物が出るかもしれません」
回答はマーク式。学校のマークリーダーで回答はその日のうちに、いや、試験が終わったらすぐに採点される。
「そこで彼女の答案を見てみたのですが……」
「ふむ」
「IAまでの合計が797点」
「なんと」
「間違えたのは地理の一問だけですね。これは全体でも正答率が低かったですが」
「なんにせよ楽しみじゃあないか。今年の担任は君なんだろう?」
「正直手に負えるか心配ですよ」
「大丈夫じゃて。君ももう新米の域は脱しておる。そんなことじゃわしが引退したらやっていけんぞい」
そういうと高田先生はふぉっふぉっふぉと言って歩いて行った。
(大丈夫かな、俺……)
疑似大学科の担任は七年目になるけど一抹の不安が残るのだった。
会話メインの回になりました。次から本編です