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争い、のちに争い、のちに以下略

男の子って、夕方の河川敷で拳で語り合う→「お前やるな」「お前こそ」→青春の1ページに友情を刻むものじゃないんですか。




「ヒナコ。君は私への朝の挨拶を犬の散歩の片手間に済ませるつもりかい」

翌朝ギルバートを連れてエディオスの部屋を訪れた私に、彼は挨拶ではなく暴言を吐いた。犬って言った!私の息子を犬って言ったぞ、この国王!

「何故君がいるんだい、ギルバート」

「ヒナコ様の警護が自分の役目ですから」

憤慨してエディオス様に飛びかかろうとした私を引き止めながら、ギルバートが全く表情を変えずに言う。離せ、私の息子を悪く言う奴は魔王でも、違った国王でも許さない!エディオス様も私が飛びかかろうとしていたのは気がついていたのだろう、視線はギルバートに向けたまま机の引き出しを開けると何でもないような動作で鞭を取り出してちらちら私に見せつけてくる。そんな物で私が怖がるとでも言うのか。



凄く怖い。

何が怖いって、そんな物が引き出しに入っていることが一番怖い。どん引きよ!

引き出しは過去や未来に繋がっていて夢と希望と優しい猫型ロボットがいるはずなのにあの男の引き出しには悪夢と絶望と彼の性癖が詰まっているのだ。

「警護ねえ・・・。まあ良いが、お前の入室を許可した覚えは無いよ」

「貴方の許可を頂く必要が無い。犬でも何でも結構ですが、俺は巫女の犬でありオスタシアの犬では無い」

いや、貴方は巫女の犬でもオスタシアの犬でもなく私の息子だよ。自分を見失ってはいけない!


この二人、実は昔から凄く仲が悪い。

昔の話だ。ギルバートを拾って間もなくの頃、二人の年齢が近い事を思い出した私は彼らを引き合わせた。私としてはギルバートにオスタシアの環境に早く馴れて欲しかったのと、純粋にエディオス様の力になって欲しかった。彼は幼くして国王になったから、近しい同性が身近に少ない。互いに支えあいオスタシアを発展させる仲になってくれたらと思ってギルバートに話した時には、ギルバート自身エディオス様の役に立てればと好意的な反応だったから暫く二人だけで会話させ、私はその間庭を散歩していたのだ。後は若い者同士勝手にやるだろうと時間をつぶし、暫くしてからさあ彼らの友情を見せて貰おうと部屋に戻った時私が見たのは君達は破壊神でも召喚したのかと言う部屋の惨状と、ずたぼろになりながらまだ殴りあおうとする二人の少年達の姿だった。



以来、河川敷の少年達のように熱い友情が生まれることもない。彼らの青い春はもう戻ってこないというのに実にもったいない。良いか!青春とは知らないうちに過ぎていくものなんだ!貴方達がしたことは学校の授業で一生懸命ノートを板書したのに後から見たら前に書いたページから一枚飛ばして書いてしまった虚しさと手遅れに似ている。そういう時に限ってその空いたページに貼れるようなプリントもなく、かと言って落書きでもしようものならノートを提出する時に痛い目にあう。間違って落書きを残したまま提出した暁には返却の時先生の顔が見れない。つまり余白はそれ程罪な存在なのだ。貴方達はその余白を青春というノートに残してしまったんだ。私のお膳立てを犠牲にして。あーあ、その余白には友情が刻まれるはずだったのに。


私が過去を振り返っているうちに二人の争いも苛烈になっていた。だから何が貴方達をそんなに駆り立てるんだ。顔を合わせたら喧嘩しか出来ない病気にでもかかってるの?それとも目があったらバトルの合図なの?ボールからモンスターでも出すの?

「ちょっと良いかげんにして下さいエディオス様!その右手に握った性癖は早くごみ箱に捨てて下さい、あとギルバートも落ち着いて!」

私の言葉に先に従ったのはギルバートだった。いい子いい子。エディオス様は右手に握った性癖をまた引き出しに戻している。そこが貴方のごみ箱なんですか?

「今朝は候補者の方々に紹介させてもらいに来たんです。喧嘩を見学しに来たんじゃないです。早く行きましょう」

「申し訳ありません、ヒナコ様」

「私に指図しないでくれないか」


そこの薔薇色頭、庭の薔薇園の肥料にされたいのか。

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