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ご機嫌いかが、国王陛下

「おはようございまーす、エディオス様。今日も良い天気ですよ、貴方もたまには太陽の光に当たって煩悩を浄化してもらったらどうですか」

巫女としての私の一日はオスタシア王家の国王様に朝のご挨拶をすることから始まる。もう何十年も続けてきた習慣だから、王の私室を守る警備兵も私の顔を見たら道を開けてくれるようになった。どうもどうも、お疲れ様です。警備兵に頭を軽く下げてから入室した部屋では、ちょうど国王が大きな窓から城下を眺めていたところだったから私は期待する。

あれ、言ってくれないかな。「見ろ!人がゴミのようだ!」って。うちの国王は「生きろ、そなたは美しい」って激励するより悪役の方が似合うと思う。明るい未来に向けて皆を鼓舞するより、悪役の美学ってやつを語って洗脳して欲しい。高笑いが似合うような、そういう顔をしているから。まあ本当にそんなことをしたら何だこいつ頭沸いたかって幻滅するけどね。

私の淡い期待は結局叶わなくて、こちらに背中を向けていた彼は私の入室により振り向いた。

「やあ、おはよう私の守護者」

「いや、違いますけど」

私はオスタシアを守護する立場であって、貴方の守護者ではない。皆のものだ。勝手に自分のものにされても迷惑だし、それが笑って許されるのはジャイアンだけだよ。そして貴方はジャイアンにはなれない。それに彼は昔、玩具の独り占めはいけません!と私にお尻ぺんぺんされたのを忘れたのか。

現国王エディオス・アルバ・オスタシア。薔薇色の長い髪と瞳が美しい美貌の男。正統派ヒーローの美貌ではなくて、悪役の美貌だ。乙女ゲームで言えばこの人凄い格好良い!好みドストライク!でも敵だから攻略できない!→はよファンディスクよこせみたいな感じ。一言で言えば赤色の髪と瞳なんだけど、彼に対しては薔薇色、と言う表現がしっくりくる。美形は表現方法まで美しいのが特権なんだな。私は自分の黒髪を黒髪以外の表現なんてされたこともないぞ。

「確かに太陽も良いが、私の美貌を毎朝見れる君の幸運は日照りが続いた後の恵みの雨のようなものだよ。昨日も言った気がするけどね」

「わーいわーいうれしいなー」

流石鏡に映る自分の顔をおかずにパンを20個食べれると豪語するだけある。正常な人なら遠慮するだろう褒め言葉で自分を褒めた。でも、悪役美形でナルシストはどうなんだろうか。

朝のご挨拶は別に特別なことを話すわけでもないからいつもこんな感じだ。確か昨日のエディオスは自分の美貌を王家に伝わる家宝に例えたあと、やっぱり収まらないから世界の秘宝に訂正していたんだっけ。正直どっちでも良いんだけど。

「まあでも、今日は君が早く来てくれて良かったかな。実は頼みたい事があって」

これを見てくれないか、と突き付けられたのは何かの紙だろう、だが待ってくれ、私は老眼だからこの距離じゃよく見えない。私が老眼鏡を取り出す間にも急かすように紙が押し付けられた。最近の若者はせっかちだな。短気は損気に繋がるというのに。

「えーと、なになに」

紙を受け取り、老眼鏡を取り出して小さな文字を追う。見にくいな、もっと大きく書けよ!目を皿のように細めて読めた言葉は、近隣の国の姫の名前が幾人か。私が顔を上げるとエディオスは艶めいた笑みを浮かべた。

「そろそろ王妃を決めたい。協力してくれないかい」

「遂に私が待ち望んだ日が!やっと身を固める気になったんですね!」

この放っておいたら自分の顔と結婚しかねない男も漸く重い腰を上げたらしい。エディオスはまだ若いが、世継ぎの問題は早めに解決したいものだった。

「なるほど、じゃあこの姫君方は候補者達なんですね。任せて下さい、貴方の奥さんになる女性には正直同情しかありませんが、良い

ご縁を探しましょう!」

「助かるよ。実は気になる姫を選んだは良いが、皆何かしら問題があって困っていたんだ」

「何でわざわざそれを選んだんですか」

思わず真顔になってしまう。

あれか、物件選びでわざといわく付きの場所を選ぶタイプか。そういうのは後々我が身を滅ぼすからやめておきなさいってば。

「ヒナコが力を貸してくれるなら心強い。君には彼女達の教育を頼もう、私に相応しい女性にしてあげておくれ。そうそう、実はもう我が国に招いているから明日にでも紹介してあげるよ」

「何・・・だと?もう一回言っ痛たたた!!こ、腰が!」

いきなり動いたから腰が!間接が!痛い!

「すまないね、老体に鞭を打たせてしまって。まあでも今日は天気が良いから、太陽に当たればそれも良くなるんじゃないかな」

言い返された!くそお!


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