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異世界総務のヨシコさん(58)  ~エリート弟妹たちとスマホで繋がって「魔王軍ホワイト化」始めます。残業代はきっちり請求しまっせ!~  作者: 早野 茂
後日談:ヨシコとカケル

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後日談 第10話:次元を超えた「いってらっしゃい」

店の外には、アコギ王国の魔法陣を応用した「次元ゲート」の光が渦巻いていた。  

別れの朝だ。  

《前借亭》のスタッフ全員が、店の前でヨシコを見送るために整列していた。


「ヨシコさん、本当に行ってしまうのですね……」

「もっと色々、お料理教えてほしかったです……」


 ルシアナとミレイユが名残惜しそうに言う。  

ボビンとグレンも、少し寂しそうだ。  

ミュコに至っては、ヨシコの足にしがみついて離れようとしない。


「うぅ……ヨシコ、行っちゃやだ。もっと卵焼き食べる。」


「こらこら、泣きなさんな。今生の別れちゃうんやから」


 ヨシコはミュコの頭を優しく撫で、カケルに向き直った。


「カケル」

「ん」


 ヨシコはポケットから、一台のスマートフォンを取り出し、カケルに放り投げた。


「これ、持っとき。シロウが作った『次元通話アプリ』入りの予備端末や」

「えっ、これ……使えるの?」

「おう。あの子の執念の技術力や。時差はあるけど、メールも通話もできる。……困ったことがあったら、いつでも連絡しぃや。総務課は24時間受付中や(ウソ、定時で切るけどな)」


 カケルはスマホを受け取り、苦笑した。  

これで、もう「音信不通」にはならない。  

二つの世界は、デジタルな線でしっかりと繋がれたのだ。  

(ハナコ叔母さんからの大量の「注意喚起メール」が届く未来が見えるが、それもまた愛だろう)


「……ありがとう、母さん」


 カケルはスマホをポケットにしまい、改めて母の顔を見た。  

不思議と、寂しさはなかった。  

あるのは、心地よい「背筋の伸びる感覚」だけだ。


「カケル」

「なに?」


 ヨシコはカケルの顔をじっと見つめ、そしてニカっと笑った。


「あんた、ええ顔になったわ。……ほんまに、ええ男になった」


 言い捨てると、ヨシコは照れくさそうにくるりと背を向けた。  

そして買い物カゴ(マジックバッグ)を担ぎ直し、ゲートの前へ進んだ。


「ほな、そろそろ行くわ! 向こうで魔王らが『おにぎりまだかー!』って腹空かせて待っとるからな!」


 ヨシコは光の渦に足をかけ、振り返ることなく手を挙げた。


「みんな、達者でな! カケルを頼んだで!」

「はいっ! ヨシコさんもお元気でー!!」


 ルシアナたちが手を振り返す。  

ヨシコの背中が、光の中へと溶けていく。


 ――いってらっしゃい、母さん。


 カケルは心の中で呟いた。


 シュゥゥゥ……。  

光が収束し、次元ゲートが消滅する。  

朝の静寂が戻ってきた。


 カケルは、何もない空間をしばらく見つめていたが、やがてクルリと店の方へ振り返った。


「……さて!」


 カケルはパン! と手を叩いた。  

湿っぽさはもうない。  

体中に力がみなぎっている。  

懐には「業務改善ノート」と「スマホ」。

そして口座には「隠し財産」。  

最強の布陣だ。


「開店準備だ! 今日も忙しくなるぞ!」

「はいっ! 店長!」


 ルシアナが、ミレイユが、ボビンが、それぞれ持ち場へと散っていく。  

カケルはエプロンの紐をキュッと締め直し、店のドアを大きく開け放った。


 リベリスの風が吹き込んでくる。  

ガーリックの香り。

スープの匂い。

そして、これからやってくる客たちのざわめき。


 カケルはいつもの場所に立った。  

ここが、俺の居場所。  

ここが、俺の戦場であり、俺の楽園。


「いらっしゃいませー!! 《前借亭》、オープンです!!」


 カケルの元気な声が、青空に吸い込まれていく。


 遠い異世界の魔王城でも、きっと同じように、元気な総務のおばちゃんが「ほら魔王! サボらんと仕事しぃ!」と走り回っていることだろう。


 離れていても、繋がっている。  

それぞれの世界で、それぞれの「今日」が、また始まっていく。


(完)


最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

本作『異世界総務のヨシコさん』は、私自身、執筆していてこれ以上ないほど楽しい作品でした。

異世界の常識を総務のスキルでなぎ倒していくヨシコさんの姿に、作者である私自身が何度も元気づけられてきました。


物語の締めくくりとして、息子であるカケル(『前借スキルのカケル』)との再会をしっかりと描けたことは、作者として非常に感慨深いです。

別々の場所で戦ってきた親子が再び相まみえる瞬間を届けられたことで、ようやく胸のつかえが下りたような気がします。


ヨシコさんが切り拓いた異世界、そしてカケルの戦った異世界。

どちらの世界も、納得のいく形で最終話を書き上げることができ、作者としてこれほど嬉しいことはありません。


ですが、彼らの物語がこれで完全に終わったわけではありません。

この世界観やキャラクターたちにはまだまだ語り足りないエピソードがたくさんあります。

今後は外伝やスピンオフ作品という形で、彼らの「それから」や「語られなかった裏側」を継続して描いていきたいと考えています。


また別の物語で、皆様と再会できる日を楽しみにしております。

本当にありがとうございました!


*****


ヨシコおかんの続編、

『異世界総務のヨシコさん2~帰って来たヨシコおかん!ブラックギルドにカスハラ、孤独な育児まで、異世界の「不備」は最強家族がまとめて解決や!~』

連載中です。

ヨシコおかんの続きを読みたい方は、こちらからどうぞ♪


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― 新着の感想 ―
ミュコは、ヨシコの足にしがみついて離れようとしない。「うぅ……ヨシコ、行っちゃやだ。もっと卵焼き食べる。」このシーン、ミュコちゃんが可愛すぎる。唐揚げも美味しかったけど、卵焼きをチョイスするミュコちゃ…
あ〜〜!とうとう終わってしまったぁ〜 読んでて、愉快痛快&ほっこりするし、楽しく読ませていただきました。楽しみが1つ減ってしまって、残念… だ・け・ど… 完結、おめでとうございます。続編期待してます。…
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